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神隠しのおよめさん  作者: 月城月華
1/5

始まり1

 神隠しって知っているだろうか?

 日本古来からある現象で、子供に多いが、大人もたまに、ごくたまに体験する稀なる出来事である。

 その多くは、最中の記憶がないか、もしくは不思議な世界について語っている。

 それらのあやふやな体験談から、日本では神隠しは文字通り、【神が隠した】とされ、幽世や神界へといざなわれていたと信じられている。

 現在になって、神隠しは無くなったと多くの人々が思っているが、実際は『神事』や『近寄ってはいけない場所』が未だに残っている地方では当たりまえに起こっている現実だ。

 そもそも、年間の九歳以下の子供の失踪数は千を超えていて、これらすべてが人によると考えるほうが恐ろしい話だった。


 さて、そんな現状で、この話の主人公が住んでいるところも小さな神社が多くあるとある地方の田舎に過ぎなかった。

 最も、最近は都市部の余波を受け、だいぶと近代化しているが、それでもそこかしこにあるお社は日本の原風景を感じさせるたたずまいだ。

 幼少期はそこに住んでいたが、母親が田舎を嫌い一時期都市部にすんでいたのだが、離婚し父と共にここへ戻ってきたのは、セミがうるさい夏の季節であった。

 ちなみに、もうすぐ高校の二学期である。

 戻ってきてみて、母がこの地域を嫌いと言った理由が少しわかった気がした。

『女は女らしく』

 誰が言ったか、そんなことを言われた気がする。未だに家事を受け持っているのも、女性であるし、男どもが酒を酌み交わしている横で酌を強要したりする姿を見ているとげんなりするのも事実であった。

 というか、父についてきたことを少し後悔している。

 もっとも、男性である父からすると過ごしやすいのかもしれない。

「ほんと、さいてーー」

 引っ越しそうそう、親戚連中に囲まれて母の愚痴をこぼし、自らの娘が肩見せまい思いをしているのを放置しているのを見ると、思わず声が漏れた。

 炭の方で三角座りしておとなしくしていると、酔っぱらった親戚の一人が手招きしてくる。

 いやいやと、首を横に振ると、眉をひそめてそいつは近づいてきた。

「穂香ちゃん、こういうのは慣れといたほうがいいよ?ほら、お酌して。それと、慣れないのは分かるけど、裏方のほう手伝ってこなくていいの?」

「……」

「おじさん、これでも親切でいってるんだけど」

 酒臭いその人が近づいてきて、三池穂香の堪忍袋の緒はついに切れた。

「……ばかみたい」

「あっ?」

「ばかみたいって言ったの。ここの女の人も男の人も。ーーお父さんも。だって、男女平等がいまの国が進めてるスタイルなのに、時代に逆行してるもの。そんなにお酒が飲みたいなら自分で用意しなよ。私、知ってるんだよ。そういう男の人の大半が働いているうちは奥さんを馬鹿にしてるけど、いざ奥さんに先立たれたらご飯も炊けなくて四苦八苦して挙句ボケていくの。ほんと、サイテーだね」

「なっ、なっ、なっ」

「ゆっとくけど、嫁ぎ先がなくなるっていうのは脅しにもならないから。今時、女性も自分で稼いで生きるの当たり前だから。お酌?私まだ十五なんだけど。そんなに次ぎたいなら自分で注げよ!!」

「やめなさい、ほのか……」

「後、手伝えってのもばかみたい。男は表で酒飲んで、裏で女が支度するってのがここのやり方だ、とか言って自分もやりたくなかった事いつまでも踏襲してるから、人がどんどん減ってくんだよ!お父さんはちやほやされていいかもだけど、私にいろいろ押し付けないでよ!なんでこの集まりに来たくないって言ったのにつれてきたのさ?」

「っ、ほのか……それは」

「ほんと、ばかみたい。私、帰るから。そんで、SNSにこの状況上げて、いろんな人にここには来ないほうがいいですよって言ってやる。もう一度いうよ、お父さん、さいてー」

 後ろでは、サイテーと言われた人たちがざわついて、怒っていたが、穂香は気にも留めなかった。

 父が顔を真っ赤にして謝っている。ほんと、ばかみたいだ。

 穂香は自分の荷物を持って自宅までの道を駆けだした。


 その日のことがあって、穂香は遠巻きにされることになった。

 一歩外に出たらひそひそと陰で何やら言っている声が聞こえてくる。しかし、穂香は持ち前の負けん気の強さをもってして堂々と過ごしていた。悪いことを言ったとは思っていなかったからだ。

 もっとも、父は腹を痛めているので、いつまでもつか分からなかったが。


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