第41話 グータラ三昧、フェニックスの町
「なんかラクダ元気良いな」
オーク族の町を出てからと言うものラクダのスピードが少し上がった気がする。
「なんかスッキリした感じですぞ、きっと色々抜かれたんですぞ」
まあオーク族にも色々いたって事だろう、でもラクダだぞ…まあ頼りになるけど。
「あら、魔獣ですぞ、超でっかいですぞ」
ラクダに乗って旅をする様になって以前のようにコソコソと隠れる事は無くなった。
僕達はラクダから降りて少し離れる。
「じゃあお願いします」
ラクダはコクコクと二回頷くと魔獣に向かって口を開き…
その瞬間魔獣の眉間から一直線に穴が開いて魔獣は倒れた。
このラクダの熱線は強すぎる、不可視の上にとんでもないスピードで一直線、どこまで届いているか分からない。
「ヒュー!かっこいいですぞー!」
ポメヤは毎回はしゃいでいる、なんでもロマンらしい。
ラクダに乗って少し進むとすぐに村が見えた、意外に近かったんだなぁ、
なんか家に穴が開いて煙が出ているなぁ…
ラクダの熱線のルートだなぁ…
「ポメヤ、どうする?行く?」
「いやぁ…一応確認はしないと…王ですぞ…僕達」
村に着くと人の気配がない、セーフか?でもこの村は無人なハズないんだけど…
穴の空いた家に進み…中を覗くと…
「ストライクですな…もう完璧な角度ですぞ…」
僕達は胸に穴が空いて倒れている村人を発見した。
「でもここフェニックスの村だろ?大丈夫だよね?」
「知らないですぞ!犯人の話を聞く義理はない!」
おま…熱線ではしゃいでたろふざけんな。
少し言い争いをしていると急に熱気に襲われた。
さっきまで倒れていたフェニックスが燃えている、大丈夫なのかこれ。
しばらくすると完全に傷が塞がった女の子が座っていた。
「大変申し訳御座いませんでしたぁ!」
「ゴメンですぞ!悪気は無かったんですぞ!魔獣が!」
咄嗟に家の中に駆け込み一人と一匹は土下座で謝った。王様が土下座で。
「いやーいいよー、すこぉしびっくりしたけどさー」
やたらのんびり喋る子だな…
「私達はさー、死なないからさー良いよ別にぃー」
真っ赤な髪の毛に真っ赤な目、燃えるような赤いドレスを着た女の子。
「旅人の人ぉ?適当に見て行っていいよぉーなんにもないけどぉ」
「あの、本当に大丈夫なの?穴塞がってるし服まで治ってるから大丈夫っぽいけど」
「ん?あぁ服じゃあないよこれぇ、炎だよただの、ほらぁ」
そう言うと服が消え去り少女は産まれたままの姿になった。
「いや!分かった!服着た方が良いよ!うん!」
そぉ?と言って少女はまた炎を纏った。
ビックリしたがちょっと羨ましいとも思ってしまう。
「私はー、ホムラっていうんだぁー、まあ覚えなくても良いけどねー」
少女は常に気怠そうに喋る、なんだかなぁ、歓迎されてないのかな。
「僕たちはトーマとポメヤ。あの、なんでこの村って人が歩いてないの?病気とか?」
「病気ぃ?なんだそれ、私達は死なないから何もしなくて良いんだよぉ、毎日こうやって横になってるだけぇ」
なるほどなぁ…そもそも死なないから病気にもならない、そして死なないから仕事をして稼ぐ必要もない。
他の種族が子孫繁栄の道を選んだのと一緒で死なない事で種の保存をと考えて進化したのか…
「でもヒマじゃない?楽しい事したいと思わないんですぞ?」
「楽しい事ぉ?ねーよそんなのーだって永遠なんだよぉ、何かしたっていつか終わるじゃんー」
確かになぁ…でもこのまま何の生産性もないのもなぁ…
「世界を見にいくのは楽しいですぞ!きっと楽しいですぞ!」
確かに時代が変われば人も変わるしな、余計なお世話と言われてもしょうがないけど。
しかしここで一生、というか永遠に寝たままというのも勿体無いよな。
「世界ぃ?別にどこも変わんないだろぉ…」
「そうだ、ポメヤ、お前画材持ってるよね、ちょっと旅の絵書いてあげないよ」
「ほいやっさー、任せるですぞー」
数十分で数枚の絵が出来上がった。毎度ながら凄まじい画力だなコイツ。
「これはーフェアリーの町のお祭りですぞ!これがフィギュアで、これがフェアリーミルクのアイスクリーム!
そしてこれが天使の国ですぞ、綺麗だけど目がやられる白さー、あとこれはー」
ホムラは最初こそ興味なさげに見ていたが途中からポメヤの絵に釘付けだ。
「こ、この赤いのはなんだ!見た事ないぞ!」
ホムラの喋るペースが普通に戻っている、普通にも喋れるのか。
「これはフルーツにアメをかけたお菓子ですぞ!お祭りの日限定!」
んじゃこれは!?これは!?と食い気味で質問している、オークの宴の絵では顔を赤くしている。
ってお前、なんてもん書いてんだ、自重しろよ。
「す、すごい世界もあるんだなぁ…どうせ消える物だから気にすんなってみんな言うから興味無かったけど…これはなんというか…楽しそうだ。ちょっとみんなにも見せてくる!」
そう言ってホムラは窓から飛び出して行った、炎の翼かぁ…かっこいいなぁ。
しばらくしてホムラが興奮して帰ってきた。
「みんなもっと見たいって!ちょっと外出てきてくれよ!」
外に出ると四人のフェニックスが目をキラキラさせて待っていた。
「村人全員集まったのなんて何千年ぶりだろう!早く話聞かせてくれよ!」
「え?五人だけなの?」
「そうだぞ、私達は増えもしないし減りもしない、ずーっと五人だ」
五人かぁ…まあ不死だから繁殖する必要もないよなぁ…もっといたら外に飛び出す変わり者もいたかも知れないけど、五人全員がホムラみたいなタイプだったのだろう。
全員がポメヤを見ている、そりゃそうだ、こんなチンチクリンがあの絵を描くなんて僕もまだ信じられない。
「任せるですぞーあうらー!」
また謎の掛け声と共にポメヤは絵を描き始め、描き終わると絵の説明、描き終わって説明
そんな事を数十回繰り返し…
「なんか人生終わったですぞ」
いやネタ無くなったからって勝手に死ぬなよ。
「次はどこだ?次は!?」
オーディエンスはもう鎮まる事を知らない…
「あの、僕達って旅に出てそんなに経ってないんだよね、だから今日はこの辺で…」
「僕も限界ですぞ…」
流石に疲れたか。頑張ったな、たまに
「えぇー、まだまだ続き見たいよー」
すごく残念そうだ…少し心が痛い。
「じゃあ代わりにお話をしてあげるよ…上手く話せるか分からないけど…」
僕は転移前に好きだった漫画の話を聞かせる事にしたのだが。
その日は深夜になっても寝かせて貰えず…ついに朝日が昇ってしまった…
ん?寝落ちしてしまったのか…なんか元気な声が…
「この刃は貴様の概念ごと断ち切る!」
「我の絶対防御の前にそんなナマクラなど!」
「やめてぇー私を巡って争わないでー!」
「キャー服がボロボロにぃー」
「私の胸を見るなぁー」
僕あんな話したっけ?なんか混ざってるけど元も知らないんだけど…
「おはようですぞー、今日も絵を書く感じですぞ?」
「あ!ポメヤ!頼みがあるんだけど絵を教えてくれ!」
「私達の作った話を絵にして残すんだ!」
ん?なんか凄まじい創作意欲だな。
「昨日トーマの話聞いて私達も大冒険の話を作ったんだ!それに絵と文字を付けてみんなに自慢するんだ!他の種族に!」
漫画みたいな?急にどうしたんだ?
「色々な世界を見て回ってもいずれ終わっちゃうからね!想像の世界なら無限だ!きっとみんなも楽しめると思う!」
これは良い兆候じゃないか?ただ話の内容がアレだと認められなくて飽きちゃうんじゃ…
「ちょっとその作った話聞いてみても良い?」
「いいぞ!えーと初めにー…」
「え?その後どうなるの?姫は?ボスは死んだの!?」
「でも幹部にも悲しい過去があって憎めない!どうすれば良いんですぞー!」
数時間後、僕達は夢中で話を聞いてしまっていた。純粋に面白い。
これは本当に大変な事になるんじゃないか?
この世界で漫画かぁ…これは楽しみだ。




