真野編 ②
一方部室では純と颯斗、美玲の三人が残っていた。
「霊能業界の……こと?」
颯斗は頷いた。純は後は任せた、と椅子に座った。
「まず基本知識から。霊能者には一般家庭から出た霊能者と代々一族で霊能者をやっている家紋から出た霊能者が存在する。霊能力は血筋に遺伝するから、大体がどっかの霊能一族の家紋出身だったり傍系だったりする」
青の一族は安倍晴明の時代から続く家だというなら青崎家はかなり古くから続く名門家系となるだろう。
「で、その中にはイレギュラーな存在の家紋も存在する。それが青崎家と赤坂家。詩乃姫がこの時代に産まれてきたのは偶然だったが、青崎では一定周期で『袂紳の生まれ変わり』が現れる。それが今の時代」
心臓が脈打つのが感じる。夢で見た袂紳様がこの時代に私と同じく生まれ変わっている。
「そして赤坂だ。千年も前の話が今の時代にも続いている理由。単なる先祖を殺された恨みじゃない」
「もしかして梓馬様も私と同じく転生している?」
「いや、もっと意味の分からない話。梓馬は今の時代にも生きている。どういうわけか知らないが、千年前からずっと生き続けてるらしい」
それはまさに不老不死では。しかし、おかしい。
「不老不死の仙薬は山でかなり失われた! 事実上、仙薬は私しかいなかったはず。仙薬もないのに不老不死に?」
「どうやら不死というわけでは無いらしい。呪いの影響かは知らないが、完全な不老不死になる為に今でもずっと不老不死の仙薬を探し続けている」
そんな時に生まれ変わってきた美玲、いつでも赤坂から狙われる可能性があるということだ。
「青崎家は今後も美玲を守り続ける」
「どうしてそこまでしてくれるの?」
颯斗も純も真剣な表情をしていた。重要な何かが、これから伝えられる。
「詩乃姫は青崎家の先祖だ。それに青崎は見返りを求めてる。袂紳の生まれ変わりと詩乃姫の生まれ変わりが婚姻するのを望んでいるんだ」
まぁ俺たちは生まれ変わりじゃないし関係ないな。と、頷きあう純と颯斗。
「ちょっと、そんなの聞いてないんだけど?!」
「上の奴らが勝手に言ってるだけだ。無視すりゃいい。ともかく、そんな訳で色々知っといてくれ。今後、前世の記憶がもっと蘇り出したら幽霊も視える体質になるかも知れんからな」
「それと」と颯斗が続けるが、なかなか話し始めない。純が笑う。
「前世の記憶が戻ったって聞いたからな……怪奇研究部があればこういう話をするには最適だと思った……から、前言った解散は取り消す……あと今後はちゃんと部活にも顔出す……」
そこで純の笑いがピークに達した。「うるせぇ!」と颯斗が殴る。
「ただし! やるからには徹底的に、だ! 霊能者が居る限り生半可な心霊調査は認めないからな!」
最終的に部室内が大笑いに包まれた。
美玲が少し席を外した間、純が颯斗に言った。
「言わなくて良かったのか?」
「何が」
純が一息置いて喋りだした。
「袂紳の生まれ変わりは二十五歳で死ぬ。ってこと」
「……今はいい」
袂紳の生まれ変わりは袂紳が死んだ年齢、二十五歳になると死ぬ。そしてまたいつの日か生まれ変わる。
「そういやもうすぐ誕生日だったな。あと十年、か……」
生徒会の仕事が残っているから、と颯斗は部室を後にした。もし自分だったら、と純が考える。純には十歳歳の離れた妹がいる。まだ幼稚園児の可愛い盛りだ。そんな妹が二十五歳で死ぬ運命だったら……
「お兄ちゃんは辛いよなぁ……」




