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苦手な方はご注意ください。

三国志演義

三国志演義・虎牢関の戦い~飛将軍呂布~

作者: 霧夜シオン

汜水関の敗戦をうけて、董卓は援軍派遣と同時に呂布を伴って自ら虎牢関に進軍。

この関に十万の兵をもって篭れば、天下の諸侯は道を失う、とまで称された要害の地である。

そこに呂布を据えるという、金城鉄壁の構えをもって臨むのであった。


声劇台本:三国志演義・虎牢関ころうかんの戦い~飛将軍呂布ひしょうぐんりょふ


作者:霧夜シオン


所要時間:約35分


必要演者数:最低9人

      (8:0:1)


※他に良い組み合わせがあれば教えていただければ幸いです。


配役例【()内はセリフ総数】


呂布:(34)

董卓:(20)

関羽・連合軍部将:(18+9)

張飛・連合軍兵士2:(20+8)

劉備:(21)

袁紹:(21)

曹操:(21)

孫堅・董卓軍部将:(11+5)

ナレ・連合軍兵士1:(13+9)


※これより少なくても一応可能です。


はじめに:この一連の三国志台本は、

     故・横山光輝先生

     故・吉川英治先生

     北方健三先生

     蒼天航路

     の三国志や各種ゲーム等に加え、

     作者の想像

     を加えた台本となっています。また、台本のバランス調整のた

     め本来別の人物が喋っていたセリフを喋らせている、という事

     も多々あります。

     その点を許容できる方は是非演じてみていただければ幸いです

     。

     なお、人名・地名に漢字がない(UNIコード関連に引っかかっ

     て打てない)場合、遺憾ながらカタカナ表記とさせていただい

     ております。何卒ご了承ください<m(__)m>


     なお、上演の際は漢字チェックをしっかりとお願いします。

     また上演の際は決してお金の絡まない上演方法でお願いします

     。

     ある程度はルビを振っていますが、一度振ったルビは同じ、

     または他のキャラのセリフに同じのが登場しても打ってない場

     合がありますので、注意してください。

     なお、性別逆転は基本的に不可とします。



●登場人物


呂布りょふ・♂:あざな奉先ほうせん

     五原郡ごげんぐん出身。弓馬に秀で、方天画戟ほうてんがげきを枯れ枝の如く振り回す。

     ヘイ州の刺史しし丁原ていげんの養子になっていたが、董卓とうたく配下の李粛りしゅく

     誘いを受けて赤兎馬せきとばを手に入れ、丁原ていげんを裏切って殺すと董卓とうたく

     付く。三十代。


董卓とうたく・♂:あざな仲穎ちゅうえい

     涼州りょうしゅうの長官。黄巾こうきんの乱では大した戦功を挙げなかったが、

     中央に賄賂わいろを送ることで地位を保つ。

     十常侍じゅうじょうじの乱に乗じて都・洛陽らくように乗込み、専横せんおうの限りを尽くす。

     演義より正史の方が本人のやらかしのエグさをリアルに描いている。


関羽かんう・♂:あざな雲長うんちょう

     劉備りゅうび張飛ちょうひと義兄弟のちぎりを結んで乱世を鎮めんと志を立てる。

     現在は劉備りゅうびの同窓の士、公孫瓚こうそんさんの軍に陣借りしている。

     さきの汜水関しすいかんの戦いで敵総大将・華雄かゆうを一騎討ちにて討ち取る。


張飛ちょうひ・♂:あざな翼徳よくとく

     劉備りゅうび関羽かんうと義兄弟の契りを結んで乱世を鎮めんと志を立てる。

     現在は劉備りゅうびの同窓の士、公孫瓚こうそんさんの軍に陣借りしている。

     関羽かんう華雄かゆうを討ち取った事で、自分も活躍の場を望んでいる。


劉備りゅうび・♂:あざな玄徳げんとく

     中山靖王ちゅうざんせいおう劉勝りゅうしょう末裔まつえいを自称。

     関羽かんう張飛ちょうひと義兄弟の契りを結び、乱世に苦しむ民を救おうと

     戦い続ける。現在は同窓の士、公孫瓚こうそんさんの軍に陣借りしている。


袁紹えんしょう・♂:あざな本初ほんしょ

     漢王朝の最高の役職である三公さんこう大尉たいい司徒しと司空しくう)を一族から

     代々輩出だいだいはいしゅつしている、名門中の名門の末裔まつえい

     優柔不断な所もあるが、基本的には優れた人物ではある。

     周囲に推されて反董卓連合軍の総大将を務める。


曹操そうそう・♂:あざな孟徳もうとく

     漢の相国しょうこく曹参そうしん末裔まつえいを名乗る。

     人相見に「治世の能臣、乱世の奸雄」と評された、兵法、政治、

     果ては詩文にまで名を残す事になる。

     三国志版の覇王にして破格の英雄とも言うべき人物だが、この時

     はまだほとんど力のない状態。

     三十五歳。


孫堅そんけん・♂:あざな文台ぶんだい

     江東の虎とうたわれる智勇に優れた人物。

     反董卓連合軍に参加し、汜水関しすいかんにて董卓とうたく配下の華雄かゆう対峙たいじ

     初戦こそ有利に戦いを進めるが、彼を恨む者が袁紹えんしょうに告げ口した

     ため兵糧を断たれ、華雄かゆうの夜襲を受けて敗走することとなる。


連合軍部将・♂♀不問:反董卓連合軍の部将。


連合軍兵士1・♂♀不問:各国から集まった反董卓連合軍兵士その1。


連合軍兵士2・♂♀不問:上記その2。


董卓軍部将・♂♀不問:董卓軍の部将。

           暴虐な軍の将らしく。


ナレーション・♂♀不問:雰囲気を大事に。


※演者数が少ない状態で上演する際は、被らないように兼ね役でお願いしま

 す。



――――――――――――――――――――――――――――――――――



ナレ:董卓とうたく汜水関しすいかんの総大将を任された華雄かゆうは、関羽かんうに討たれた。

   敗北の知らせに驚愕きょうがくした董卓とうたくは、急ぎ汜水関しすいかんに援軍を派遣はけん

   同時に自身も虎牢関ころうかんへ出陣する。

   一方、敵将を討って大いに意気上がる連合軍であったが、そこへ凶報きょうほう

   がもたらされた。


連合軍部将:申し上げます!

      董卓とうたくは十五万の大軍を即日編成、うち五万を汜水関しすいかんへ援軍に

      派遣はけんしました。

      残る十万は董卓とうたく自らが率いて虎牢関ころうかんへ進軍し、守りを固めてい

      るとの事です!


曹操:わかった。引き続き敵の動きを探れ。…袁紹えんしょう殿。


袁紹:うむ、由々(ゆゆ)しい事となった。

   味方の動揺を防ぐ為にも、さっそく軍議ぐんぎを開かねばなるまい。


曹操:虎牢関ころうかんは天下の重要な交通の要衝ようしょうだ。

   そこを抑えられては我らの喉元のどもとに剣を突き付けられたに等しい。

   急ぎ諸侯しょこうを招集しよう。


ナレ:連合軍も董卓とうたくの動きに即座に対応、汜水関しすいかんには一部の軍を残し、

   虎牢関ころうかんへは総大将の袁紹えんしょうや遊軍の曹操そうそうをはじめ、王匡おうきょう鮑信ほうしん喬瑁きょうぼう

   袁遺えんい孔融こうゆう張楊ちょうよう陶謙とうけん公孫瓚こうそんさんら八ヶ国の諸侯しょこうがあたることとなっ

   た。

   一方、虎牢関ころうかんでは。


董卓:ふふふ、連合軍のネズミ共めが…この天然の要害である虎牢関ころうかんへ挑も

   うとしておるようだな。


呂布:そのようです。


董卓:呂布よ、そちには三万の精兵を授ける。

   虎牢関ころうかんの正面に陣をき、彼奴きゃつらの軍を木端微塵こっぱみじんに叩きつぶすのだ。


呂布:お任せを。必ずやご期待にこたえてみせます。


董卓:袁紹えんしょう曹操そうそうめ、わしに楯突たてつくとどうなるか…思い知らせてくれるわ!


董卓軍部将:申し上げます!

      敵軍が虎牢関ころうかんにほど近い地点までやって来たとの事です!


董卓:来おったか。

   すぐ戦備に掛かれィ!


呂布:ははっ。


   【二拍】


   聞けェ、者共!

   我らは虎牢関ころうかんより出て正面に布陣ふじんする!

   日頃の調練ちょうれんの成果を存分に発揮してみせろ!!


呂布役以外全員:おうっ!【SE代用可】


ナレ:呂布が布陣ふじんを終えると、時を同じくして袁紹えんしょう率いる連合軍が

   続々と虎牢関ころうかんへ攻め寄せた。


呂布:フン、来たな…。

   いいか弓隊、合図を出すまで敵を十分に引き付けろ!

   

董卓軍部将:ははっ。

      お前たち、いつでも矢を放てるようにしておけ!


連合軍兵士1:見えてきた…アレが虎牢関ころうかんか? なんてでけぇ…。


連合軍兵士2:敵は外に陣を構えてるのか…あ、あの先頭にいるのは!


連合軍兵士1:あ、あれが呂布りょふか?


連合軍兵士2:大きな紅い馬…あれが有名な赤兎馬せきとば…。


連合軍兵士1:か、勝てるかな…。


連合軍兵士2:黒一色くろいっしょくの目立ついで立ちに、でかい方天画戟ほうてんがげき…自分が狙われ

       ることを気にもしてないぞ…。


連合軍部将:聞け、お前達!

      我ら河内かだいの軍は、これより敵軍に攻撃を仕掛ける!

      太守たいしゅ王匡おうきょう様の指揮の元、大いに戦功をあげるのだ!

      突撃ーーーーッ!


連合軍部将・呂布役以外全員:【喚声・SE代用可】


呂布:まだだ…まだ引き付けろ…。


   【三拍】


   よし、今だ!! 弓隊、放てッッ!!


連合軍兵士1:うわっ、矢の雨を降らせてきやがった!


連合軍兵士2:うぐっ、う、腕が!


連合軍部将:く、くそっ、なんのこれしき! 


呂布:よォし、敵はひるんだ! 騎馬隊、続けェーーーーーッ!!!

   連合軍の雑魚ざこ共、皆殺しにしてくれるわ!

   ぬぅううおおおあああああ!!


連合軍兵士1:ひ、ひいいい、なんて強さだ!


連合軍兵士2:に、逃げろ! とてもかなわん!


連合軍部将:ひ、ひるむな! 戦え!!


呂布:はっはははは! 口ほどにもない奴らだ!

   誰一人この呂布りょふの前に立ちふさがる猛者もさはおらんのか!!


   【二拍】


   む…そろそろ頃合いだな、あの地点を越えるとこちらが不利にな

   る。

   全軍、虎牢関ころうかん前まで引き上げろ!


ナレ:初戦は呂布りょふ率いる董卓とうたく軍の圧勝に終わった。

   河内かだい太守たいしゅ王匡おうきょう配下の猛将、方悦ほうえつ

   上党じょうとう太守たいしゅ張楊ちょうよう配下の槍の名手、穆順ぼくじゅん

   北海ほっかい太守たいしゅ孔融こうゆう配下の猛者もさ武安国ぶあんこく

   初日以降、連合軍の名のある者達が呂布りょふに挑んだが、誰一人として

   かすり傷一つ負わせられず、彼の方天画戟ほうてんがげきに刺し貫かれ、あるいは

   両断されるという惨敗ざんぱいこうむった。


張飛:兄貴、敵が撤退てったいしていくぞ。


劉備:見事な敵の布陣ふじんだ。防御は念頭にない。

   いつでも前に出て敵を粉砕できる備え方だ。


関羽:兄者、あの呂布りょふという黒衣の将は只者ただものではありませんぞ。

   あんな戦い方は初めて見ました。


劉備:手足のように動かすとは、呂布りょふとその騎馬隊のようなものを言うのだ

   ろう。


張飛:ッ兄貴、また呂布りょふが動き出したぞ! なんて速さだ!


関羽:味方の陣が、まるで鋭利な刃物で切り裂かれていくようだ。

   部隊の将がいるところへためらいもなく突撃し、そして討ち取ってい

   く。


劉備:…だがどうやら、呂布りょふはかなり周到しゅうとうな男らしい。

   見ろ、ある一定の地点から先へは進んでこようとしない。


張飛:兄貴、あの野郎は俺に任せてくれ! 必ず討ち取ってみせるぜ!


劉備:待て翼徳よくとく

   我らは公孫瓚こうそんさん殿の軍の一部にすぎない。

   個人でいくさをしているわけではないのだ。


張飛:そりゃあ分かってるけど…あんな男とぜひ一度戦ってみたいぜ。


関羽:兄者、公孫瓚こうそんさん殿から本陣で軍議があるゆえ、すぐに参るようにとの

   事です。


劉備:分かった、急ごう。


ナレ:劉備りゅうび達が本陣へ着くと他の諸侯はすでに参集しており、

   上座かみざには袁紹えんしょうが苦り切った表情で座っていた。


袁紹:ぬううう呂布りょふめ、何と言う凄まじい武勇だ!

   我が軍の猛者もさ達が、まるで子供のようにあしらわれているではないか

   !


曹操:…おそらく、あの武勇は何百年に一人出るかどうかだ。

   見たであろう。一万の敵軍がまるで一頭の巨大な獣のような統率のと

   れた動きをし、その先頭に必ず呂布りょふがいる。

   

袁紹:むむむ、ではどうする?

   これまでのように真正面ましょうめんからぶつかり合っても勝ち目はないぞ。


曹操:これは、新手あらてを連続して繰り出し続けるしかあるまい。

   もう少し呂布りょふが攻め込んでくれば、八ヶ国の軍でもって一斉に掛かる

   事もできるが、どうしてもこちら側の原野げんやまでは出てこようとしない

   。

   ただ強いだけの男ではないのは、この事からも分かる。


劉備:…曹操そうそう殿。

   董卓とうたくはここで我らを防ぐのではなく、勝つつもりでいるのだと思いま

   す。

   ここで勝てば、汜水関しすいかんで戦っている味方を挟み撃ちの形にできます。

   

曹操:勝つつもり、か。

   となれば今までの呂布りょふの動きは、董卓とうたくの意を受けてこちらの力を測っ

   ている…ということになるな。


劉備:はい。

   それゆえ、新手あらてを次々に当てていけば、それだけ手の内をさらす事に

   なりはしないでしょうか?


曹操:確かに。

   そしてこちらの力を見定めたうえで一気に…か。

   呂布りょふ周到しゅうとうだが、董卓とうたくも相変わらず狡猾こうかつな奴よ。

   とはいえ、何か策はあるのか、劉備りゅうび殿?

   ここでの対陣はこれ以上長引かせるわけにはいかん。

   地の利も補給の容易さも、董卓とうたく側にがある。


劉備:呂布りょふを動かさないことです。

   それにはまず、騎馬隊を封じなければなりません。

   公孫瓚こうそんさん殿の軍が呂布りょふを止めて虎牢関ころうかん下まで押します。その間に全軍で

   騎馬隊封じの馬止めのさくを三重、四重にめぐらします。

   そしてさくの内側には弓隊を配置するのです。


曹操:ふうむ…なるほどな。

   よかろう!

   公孫瓚こうそんさん殿の軍が呂布りょふの足止めに成功すれば、この策はうまくいくで

   あろう。

   袁紹えんしょう殿、それでよろしいか?


袁紹:よし、まずは全軍で馬止めの柵に用いる木を集めるのだ!


ナレ:連合軍は劉備りゅうびの策に従って動き出した。

   公孫瓚こうそんさんは騎馬隊を先頭に軍を動かし、虎牢関ころうかんへ進軍する。

   対する呂布りょふも騎馬隊の先頭に立ち、中央に三千、両翼に千ずつ、

   黒地くろじに赤の文字で描かれた旗をはためかせつつ、見事な動きで向かっ

   てきた。


劉備:雲長うんちょう翼徳よくとく、二人とも呂布りょふから目を離すな。


張飛:おう! へへへ、腕が鳴るぜ!


関羽:承知! 公孫瓚こうそんさん殿が危機におちいった時は即座にかかります!


張飛:見ろ兄貴、公孫瓚こうそんさん殿は真っこうから勝負を挑んだようだ。

   だがあの動きじゃ…。


関羽:おそらく勝負になるまい。

   早く見切りをつけてもらえれば良いのだが。


劉備:!! 公孫瓚こうそんさん殿が敗走し始めた!

   呂布りょふげきを何とかかわしながらこちらへ移動してきている!


呂布:公孫瓉こうそんさん、口ほどにもない奴め! その首を置いていけ!!


張飛:先に行くぜ、兄貴!! はあッ!!


   【二拍】


   待てッ呂布りょふ! 燕人張飛えんひとちょうひこれにあり! その首から先に貰った!!


呂布:なにィ!?

   なんだそのみすぼらしい身なりは! 足軽あしがるごときが引っ込んでいろッ!!


張飛:ふん、見てくれで判断すると痛い目にあうぜ! そらァッ!!


呂布:うぬッ!

   おのれ下郎げろう!! 真っ二つにしてくれる!!

   ぬおァッ!!


張飛:やってみろッ!! おぉうッ!!


呂布:ぐッ!! ッこいつ…馬鹿にできんな。

   本気で相手してくれる!

   うぅぅおおおおおぉぉぉおおおッ!!


張飛:ぐうっ! こ、こいつ、さっきまでのは遊んでやがったのか!?


呂布:!? ぬうう今のを防ぎきるとは…!

   これほどの男がなぜ足軽などしている…!?


張飛:くそっ、さすがに名だたる豪雄ごうゆうだ…!

   だが、負けるわけには、いかねぇえ!!

   おらあぁッ!!


呂布:ちいいぃッ! 


関羽:義弟おとうとひるむな!!

   関羽雲長かんううんちょう、これにあり!

   加勢するぞ!!


劉備:我は劉備玄徳りゅうびげんとく! 呂布りょふよ、そこを動くな!


ナレ:張飛ちょうひと撃ち合う呂布りょふ目がけ、二人の義兄弟が矢のように馬を駆けさ

   せて撃ちかかる。だが、呂布りょふにはまだ嘲笑あざわらう余裕さえあった。


呂布:何をッ! 束になってかかって来い!!

   そこの髭男ひげおとこ、貴様から死ぬか?!


関羽:見くびるな! この青龍偃月刀せいりゅうえんげつとうが受けられるか!!

   はあああッ!!


呂布:ッなッにィ!?

   何だこの重い撃ち込みは!


関羽:その首、もらった!!


呂布:ふん! なめるな!! 

   ぬぅうああああぁぁぁあああッ!!


関羽:ッぐぬぅ!!

   さすが呂布りょふ、何という一撃だ…!!


呂布:馬鹿な…全力だぞ?!

   さっきの張飛ちょうひとやらの腕にも驚いたが、まだいたのか!


関羽:翼徳よくとく、兄者! 三方から行くぞ!


張飛:おうよ! 呂布りょふ、覚悟しやがれ!!


劉備:よしッやろう、義弟おとうとたち! はッ!


呂布:くっ! 他の二人ほどではないが、上手くすきを突いてくる…!

   くそ、わずらわしい奴め! おぉあッ!!


劉備:ッ! よし、かわせたか…あれ程の巨大な大矛おおほこ、まともに受ければ

   剣ごと叩き斬られかねない…!


関羽:兄者はやらせん! ぬぅううおおおッ!!


張飛:兄貴には指一本触れさせねえ!! おらああぁぁああッ!!


呂布:うっ、ぐっ、ぬううううう!!!

   いかん、赤兎せきとひづめ退いたか…ちっ、これまでだな。

   はッ!


関羽:うっ、呂布りょふが逃げるぞ!


張飛:待ちやがれ、呂布りょふ!!


呂布:後日再戦だ! その首、次に会うまでによく洗っておけ!!


劉備:明日をも知れぬ武人同士だ! 戦場での出合いに後日は無い!

   返せッ、呂布りょふ!!


関羽:兄者、呂布りょふの乗る赤兎馬せきとばは一日千里を走る名馬、我らの馬とは比べ物

   になりません。追いつけますまい。


張飛:ちくしょう、もう少しだったのによ!


劉備:だが、我らが食い止めたおかげで呂布りょふに騎馬隊の指揮を取らせず、

   その間に虎牢関ころうかん下へ敵軍を押し戻すことに成功した。

   そして…見ろ、二人とも。


関羽:おお、馬止めのさくが…!


張飛:よォし、これで敵の騎馬隊は役に立たなくなるぜ!


劉備:我らの目的は達した。

   それに、敵は押し戻される際にかなりの損害を受けたようだ。

   ひとまず引き上げよう。


ナレ:公孫瓚こうそんさん劉備りゅうび達の活躍によって、董卓とうたく軍は虎牢関ころうかん下まで押し込められ

   た。

   連合軍の士気は大いに奮い、各国諸侯のひるがえる旗には昇る朝日の

   ごとき勢いがあった。

   だがそこへ、さきに汜水関しすいかんで敗れた敗残の将の影が近付いていた。


連合軍部将:さあ皆、飲め飲め! 勝利の祝い酒だ、遠慮はいらんぞ!


連合軍兵士1:ははは、こうなりゃ、洛陽らくようへ攻め込むのも時間の問題だ!


連合軍兵士2:そん時ゃ、俺が一番乗りだ!


連合軍部将:ははは、こいつめ! ん…? あ、あれは!


孫堅:…この有様ありさまは、何だ?


連合軍部将:こ、これは孫堅そんけん殿! ご無事でしたか!

      今日は董卓とうたく軍を打ち破って虎牢関ころうかん下まで押し戻す事に成功した

      ので、その祝いのうたげです。


孫堅:…そうか。

   袁紹えんしょう殿は?


連合軍部将:袁紹えんしょう殿は本陣にて、他の諸侯の方々とうたげの真っ最中かと…。


孫堅:…わかった。邪魔をしたな。


連合軍部将:……っ、さ、さぁお前達! 飲み直すぞ!


連合軍兵士1:お、おい…見たか、孫堅そんけん様の目が血走っていたぞ…。


連合軍兵士2:ああ、殺気が全身からみなぎってた…。


袁紹:いや、今日は大勝利といって差しつかえあるまい!

   諸侯よ!大いに飲んでくれ!


曹操:しかし、あの多数の首の中に、呂布りょふのがないのは遺憾いかんではあったな。


袁紹:なに、関羽かんう張飛ちょうひなどという足軽あしがるに負けて逃げるようでは、

   呂布りょふの首に以前のような値打ちはあるまい、はははは。


曹操:(ふん…負ければ人のせいにし、勝てば自分一人で戦ったように思っ

   ているのだろう…。)

   ん…?

   ! 孫堅そんけん殿か!?


袁紹:おお孫堅そんけん殿、無事であったか!

   今ちょうど勝利のうたげを開いていたところだ。

   貴公も仲間入りされるとよい!


孫堅:…その前に一つ、袁紹えんしょう殿に聞きたい事がある。


袁紹:? なんであろうか?


孫堅:汜水関しすいかん華雄かゆう対峙たいじしていた際、なぜ兵糧ひょうろうを送らなかったか、

   そのわけを聞かせてもらいたい。


袁紹:う、そ、それは…!


孫堅:そのため兵達は飢え、軍紀は乱れ、戦う気力も奪われた所に敵の夜襲やしゅう

   を受けて次々と死んでいった。

   一軍を率いる将として、返答次第によってはたとえ袁紹えんしょう殿といえど

   許さん!


袁紹:ま、待て孫堅そんけん殿、それについては…


孫堅:【↑の語尾に被せて】

   言い訳は無用だ!

   なぜ兵糧ひょうろうを送らなかったか、それだけ聞けばこちらにも覚悟がある。

   かみは国家の為、しも天下万民てんかばんみんの為に立ちあがったというのに、

   その同じ味方にこのような仕打ちをするとは…返答やいかに!!


袁紹:ま、待て、待ってくれ! あれは部下が勝手にしたことだ!

   わしは知らなかったのだ!

   今その男をここに連れてくる!


孫堅:【唸る】………。


曹操:(袁紹えんしょうめ…部下の告げ口に踊らされたな…。)


袁紹:こ、この男だ、孫堅そんけん殿! こやつが勝手にしたことなのだ!

   手討てうちにするゆえ、どうかそれで怒りをしずめてくれ!


   ええい、なんじが勝手な真似まねをしたために、我らの結束にひびが入ったで

   はないか!

   ッッ!!


曹操:(ふん…総大将みずからが味方の足を引っ張るか。

   …この分では連合軍も先行きが怪しいな…。)


袁紹:な、これで怒りを収めてくれ、孫堅そんけん殿。


孫堅:……。

   (こんな男を相手に怒ってみても始まらんか…。)

   いいだろう。承知した。


袁紹:おお、そうか! さぁさぁ中でうたげの続きと参ろう!


ナレ:小さな波乱はあったが、連合軍陣地は勝利にきかえる。

   いっぽう虎牢関ころうかん董卓とうたく軍は、呂布りょふが一騎討ちを捨てて退却した事もあ

   り、その士気は低下していた。

   呂布りょふは関内の董卓とうたくの居室に呼び出されると、その前に進み出る。


呂布:お呼びですか。


董卓:そちの部隊は、虎牢関ころうかん下まで下がったな。


呂布:下がったのは大した事ではありません。

   問題は、馬止めのさくです。


董卓:さくか…破れるのか?


呂布:敵に気づかれぬよう騎馬隊を大きく迂回うかいさせ、背後から攻める方法が

   あります。


董卓:どれぐらいの日数でできる?


呂布:およそ十日から二十日もあれば可能でしょう。


董卓:ならん。時がかかりすぎるではないか。

   その間に連合軍どもが新しい動きを見せぬ保障は無い。

   しかし…烏合うごうの衆とあなどっておったが…彼奴きゃつらもやりおるわ…。


呂布:強いのは一部に過ぎません。


董卓:孫堅そんけんか?

   こちらに付くように李カクを遣わしたが、失敗に終わったわ。


呂布:それは無理でしょう。

   それに手ごわいのは孫堅そんけんではなく、公孫瓚こうそんさんとその軍です。

   それがしとまともに打ち合える武勇を持つ者達がおりました。

   ですが、その者達も孫堅そんけん同様、こちらにはなびきますまい。


董卓:ぬうう…そうか。

   やむをえん。ここに来てからずっと考えておったが、今回のそちの

   退却と先ほど聞いた李儒りじゅの意見を合わせて、今後の動きを決めたぞ。


呂布:敵を打ち破る策ですか?


董卓:そうではない。

   確かにそちに全軍を預ければ可能だろうが、勝ったところで彼奴きゃつらは

   ありのように散っていき、また何かあると集まってくるだろう。

   そのたびに汜水関しすいかん虎牢関ころうかんを守らねばならん。

   それではきりがないわ。


呂布:確かにそうですが…では、いかがされるので?


董卓:洛陽らくようが守りにくいとは言わんが、もっとたやすく守れる所がある。

   それは長安ちょうあんよ。そこへ都を移す。


呂布:なるほど、確かに天然の要害ようがいに守られていますな。


董卓:そうじゃ。しかもわしが力をたくわえた涼州りょうしゅうも近い。

   そこへみかどと財宝と民をそっくり移し、廃墟はいきょ同然となっているのを

   新たに建設させるのだ。

   更には洛陽らくように住んでいる何百もの商人からたくわえを全て吐き出させる。

   逆らうものは一族郎党いちぞくろうとう皆殺しじゃ。


呂布:では、洛陽らくようはどうするのですか?


董卓:連合軍にはチリ一つ残してやるつもりはない。

   すべてを奪ったあと、火をかけて焼き払ってくれるわ。

   それよりも呂布りょふよ、そちに頼みたい事がある。


呂布:? 何でしょうか。


董卓:漢王朝の歴代皇帝の墓には莫大な副葬品ふくそうひんがある。

   墓をあばいてそれもすべて奪い、長安ちょうあんへ送るのじゃ。


呂布:! (死者の墓まで…何という…。)

   …わかりました。


董卓:李儒りじゅによれば街には運気というものがあり、洛陽らくようはすでにおとろえておる

   。

   これからは長安ちょうあんだと申しておった。

   しょせん、わしにとって半年から一年で手に入れた場所だ、何の未練みれん

   も無いわ。

   いずれにせよ、洛陽らくようを焼けば彼奴きゃつらはやがて結束を維持できなくなる

   。

   ここや汜水関しすいかんは、どれほどの兵力があれば守れる?


呂布:どちらも三万もあれば十分でしょう。

   それだけあれば敵は攻めあぐね、戦線は膠着こうちゃくします。

   何かあった際にすぐに援軍を送れる態勢が整っていればよろしいかと。


董卓:ようし決まったわ。

   ならばそちは先に頼んだ通り、漢の歴代皇帝の墓へ向かうのじゃ。

   事を終えたらすぐにわしの元へ戻って参れ。

   兵は少しずつ引き上げさせる。


呂布:ははっ。


ナレ:董卓とうたくひそかに洛陽らくようへ引き上げ、長安ちょうあんへ移る事を朝廷で強制決議、ただ

   に移動を命じる。

   その一方、腹心の李儒りじゅは兵をり出し、街中の商人から財を徴収ちょうしゅう

   暴君の兵は財産ばかりか、富豪や豪商の娘や妻をも犯し、あるいは

   連れ去り、逆らう者は容赦ようしゃなく殺した。

   同時に百万を超える民達は、数万の兵の監視のもと、長安ちょうあんへ移動させ

   られることとなる。


董卓:さて…そろそろ出発するか。

   わしの財産は全て積んだか?


董卓軍部将:ははっ。ご覧のとおりでございます。


董卓:ふふふ…ようし、洛陽らくように火を放てィ!

   連合軍に何一つ残してやる事は無い!

   …いや、一つだけあったわ。

   焼け野原になった洛陽らくようじゃ、はっははははは!!

   さぁ者ども、やれィ!!


董卓軍部将:かしこまりました!

      火を放てェ!!

      全てを焼き尽くすのだ!!


董卓:幾日いくにち燃えているであろうな…もともと一年かそこらの間に奪った土地

   じゃ、何の未練もないわ!

   うわっははははは! 進めェ! わしの新天地、長安ちょうあんへ!

   

ナレ:洛陽らくようの宮殿、屋敷、街が炎に包まれるのを董卓とうたくは、車の中から眺めて

   笑った。

   そして長安ちょうあんへの道中、董卓とうたくの兵の暴虐ぼうぎゃくぶりは日常の光景となり、

   民達の怨みの声は地上に満ち、慟哭どうこくの嘆きは風に乗って空をおおいつく

   す。

   それより少し前、連合軍側の曹操そうそうにも董卓とうたくの動向が伝わった。


曹操:…まだ汜水関しすいかん虎牢関ころうかんも落とせておらん…。

   このまま戦況が動かんのはまずいな…。


連合軍兵士1:申し上げます。

       董卓とうたくは民達を全て長安ちょうあんに移す模様もようです。


曹操:長安ちょうあんへ? あの地は廃墟はいきょになっているはずだが…。

   洛陽らくようを砦として戦うつもりなのか?

   みかどだけを移すならともかく、民についてはに落ちんな…。

   !! そうか!

   馬を引け! 袁紹えんしょう殿の元へ参る!


連合軍兵士1:は、ははっ!


曹操:まずい…まずいぞ!


   【三拍】


   袁紹えんしょう殿!!


袁紹:おお、曹操そうそう殿、血相けっそうを変えてどうしたのだ?


曹操:ただちに全軍で犠牲をかえりみずに汜水関しすいかん虎牢関ころうかんへ総攻撃をかけて

   突破し、その勢いで洛陽らくようを攻めるべきだ!


袁紹:な、なんだやぶから棒に。


曹操:董卓とうたくは民をも長安ちょうあんへ移しているという報告があった。

   おそらく洛陽らくようを焼き払う気だ!


袁紹:馬鹿な事を。

   洛陽らくよう全体を巨大な城として戦うつもりなのだろう。


曹操:ならば移るのはみかどだけで良いはずだ。

   董卓とうたく長安ちょうあんへ新たに都を建設するつもりでいるに違いない。

   民はその労働力として必要ゆえ、帰る場所を奪う意味でも、

   洛陽らくようを必ず焼く。


袁紹:もし仮に洛陽らくようを焼かれれば、確かに負けだ。

   我らは洛陽らくようを取り戻しに来ているわけだからな…が、しかし、そんな

   事は起きまい。

   民を移しているのは、董卓とうたくにも人の心があるからだろう。


曹操:奴にそんな良心があるとでも思っているのか、袁紹えんしょう殿!?


袁紹:それに、汜水関しすいかん虎牢関ころうかんもまだ破っていないのだぞ。

   全軍を動かせなどと軽率けいそつな事は言うものではない。


曹操:ッ! 決断のしどころなのだ、本初ほんしょ!!


袁紹:! 血迷うな、孟徳もうとく

   洛陽らくよう後漢ごかん王朝二百年の都だぞ。

   いくら董卓とうたくでも焼くはずがあるまい!


曹操:火をつければ誰だろうと焼くことができるわ!

   ここで全軍を動かす決断ができんのなら、連合軍の盟主めいしゅなどやめてし

   まえ!!


袁紹:!!!…なんじとは昔からの馴染なじみだ。今の言葉は忘れてやろう。

   …一度だけな…!


曹操:…くッ!!!


ナレ:曹操そうそうの予見通り、洛陽らくようの空が黒煙におおわれ始めたのは午後だった。

   汜水関しすいかん虎牢関ころうかんを挟んでその煙が見えるという事は、よほど大きな火

   であるという証拠であり、前線で敵と対陣している公孫瓚こうそんさん孫堅そんけんを除

   いた諸侯が、本陣に集まった。    


連合軍兵士2:申し上げます! 董卓とうたく洛陽らくように火を放ちました!

       おそらく長安ちょうあんへ向かうものと思われます!


曹操:ただちに全軍で追撃すべきだ!

   おそらくかんの敵軍も撤退てったいし始めている。

   追いついて董卓とうたくを討ち果たすのだ!

   それが忠義を旗印はたじるしとして立ちあがった我らがなすべきことだろう!


袁紹:前線では公孫瓚こうそんさん殿と孫堅そんけん殿が敵とすでに交戦中だ。

   我らも続くぞ!


袁紹役以外全員:おうッ!!【SE代用可】


   【二拍】


関羽:どけ、雑魚ざこ共! はあッ!

   !? 兄者、あれを!!


張飛:どうりゃッ!!

   おいおい、虎牢関ころうかんの向こうの空が真っ黒だぜ!

   一体何が起きたんだ!?


劉備:…おそらく、董卓とうたく洛陽らくようを焼いたのだろう。


関羽:え!? なぜ、そのような事を…?


劉備:焦土戦術しょうどせんじゅつであろうな。

   洛陽らくようで何も得られぬようにしておけば、我らは以降の進軍が困難にな

   る。

   それに、洛陽らくようを取り戻すという我らの意義が失われる事も意味する。


張飛:ちくしょう、董卓とうたくの野郎、それも計算のうちってか!?

   汚ねぇぜ!


劉備:さっきから敵の動きを見ていると、どうも逃げごしだ。

   おそらく、退きながら戦っているのだろう。


関羽:確かに。

   あらかじめ撤退てったいを命じられていたわけですな。


張飛:けど今は! ふんッ!

   目の前の虎牢関ころうかんを抜くのが、先だよな! 兄貴!


劉備:ああ、行こう! 一番乗りは我ら兄弟だ!


関羽・張飛:おおッ!!


   【三拍】


劉備:我ら三兄弟が、虎牢関の一番乗りだ!!


劉備・孫堅役以外全員:【喚声・SE代用可】


孫堅:? 急に汜水関しすいかんの兵が退きだした…?

   ! あの空は! 董卓とうたくめ、まさか洛陽らくようを焼いたのか!

   今こそ好機、汜水関しすいかんを落とし、先の雪辱せつじょくを晴らせ!!


孫堅役以外全員:【喚声・SE代用可】


   【二拍】


孫堅:多くの死んだ者たち、見ているか・・・!

   孫文台そんぶんだい汜水関しすいかんを攻め取ったぞ!!


ナレ:連合軍は汜水関しすいかん虎牢関ころうかんを落として洛陽らくようを望むと、三百里もの間、

   天地をおおっているのは、おびただしい黒煙と火炎のみだった。

   袁紹達は、急ぎ消火活動や逃げ遅れた者を保護を行うと、そのまま

   洛陽らくようへ腰をすえてしまう。

   あまりの悠長さに、曹操そうそうは心中いら立ちをつのらせる。

   その果てが彼に、単独での追撃を決意させる事となるのであった。



END




汜水関のすぐ後に書き上げた作品でしたが、世に出すのが遅くなってしまいました。

楽しんでいただけたなら幸いです。

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