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オチタキシ2

金属同士が激しくぶつかり、甲高い音と火花が散る。


読めてきた。


オチタキシの、《剣術》のスキルレベルは3。


私の《抜刀術》のスキルレベルも3。


同じレベル3でも、やっぱり差はあるものだ。


剣の腕に関しては…私の方が上!


「シイッ!!」


太刀筋を読み切り、受け流す事でオチタキシは体勢を崩した。


そこへ、全力で刀を振り下ろし、ちょうど狙いやすい位置まで降りてきた頭を、叩き割ろうとする。


「ガガッ!!」


しかし、オチタキシは直前で横に飛び、刀を回避した。


私から距離を取ると、剣を構え直し、私とは別の方向にも警戒心を向ける。


「かずちゃん!大丈夫!?」

「神林さん!!」


オチタキシが警戒心を向ける方向から、神林さんが走ってくる。


もう5体のホネノキシを倒したみたいだ。


このまま神林さんと合流すれば、2対1の状況になり、勝率はグンと上がる。


……でも、それはもう少しあとにしたい。


「よく耐えたわね。私が盾になるから、かずちゃんは攻撃をよろしく」

「…待ってください」 


《鋼の体》を発動し、オチタキシに襲い掛かろうとする、神林さんを呼び止める。


「なに?何か作戦があるの?」


私を守るように前に出つつ、そう問いかけてくる神林さん。


その姿は、とてもたくましくて、こんな状況でもうっとりしてしまう。


しかし、ここで気を抜くのは危険極まる。


気合を入れ直し、私は神林さんの前に出た。


「私に、一人で戦う時間をください」

「……はあ?」


神林さんは、至極当然の反応を見せるが、私はそれを無視して更に前に出る。


「剣士の戦いに、横から茶々を加えないでください」

「茶々って……分かったよ。でも、少しでもヒヤッとしたら、間に入る。それだけは覚えておいて」


神林さんは一歩下がり、溜息をついて《鋼の体》を解除した。


オチタキシもそれを見て、神林さんに対する警戒を解き、私に集中する。


私も深呼吸をし、いざ死合を再開しようとしたその時―――


「かずちゃん、魔力を使って」


後ろから、神林さんに声を掛けられた。


「魔力って………ちょっと、邪魔しないでくださいよ!」

「いいから、私の言うことを聞きなさい」

「むぅ……」


声を掛けてきたことに怒るが、神林さんは気にせず魔力を使えと言ってくる。


仕方なく、オチタキシの目の前ながら、魔力操作の方法を思い出し、魔力を操って、全身に巡らせる。


……ただ、オチタキシの目の前だからか、全く魔力が纏まらず、ほとんど霧散して、体から抜けていってしまう。


「集中する」

「むぅ…分かってますよ」


神林さんが、私の肩に手を置いて、集中するように促してくる。


私だって、やろうと頑張ってるのに…


宿題をしようとしてる時に、『宿題しろ』と言われてやる気を無くすような、あの反抗心。


あれが私の心の中で湧き上がるが、そんな下らないことをしている状況じゃない。


グッと堪えて、魔力を練ると、いつもよりも上手くできた。


その時、突然私の中で何かが湧き上がり、魔力操作のやり方が、スンと理解出来た。


「これは…?」

「もしかして、いけた?《魔闘法》」


《魔闘法》…神林さんが私を呼び止めたのは、私に《魔闘法》のスキルを、習得させたかったから?


――――――――――――――――――――――――――


名前 御島一葉

レベル31

スキル

  《魔導士Lv2》

  《鑑定》

  《抜刀術Lv3》

  《一撃離脱》

  《魔闘法Lv1》


――――――――――――――――――――――――――


やった!


ついに《魔闘法》を習得できた!!


「やりました!私、やりましたよ!神林さん!!」

「そう。はしゃぐのは良いけど、ずっと待っててくれたオチタキシと、戦わなくていいの?」

「あっ…!」


そう言えば、私が魔力を練っている間、オチタキシは一切攻撃せずに待っててくれた。


人間並みの知能があるんじゃないかな?このガイコツ。


「さて…待っててくれてありがとう。お陰で、あなたを倒せる可能性が、グンと上がった」

「カカカ……」

「…やっぱり、私の言ってる事が理解出来るのかな?なんだかんだ、会話が成立しそう」


私の言葉に、反応を見せるオチタキシを見て、人間並みの知能と、私達の言語を理解できる能力があることが推測できる。


となると、ある程度強いモンスターは、こっちの言葉が理解できたり?


モンスターだからって、目の前で作戦会議するのは不味いかもね。


「まあ、いいか。ふぅ~………行くぞ!」


余計なことを考えるのをやめ、息を吐いて集中力を取り戻す。


そして、魔力で強化された脚で、走り出す。


さっきよりも、いくらか速くなり、心做しか体も軽い。


オチタキシの間合いに飛び込むと、すぐに剣が振り上げられたが…


(見える…さっきよりも、よく見える!)


太刀筋は読めている上に、《魔闘法》で視力が強化され、細かな動きまでよく見える。


余裕を持って、オチタキシの攻撃を躱し、頭部を私の間合いに捉える。


「ふぅ~………シッ!!」


息を吐いて集中力を高め、意識して魔力を操る事で身体能力を強化する。


刀にも魔力を流し、その強度を上げ、今私が出せる最高速度の斬撃が、オチタキシの頭部を撃つ。


「ガガッ――――!!?」


あまりの早業に、オチタキシは避けることすら出来ず、私の刀は見事にその頭蓋骨の一部を砕いた。


「私の……勝ち!!」


そう宣言した直後、後ろから神林さんが飛んできて、私が刀で撃った方向とは、逆の方向から蹴りを突き刺す。


その一撃で、オチタキシの頭部は完全に砕け、残った体は、糸が切れた人形のように崩れ落ちた。


「もし、あなたが《ジェネシス》に囚われた、“真の騎士”だったなら……良き来世が、訪れますように」

「………」


煙に変わり、崩れ行くオチタキシの体に合掌し、そう呟いた。


神林さんも、私に合わせて合掌し、オチタキシの事を弔っている。


やがて、鎧も含め、オチタキシは完全に煙となり、その場には魔石だけが残った。


「おぉ…流石、特殊個体。大きな魔石ですね」

「魔力の含有量も多そうね。これは、期待できるんじゃない?」


オチタキシが残した魔石は、私達が見つけたどの魔石よりも大きく、魔力の含有量も多そうなものだった。


アイテムボックスに魔石を入れると、急に疲れが襲ってきた。


「疲れた…」

「お疲れ様。抱っこしてあげようか?」

「お願いします…」


疲労感から、立つのも嫌になった私は、神林さんに抱っこしてもらい、そのままダンジョンを出た。


当然、ダンジョンの外に出ると人目に付く訳で……視線が痛かった。


それでも、この疲労感は本物なので、抱っこしてもらったまま、魔石を換金し、車まで運んでもらう。


そして、マンションに着いてからも、抱っこしてもらって、ソファーの上に降ろされた後、シャワーも浴びないで死んだように寝た。



目が覚めたら次の日になっていて、『臭いからお風呂に入れ』と神林さんに言われてしまった。


地味に傷付いたけど、我慢して朝風呂を堪能しましたとさ。


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