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主人公はモブにモテたい

俺は主人公だ。いや、中二病とかではなくマジで。こう確信するに至った根拠がちゃんとあるんだよ。


俺は──キャラが濃い奴にめっちゃモテる。


ツンデレの幼馴染み、才色兼備のお嬢様、男装の生徒会長、謎の転校生、合法ロリの先生、エトセトラ…その全員からなぜかアホほど好かれている。恋愛的な意味で。


どこでフラグが立ったのか全く覚えてねぇ。そういう意味では主人公失格なのかもしれない。いや、無自覚なのも主人公要素なのか?


ともかく、高校生になって俺はようやく自分がギャルゲーかラノベかの主人公だと認める決心が付いた。


が、決心が付いたからと言って受け入れるかは別の話だ。友達付き合いなら良いんだが、恋愛で付き合うにはどうにも…うん…


ツンデレと分かっていてもデレの前段階でボコボコに言われるのはつらいし、恋愛する上で金銭感覚にズレがあるのはあまりよろしくないし、急に壁ドンされたのは普通に怖かったし、会ったこともないのにバリバリ個人情報を言い当てられたのはシンプルにストーカーを疑ってるし、教師と生徒は世間体的にアウトだ。


俺はァ!こんなあり得んくらい個性豊かな奴らじゃなくて!普通の!地味~なモブにモテたいんだよ!!普通に告白して普通に付き合って普通にデートして普通にイチャイチャしてぇ!あとこの学校の美人って熱狂的なファン多いから下手に付き合うと嫉妬に殺される!!


贅沢な悩みなのはもちろん分かってるさ。でも、主人公なら!不可能を可能にしてこそだ!そうだろ!?


というわけで俺はヒロインたちのアタックを避け続ける日々を送っている。今日は家への突撃も一緒に通学のお誘いもなく静かだが…油断はできない。戦いはすでに始まっている…!


通学路に何か困ってる人…なし!風紀委員の抜き打ちチェック…なし!下駄箱…ウワァなんか入ってる!?


ハートのシールで封をされた白い手紙に「博人先輩へ」とかわいらしい丸文字で書かれている。ラブレター…だよな?ベタすぎて古典の世界に転生したかと思った。


内容はこうだ。


「博人先輩へ

あなたに伝えたいことがあります。放課後、体育館の裏に来てください。

後輩より」


冴えない系主人公ならドッキリを疑うのだろうが、残念ながら俺は自分がモテるのを自覚済みなのでこれは真実である。モブだと良いなぁ…でもなぁ、下駄箱にラブレターなんて伝統芸をするクラシック(んちゅ)がモブだとは思えねぇんだよなぁ…


時間は飛んで、放課後。


「わ、わたし…!ドジってたとこを助けてもらってから、先輩のことずっと好きで…その、私と、付き合ってください!」


眼鏡を掛けた純朴そうな三つ編みの女の子が、顔も耳も真っ赤にして、俺に秘めた想いをぶつけてくる──


だがダウト!!!!俺は騙されねぇぞ!!!!こういうやつがなぜか眼鏡を外すとクッソ美人なんだよ!!!!!大体なんだこの現代にそんなコッテコテの古典的な三つ編みは!!!!!眼鏡と三つ編みのセットは地味じゃなくて個性だ!!!!!!帰れ!!!!!!


と、荒んだ心の底をぶち撒ければ個性豊かなヒロインたち含む全校女子生徒を敵に回し、血祭りが開催されること請け合いなので告白は当たり障りない感じで断ることにした。


「ごめん、付き合えない」


「あっ…そう、ですよね。先輩の周りには綺麗な方がたくさんいますし…」


「いやあいつらは関係ないマジで関係ない」


「そ、そうですか?」


食い気味な俺に若干引いてる。良いぞ、そのまま失望しろ。


「俺、昔付き合ってた子を泣かせちゃったことがあるんだ。またそんなことになったらどうしようってばかり考えて、今目の前にいる人を幸せにできるか考えられない。そんな俺に君みたいな素敵な人と付き合う資格はないんだ。だから、これは俺のワガママ」


「…ずるい」


「うん、俺って最低なんだ」


「それは違います!でも、ずるい人」


あ~…笑顔がかわいい子だなぁ。うん、絶対いい人見付かるわ。幸せになってくれ。


「全く、罪な男だね」


「…平等院」


後輩ちゃんが去っていった後、なぜか背後から現れたのは平等院遥。この学校の生徒会長で、男子生徒の格好をしているが女だ。ちなみに平等院が本当は女であることを知ってるのは俺だけらしい。


「君はいつもつれないね。マァその公平さも君の魅力ではあるんだが」


「知らねぇやつの話すんな」


「自己評価に乏しいのが君の唯一の欠点といったところかな?僕で良ければ君の自信を高める手伝いをするよ。必ず君の自尊心を育て上げると、我が平等院の名に懸けて誓おう」


うるせー!!何が平等院だ鳳凰堂が!!!キラキラエフェクト振り撒きやがって!!!主人公(おれ)でさえ出せねぇぞそれ!!ちょっと羨ましい!!!!!


クソッ負ける…!ヒロインにイケメン(ぢから)で負ける…!!


「嫉妬する君も可愛いね」


うるせ~~~~~~~!!!!


「てか平等院も俺ばっか追いかけてんなよ。俺告白断ったよな?」


「逃げられると燃えるタチでね」


「捨てちまえそんな性分」


強引なことしても様にはなるんだよな。流石抱かれたいランキング・彼氏になってください全財産捧げるのでランキング・例えこの人になら殺されても構わないランキング一位だ。こいつ、男装の麗人だからモブにめちゃくちゃモテるんだよなぁ…!クソッ…羨ましい…!そこ変われ!!


「あーっ!こんなところにいた!」


次から次へとなんだ!


「あっ、べ、別にあんたと一緒に帰りたいから探してたわけじゃないんだからねっ!あんたがまた女の子泣かせてないか監視しに来ただけだから!勘違いしないでよね!」


つらら!


「わたくしはディナーのお誘いに参りましたの。我が家お抱えのシェフに作らせたものですわ。ディナーと共にわたくしたちの将来について語り合いましょう?」


富麗(ふれい)さん!


「ヒロト…今日こそ…約束…守ってもらう…」


江西(えにし)


「わ、わたしは次回の部活の連絡事項を伝えに来ただけなんですけど…」


小山内(おさない)先生!


クッ、囲まれた!今日は推し作品のコミカライズの発売日だから買って真っ直ぐ帰ろうと思ったのに…!いや諦めるのはまだ早い。逃走ルートを模索しろ…!


「お困りのようだね、博人君。助けはいるかい?」


一番近い場所にいた平等院が俺の腰を抱く。お前挙動がイケメンすぎねぇ??


「失礼」


はわ…お姫様抱っこ…??


いや正気に戻れ!!?てか平均身長以上の男子高校生を軽々持ち上げてあのメンツを撒けるお前ほんと何!??!?


「相変わらず君は大人気だね。妬けてしまうよ」


俺は望んでないんですけどねぇ…!


「でもマァ、良いさ。君の心を手に入れるのは僕だ」


あのなぁ!?俺は!!モブにモテたいんだよ!!!!!

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