罰ゲームで嘘告白をしてきたギャルがゲーム雑魚過ぎで何回も告白してくるのでアドバイスすることにした
なんか、アオハル書きたくなったんやで……。
「す、鈴木、お前のことがすきだ! 付き合って、くれ……!」
小さく眉間に皺を寄せながら俺に向かって告白してくるギャル。
美馬きらり。
金髪で派手なメイクで着崩した制服。見まごう事なきギャルである。
そして、美少女。ぱっちりした目、通った鼻筋、胸は大きくて俺は苦手だが大体の男子がチラチラ見てるほどに大きいにも関わらず、足はすらりと細い。
女子から嫉妬の目で見られそうだが、分け隔てなく丁度良い距離感で接しているせいか嫌っている奴はほとんどいない。
そんな大人気ギャルが俺を好きなわけがない。
俺はただのサブカル好き高校生、鈴木祐樹。多少ゲームが出来るがそれ以外はごく平凡な男子生徒だ。
なので、これは嘘告白である。QED、証明完了。
そして、確実に罰ゲーム。だって、廊下に多分美馬さんのギャル友がいる。
こちとら遮蔽物に潜む敵を見つけるのは得意なんだ。舐めないでほしい。ゲームだけど。
というわけで、罰ゲームの嘘告白確定。
だから、断ろうと思う。
他の男子からの嫉妬も怖いし。
それに何より、俺はギャルが怖い。
何をもってギャルとするかは人それぞれだろうけど、美馬さんのギャルは怖い。
化粧が濃い。
勿論とんでもなく美少女なんだけど、なんか怖い。
漫画に登場するギャルヒロインは嫌いではないけど、美馬さんのギャルは怖い。
てか、リアルギャル怖い。
目力が強いし、圧がすごい。そうか、二次元ってすごいんだな。
なので、お断りさせていただく。
「美馬さん、僕は貴方に相応しくないのでお断りさせてください」
「……なんでっ? なんで、毎回アタシフラれるの!?」
美馬さんが震えながら絶叫する。
そう。この嘘告白はじめてではない。
8回目である。
ギャル、罰ゲーム受けすぎ。
いくらなんでも負け過ぎだろ。
そして、罰ゲーム内容がマンネリすぎ。
罰ゲームが嘘告白ってただでさえ草なんだが、何回も何回も同じところに生やそうとするその雑草魂に感服である。
そして、抜きすぎて荒野である。俺はもう落ち着き払っている。
最初の頃こそ、一回動揺しまくって変な声出まくったが、一回家に持ち帰り検討させてもらったら落ち着いて、罰ゲーム嘘告白だと理解し断ることが出来た。
それ以降は、穏やかな凪の気持ちでお断りできている。
「…………ぅ」
美馬さんを見ると、胸にぎゅっと手を当てて苦しそうに呻いている。
え!? ちょっと涙目なんですけど!
何故だ……何故なんだ……考えろ、考えろ、考えろ!
「ごめ……鈴木は何も悪くないから、気にしないで……!」
美馬さんの苦しそうな表情を見て、俺はやっと気づく。そうか、美馬さんは……。
「美馬さん!」
「ふえ!? す、鈴木! そんな急に……!」
俺は美馬さんの肩を強く掴み真っ直ぐ目を見つめる。
「ゲームに負けて悔しい気持ち、それは俺にも分かるよ……!」
「……はあ?」
俺は馬鹿だ。美馬さんが何に苦しんでいるかなんにもわかっちゃいなかった。
美馬さんはゲームが激よわなんだ!!!
だから、毎回負ける毎回罰ゲームをやらされている。
なら、どうすべきか。
答えは簡単! ゲームに強くなればいいんだ!
勝負に負ける。その悔しさはマジで分かる。
逆に勝てば気持ちいい。
そして、美馬さんはもしゲームに勝てれば罰ゲームをしなくて済む。
「「………!」」
廊下のギャル友たちがざわついている。そうだろう、そうだろう。
美馬さんがゲームに強くなれば、次に罰ゲームを受けるのはお前らなんだからな!
俺は外の慌てる気配に笑みが抑えられないまま美馬さんを見つめる。
「美馬さん……俺が君をゲームで勝たせてみせる! そして、嘘告白なんてしなくて済むようにしてみせる!」
「……はあ」
美馬さんはまだ状況が分かってないのか生返事。だが、外のギャル友がしゃしゃり出て来ない内に、コーチングOKを承諾してもらわねば!
「美馬さん! 俺が君にゲームを教えてあげるから! だから、これから放課後定期的にゲーム特訓しよう!」
「……ふええええ!? そ、それって、す、鈴木と放課後会ってゲームをするってこと!?」
同じこというとる。美馬さんは確か頭良しギャルだったはず。
なのに、こんな事をいうなんて。ゲームにおいて反射・反応速度はかなり重要だ。
やはり、俺が鍛えねば! うろこのたきさんに怒られない程度には。
「判断が遅いよ! やるのやらないのどっちなんだい!?」
「……あう、あ、あ、あ……」
美馬さんが強くなるには今、手を取るべきだと思う。だが、迷いがあるようだ。
確かにゲームは自力で強くなりたいという気持ちも分かる。だけど、コーチングを受けることは決して恥じゃない! 俺だってそうやって先輩達に鍛えてもらったんだ。
悩んでいる美馬さんがふとスマホを取り出す。誰かからの連絡らしい。
まさか……ギャル友が妨害を!?
「え……? 変更? あ、ま、まあ、そういうことなら……あの! 鈴木……ゲーム一緒にやってくれる……?」
ほ。どうやらギャル友からの連絡ではなかったようだ。
ギャル友ならきっと妨害してくるだろうから。
「うん! 美馬さん! 俺と一緒にゲームをしよう! そして、うまくなろう!」
「う、うん!」
そして、俺と美馬さんのゲーム特訓の日々が始まった。
ちなみに、ギャル友たちはすぐに廊下を走って逃げていた。遠くで悲鳴のような声が聞こえたからきっと俺がコーチについたと知り慌てているんだろう。
それからというもの、一週間に2日。俺と美馬さんのゲームの日が設けられた。
「いらっしゃい、美馬さん。じゃあ、早速やろっか!」
「やる!? あ、ああ、ゲームね! うん、ゲームやろう!」
最初は俺の得意な格闘ゲーム。美馬さんはやっぱり賢くて俺が教えたテクニックをすぐに覚えて自分のものにしていた。時々こっちを見てぼーっとしていたりするので集中力が課題だと思った。もっと集中して画面を見てと言ったらなんか睨まれた。あと、接待プレイなのに調子に乗り始めたのでボコボコにした。リアルで美馬さんにポカポカ殴られたが痛くなくて楽しかった。
「FPS系も抑えておいた方がいいよね」
「えふぴいえす……?」
まだ、美馬さんはギャル友とFPS系では勝負していないらしいので、差をつけるチャンスだった。ウチの先輩も含め口が悪くなるタイプが多いゲームだと思うけど、美馬さんは、「キャッ」「やめてよぅ」と清楚な悲鳴を上げるのでちょっと動揺した。指導を続けるとめちゃくちゃハートショットがうまくなって清楚悲鳴が少なくなったのはちょっと残念だった。ちなみに、FPS系に慣れたころには、下の名前で呼び合うようになった。
「パズルゲーもやってみようか!」
「やだよ、ユーキ絶対に強いでしょ」
パズルゲーは正直得意ジャンルではないけど、まだ、きらりに勝つ自信があった。
だが、結果は接戦。とんでもねえ連鎖をぶちかましてきやがる。マジできらり、ゲームセンスがありすぎる……!
なんでこんなセンスある人間があんなに連敗してて罰ゲームさせられてたんだ……?
ていうか、最近コイツ、嘘告白の罰ゲームやってこないな。やっぱり俺のコーチングのお陰かな!
なんか、ちょっと寂しい気もするがよかったよかった。他のギャル友も誰かに嘘告白してるんだろうか。
「ちょっと、ユーキ……このゲームやってみてくれない?」
「これ……恋愛シミュレーションゲームなんだけど?」
しかも、女性を攻略するタイプの。最近のギャルはこういうゲームでも対決するのか。
何かの参考になればと思いゲームを始める。
「ユーキって……ギャル系が好きなんじゃないの?」
「え!? ど、どこ情報だよ、それ……」
「前に、ぐ、偶然聞いたから」
どこだ……? ギャルが好きだって言ってたのはあのアニメの放映時期だから、中学生の頃なんだけど……。
きらりが何故か頬を膨らませて上目遣いで俺を睨んでいる……!
「なんで、清楚キャラ攻略してんの?」
ん? ん? んんんん?
なんで怒ってんの?
分からん! だが、こういう女性に詰め寄られている時は正直に話すに限るとキャプテンがボコボコの顔で教えてくれた。キャプテンは正直に話さずボコボコにされたらしい。勉強になるぜ!
「いや、普通に清楚系が好きだけど……ギャルは、昔、その、アニメで好きだったんだよ」
「……どんなアニメ?」
何故か追い詰められた俺は顎でDVDを指す。
きらりはそれを手に取ると、
「ふ~ん。…………ふ~ん」
そう言って、再び俺の隣に座りゲームを続けるよう促した。
なんかすっげえ怖かった。ちなみに、恋愛シミュレーションは大会とかではないから新鮮で楽しかった。隣ですっげえ目で画面を睨むきらりがいたけど。なんだ俺の攻略ヒロインになんか文句あるのか。それとも、俺の攻略法に文句あるのか。なんかメモってるのはなんなんんだ。
その日俺は清楚系ヒロインと付き合う夢を見た。そして、きらりがめっちゃこっちをじいっと見ていることに気づいて目が覚めた。めっちゃ心臓がバクバクいってた。
「ユーキ、今日は罰ゲーム付きで勝負しよ」
寝不足の俺に向かってきらりがそんなことを言ってきた。
ゲームの師匠としては、プレイヤーが寝不足なんて言い訳出来ない。
「分かった。いいぜ、何のゲームで勝負だ?」
「あいしてるよゲーム」
「え? なんだって?」
コントローラーを握った手を一旦耳に当て、きらりに尋ねる。
俺の知らないゲームタイトルのようだったが。
「あいしてるよゲーム」
知っている。
そういうゲームタイトルがあるかは知らないけど、そういうゲームがあり、世の男女たちが修学旅行とかでキャッキャウフフするという都市伝説は聞いたことがある。
だが、
「え? 二人だけど?」
「対戦よろしくお願いします」
「え? 罰ゲームは?」
「決まってるでしょ、告白よ」
「え? なんだって?」
きらりが俺の肩を掴んで離さない。
ていうか、今日ぼーっとしてたからあまりきらりの顔見てなかったけど、今日は化粧がめっちゃ薄い。 ていうか、なんか……なんか……めちゃくちゃかわいいんだが!?
「はあ!?」
「ゲーム開始ね! ユーキ、愛してるよ」
「ぐ、ぐぬぬ……」
ダメだ! ヤバい! 負ける! いやだ! いやだぁあああああ! 負けたくない!
いかなるゲームでも俺は負けるわけにはいかないんだ!
あれだけ夜中に俺を苦しめた心臓が暴れ足りないのかめっちゃ騒がしい!
「ふぅー……」
俺はキャプテンに教えてもらった呼吸法で心を鎮める。俺も学校に通いながらとはいえ、プロゲーマーの端くれ! 平常心だ! 俺のターン!
「あいしてるよ」
「……! ア、ア、ア、ア、ア、ア、ア、アタシの方が愛してるもん! Eスポーツの大会でがんばって戦って泣いて悔しがってるの見た時からずっとずっと愛してるもん!」
キャプテェエエエン! タスケテぇえええええええええ!
強敵すぎるんですけど! どどどどどうしたら!?
ていうか、大会で泣いたのって中学生の時なんですけど! え? あの大会見てたの!?
「あ、あい……」
「愛してるよ! ギャルが好きって言ってるの聞いてギャルになろうとがんばるくらい愛してるよ!」
「あ、」
「愛してるよ! 見れる試合は全部見てるよ! プレイもめっちゃ真似してるくらいに愛してるよ!」
「あ」
「愛してるよ! 罰ゲームで嘘告白の振りして少しでも付き合ってもらってちょっとでもアタシのこと好きになってくれたらって思って何回も諦めずにやっちゃうくらいにあいしてるよ!」
もうずっとあっちのターンなんですけど!? 連鎖がおわらんだが! そして、こっちの話を聞こうとしない。すごいしゅうちゅうりょくだ!
勘弁して! ハートショット喰らいまくりで俺のライフポイントはもうゼロよ!
あ、コイツ、恋愛シミュレーションのヒロインの真似ちょっとしてる気がする!
誰だ、そんなアドバイスした奴!
俺、負けちゃう!
だが! 俺は諦めない!
俺はきらりの肩を掴みじっと目を見つめる。
いつかと同じ。だけど、あの時とは違う。いろいろ分かってる!
きらりの気持ちも、俺の気持ちも。
「きらりよ、残念だったな……!」
「あ……」
「…………俺は一緒にゲームをし始めたころから爆上がりで好きになっていったんだ! つまり、伸び率なら俺の方が圧倒的に上! つまり! 俺の方が愛してる! 本当に本気で愛してる!」
負けたくない! ゲームにじゃない! この思いは例えきらりであろうと負けたくない!
「ぇ、ぅ……そんな言われたらずっと好きだったアタシには勝ち目無いじゃん……ばか……」
きらりは真っ赤な顔で目を伏せてそう呟いた。
俺の、勝ちだ。
「えーと、罰ゲームの意味ある?」
「はっはっは! 勝利の美酒に酔わせてくれよ。未成年だけど」
俺がそう言うときらりはちょっと口を尖らせて、そして、上目遣いで俺を見る。
「すきだよ。これだけは誰にも負けない。負けたくない」
「お、れ……ちょっと、なんでこっちにちかづ……っんむ!?」
……うん、これから俺はきらりに勝つことがあるんだろうか。
せめて、ゲームだけは勝ち続けたい。ようやく嘘のとれた嘘告白の先を受け止めながら俺はそう思った。
お読みくださりありがとうございました。
新作短編書きました!(2024.4.27)
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