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第6話 花畑の中のフェアリーの国

「ドラゴンの国の戦争終わらないみたいだな…」


異世界転移者、トーマは呟く。

特に特殊な能力があるわけでもない、細い身体に底知れぬパワーがある訳もない。

ただ転移したからには色んな世界を見たいと今までなんとかやってきた。


「そんな数日で終わる訳ないですぞ、兄弟喧嘩か何かと勘違いを?愚かだ、そして悲惨ですぞ。」


言い過ぎだよ君、毎回思うけど…


そう言ったのはヒヨコを大きくしたような外見、大きな口で水色の魔物、ポメヤだ。

癒し系の見た目だが短足でどこか間抜けに見える。


「間抜けなのは外見だけにして頂きたいですぞ」


その小さな目には自分はどう映っているの?


ドラゴンの町は諦めて他の町を探すか、流石に食料も少なくなってきた。


地図を広げて頭を抱えていると、遠くから羽の生えた少女が歩いてきた。

フェアリー族か、珍しい。

緑色の髪に青く透き通った目、スレンダーな身体にシルクで出来た綺麗な服を着ている。

露出が多く胸と下半身以外は肌が露出していた。


「妖精さんですぞー!おーい!国の場所教えて欲しいがー」


すれ違いざまにポメヤが声をかけた。

フェアリーはあまり多種族と関わらないと言うのは常識だ。コイツも知ってると思うけど…


「国に来たいの?別になにも面白いものはないよ?」


ん?行けそうな流れ?


「別に笑えるものは無くて良いですぞ、ベッドとお風呂あればそれで良いから、もう望まないから。」


無礼とか常識が無いとか以前だよお前は


「あはは!面白いおチビさんだねぇ、いいよ、案内してあげる、弱そうだし大丈夫でしょ。」


本当に良かったよ僕たちがどこからどう見ても雑魚で。


ちょうど帰るところだった少女はユーカと言う名前だった。国の外で薬草を探して帰るところで僕たちに出会ったらしい。


フェアリーの国は独立国家だ。そもそも場所が部外者には把握できないので侵略も受ける事はない。


ユーカとポメヤは談笑している。アイツ得な性格してるよな…


「そこで言ってやったんですぞ!ここは僕に任せて先に行け!なーに、すぐに戻るさってね!」


任せて先に行かせたのに戻るってなんの話してるんだ?妄想が下手すぎる


「面白いねーもっと聞かせてよ!」

「ここからが最大の見せ場ですぞ!」


山場な、見せ場だともう架空の話だって半分言ってるようなもんだろ


「そろそろ着くよ!」


ポメヤの話が膨らみすぎてドラゴンと巨人の一騎打ちにポメヤが乱入するところでユーカが声を上げた。


「そこで僕はこう言ったんですぞ!ここは僕に任せて先に行け!なーに、すぐに戻るさってね!」


もう諦めろ、戻れなくなってるぞ。


目の前には壮大な花畑が広がっていた。

ただそれだけだった。


「えーと、ここから小さくなる魔法か何かかけられて入国っていう感じ?突っ込んでなかったけどユーカも普通に大きいし、フェアリーって空を飛ぶ小さい種族だと思ってたんだけど…」


「小さいフェアリーは子供だよ?当たり前でしょ?成長したら飛ぶより歩いた方が楽なんだよ」


なんかスッキリしないが言われてみればそうだよね。


「いいから私の後ろを付いてきて!」


「戻れなくなったりするのはごめんですぞ」


そうだな、お前みたいにな。


ユーカの後ろを歩いて行くと目の前に国が現れた。

すごいな、認識阻害の魔法か、初めて見た。


ユーカの後ろを歩いて入国、入り口でユーカは門番と何か喋っている


「さあいくよ!ようこそ!フェアリーの国へ!最初に王宮に行って国王に挨拶するよ!」


えぇ…


「望むところですぞ!」


城下町を見物しながら王宮へと歩く。

レンガ敷きの道、見たこともないフルーツのお店。ハサミの看板?美容院か?ログハウスのようなカフェからはハチミツのような甘い匂いが漂ってくる。平和な場所だ。

想像していたフェアリーの街とは違うが…


ポメヤがそこら辺に寄り道するので遅くなったが無事王宮に到着した。

ユーカの後を歩いていくとみんな頭下げる、まあそういう事だよな。


「今日の晩御飯は軽くでいいですぞ」

なんか食ってたもんな、さっきから


無視して王宮の中を歩いていく、なんでただの旅人の俺がこんな場所に…

帝国の王宮と大差ないんじゃないか?どれもこれも全てが高そうだ。


応接間などに通されると思ったが謁見室にそのまま向かった。展開が早すぎる。


ワケも分からぬまま国王の前まで歩き膝をついて頭を下げた。


「国王様、旅人を連れて参りました。国を見て歩きたいそうです。」


そんなふんわりした感じで大丈夫?


「国を見て歩きたい所存、なぁに、ただ少しの間ですぞ、気にしないでよ、ホント」


なんでいつも死に急ぐの?


「旅人のトーマと申します。お恥ずかしながら旅の途中に食料が尽きてしまい、困っていたところを姫様に助けて頂きました。本当に感謝しております。

無礼は承知なのですがどうかこの国で食料の補給をさせて頂けませんでしょうか?」


すると国王は重い口を開いた。


「ユーカ様、悪ふざけはその辺にして差し上げては…」


ん?


国王は椅子から立ち上がり…


ユーカがその椅子に座った…


そう言うことか…


「ごめんねー、この人は私がいない間国王の代理をお願いしてたのー、ちょっと外の世界を見てみたくて数十年くらい遊び回ってたんだよねー。」


「卑怯ですぞ!王様と分かっていれば…うーん…肩でも揉んだのに!」


ウソつくな、お前は相手が誰だろうと戻れない話してただろ。


「国に入る時にイタズラを考えついてみんなに協力して貰ったんだよね!あー面白かった!」


姫かと思ってたら王様か、フェアリーの王は魔法適正がずば抜けている、魔法だけなら最強だ、一人旅でも問題はないだろう。


まあこの様子からすると手紙の1つでも置いて急に飛び出したのだろうが…


「騙したお詫びにこのブローチをあげる、胸に付けていれば誰も危害を加えないはず!まあ危害を加える人なんてこの国にはいないけどね!」


それは素直にありがたい


「あと国内は好きに回っていいよ!晩御飯は一緒に食べましょう!」


ここでぇ?まあ断ってブローチを没収されてもつまらないしな。


「ご馳走の準備をして頂きたいですぞ!あとお風呂ね」


欲望に忠実、しかしまあいいか、もう疲れたし。


疲れはしたが結果的にフェアリーの国を観光できる。

棚ぼたとはこの事だ。


落ち着いて街を見回すと確かに大小様々なフェアリーがいる、大人は羽が生えているだけで人間の大きさと変わらない。

服の着脱に羽が邪魔なので胸には布を巻くだけなのか。

それに合わせて下も露出が多い。まあ国のファッションなのだろう。目のやり場に困るが。


気になっていた甘い香りのカフェに入ってオススメのフェアリーミルクというのを注文してみた。

店主は胸のブローチを見せると快く接してくれた、このブローチすごいな。


待っている間に少しフェアリーの事を聞いてみた。

フェアリーは孕ってから数週間で生まれる、ある程度の知能を持っており、すぐに飛べるそうだ。


人間と成長速度は一緒くらいなのだろう、ただ出産が早いので小さい、そういう事だ。


20年ほどかけて大きくなり、そこからは見た目があまり変わらないそうで、寿命は200年ほどらしい。


王族はその限りではなく、神との契約により10倍の寿命を授かっているそうだ。


何歳だよユーカ…


しばらくして飲み物が到着

花のような香りでほんのり甘い、いくらでも飲めそうなどこか懐かしい味だ。


「飲まないの?よかったら飲んであげますぞ」


飲まないの?じゃないよ、今まさに飲んでるだろ


「亭主ー大きめのグラスでフェアリーミルクー、大きければいいですぞー」


数分後、

目の前にバケツに入ったフェアリーミルクが置かれた。


「・・・。良かったら半分飲んでも良いですぞ。」


「余計な事考えずに飲め」


店を出る頃にはポメヤのお腹は風船のようになっていた。


「良くないですぞ!バケツはよくない!」


同情はできないな。


しかし平和な街だなぁ

日持ちのする食料を買っていたら日が暮れてきた…


王宮で晩御飯だったな、緊張して食べるご飯は苦手だ…


王宮に着くとまず風呂に入れられた。

ポメヤは大浴場でプカプカ浮かんでいる。


「このままお湯になりたいですぞ…そういう気分」


そうか…短い付き合いだったな


風呂が終わり食事の時間になった。特に服装は自由らしいので普段着で会場に向かう。

そもそも服なんてそれほど持っていないのだ。


会場に着いて椅子に座っているとユーカが遅れてやってきた。


「ごめんねー遅くなって、仕事が終わらないのよー」


まあ数十年も留守にしてたらそりゃ終わらないでしょうよ


お酒は飲めないのでジュースを貰い、窮屈な晩餐会が始まった。


デザートまで食べたところでポメヤは口を開いた。


「で?僕たちをここに呼んだ理由はなんですぞ?」


「ストレート聞くね、もう少し後で言おうと思ってたんだけど…」


「偶然とはいえこんな閉鎖された国に見ず知らずの旅人を呼び込んで観光だけしてって下さいなんて話はそうそう無いだろう」


「単刀直入に言います!この国に娯楽を提供してちょうだい!」


は?なんて?


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