おわりとはじまり
もう怒った。
争うことも奪うことも、すべておまえたちが望んでやっていること。
それはわたしの望みじゃない。
「大丈夫、君を巻き込むつもりはないよ?」
正義を、愛を、信仰や道徳を騙りながら人から奪うな。
正義に手足は生えてない、奪っているのは人の、おまえたちの手足だ。
「だから君も、何も見なかったことにしていれば良いんだ。
ぜんぶ、悪いのはボクなんだから……」
それをわたしに捧げるな。
それをわたしに押し付けるな。
そんなのは、わたしのものじゃない。
「…え。どこに行くの?
そ、そんなに怒らなくても、本当に大丈夫だよ……」
彼女だってそうだ。
彼女に名前も姿も無いのも、すべておまえたちが望んだからだ。
奪ったからだ。
おまえたちの望みどおりにやったから、こうなった。
それなのに……!!
「…あれっ!? ちょっと、アーセナちゃん!?
どうするつもりなの!?
そっちは、行ったらダメだって!」
大丈夫なんかじゃない。
もう怒った。
わたしが、ぜんぜん大丈夫じゃない。
「本当に、ダメだって!」
彼女を追放するなら、わたしも出ていく。
庭園を抜けて、審判の門を抜けて、外に。
心配いらない。
わたしは強い。大丈夫。
「君が出て行ったら、大変なことになっちゃうから!!」
もう、わたしも彼女も、好きにやる。
だから……
「………」
………。
「…うん。ボクがどこに行くのかなんて知らないよね?
……わかったよ。
このままお別れもさみしいし、君が望む間だけ一緒に行こうか?
でも、途中で帰るんだよ? わかった?」
手をにぎる。二人でいっしょに歩き出す。
わたしの望みは、あなたの望みが叶うこと。
それが叶わないならもう、ここに用はない。
「…ねぇ? 本当にわかってる?」
「……」
わかってる。ばっちり。
「「………」」
まかせて。