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9.クロイツェル・ピッケルト-同盟連合に一矢報えるな-

全48話予定です


日曜~木曜は1話(18:00)ずつ、金曜と土曜は2話(18:00と19:00)をアップ予定です(例外あり)

 帝国軍、参謀本部のクロイツェル・ピッケルトはその日歓喜に満ちていた。ついに人型兵器の実戦配備が出来たからだ。


 機数は六体、それが帝国が用意できる今の戦力なのだ。全世界の半分を国土に収める帝国をもってしても人型兵器の量産はそう容易な事ではない。


「明日にはアルカテイル市に展開させます」


 部下からそう知らされたときは本当に歓喜した。それはクロイツェルとって念願の事項だからだ。


「呼称は、敵同盟連合にならってレイドライバーとするとの事であります」


 クロイツェルにとって名前などどうでもよい。投入できたことに意義かあるのだから。


 その姿を間近で見る。敵軍のレイドライバーと比較しても遜色ない出来だと聞いている。


 大きさは敵側のレイドライバーとさほど変わらない、全長約八メートルの二足歩行する人型兵器である。


 気になるその操縦形態であるが、パイロットが単独で搭乗して操縦する、という形態をとっている。


 だが、それではパイロットも人の子だ、全方位が見渡せる訳ではない。その為、生体コンピューターという、人の脳を一部に使用しているものを搭載しており、それが全方位のアラートや司令部からの司令の受信、レイドライバーの姿勢制御、その他に人では賄いきれないところをすべて受け持っているとの事だ。


 しかもそのコンピューターはかなり小型化が実現しており、パイロットがいるコックピット内に内蔵出来るくらいの大きさである。この辺りの技術は帝国の方に一分の長がある。


 そのコンピューターとパイロットの脳をリンクさせる事で、パイロットがいちいち指示を出さなくてもコンピューターが判断して必要な情報を提示してくる。その為、パイロットの首の後ろにはプラグが埋め込まれていて、それを接続する事で操縦時はパイロットの脳が直接レイドライバーを動かす、そういう仕組みになっている。もちろん、同盟連合のレイドライバーと違ってパイロットと生体コンピューターは親族ではない。


 装甲は、敵側と比べてもしっかりとしたものになっている為、敵レイドライバーの背中のようなウイークポイントになるような場所も特にはない。その辺りは[後発]である彼らに分がある。


「パイロットの諸君」


 クロイツェルそう声をかけながら[彼女たち]を見る。


 パイロットは全員が女性、しかも年齢がまだ十代後半である。それはこの兵器を作るにあたって多種多様な経験をさせる必要があった為だ。その[教育]課程では実際に男性の候補生もいた。だが、規律や柔軟性、雑多な命令に対する反応、その他において[彼女たち]の方が成績が良かったのである。


 昔から戦争の最前線といえば男性、と決まっていたのだが、その常識を覆すこの結果に、最初は軍としても戸惑ったものだ。それでは[最前線の兵士をすべて女性に変えたほうがいい]という事を意味しているからだ。


 だが、実際に一般の軍の訓練所では、従来の一般兵器を使用した男女差は、同等か男性の方がわずかに優位であった。この相反する結果に軍部も戸惑いを隠せなかったが、出た結果については仕方ない。訓練所で上位から六名を選んだ結果、全員が十代の女性、という編成になったのだ。


「明日、きみたちは敵レイドライバーとの戦闘を迎える。これまで行って来た事を十分反芻し、柔軟に対処してもらいたい。ちなみに、きみたちはわが軍の機密事項だ、間違っても敵の手に渡る事は許されていない。もし捕縛されそうになった時は……」


「祖国の為、自爆します」


 全員の声がそろう。そこまできっちり[教育]されているのだ。


「よろしい。とにかく、実戦はこれが初だ。しかも相手は人型、きみたちが練習で戦ってきた戦車たちとは訳が違う。十分留意するように」


「了解であります」


 またしても声がそろう。


「隊長は?」


 歩きながらクロイツェルが尋ねると、


「私、クラウディア・リー中尉であります」


 そう言って一人の女性が一歩前に出る。


「隊の事は頼んだぞ。作戦指揮はきみに任せる。目標は敵レイドライバーの減滅もしくは撃破だ。心してかかりたまえ。ただし」


 クロイツェルが隊長の前で歩みを止め、


「もし捕縛出来るようならそれを最優先だ、いいな」


「はっ、了解いたしました」


 クロイツェルは[彼女たち]をその後ろにいるレイドライバーと比べてもう一度見る。こうしてみるとやはりレイドライバーがいかに大きいかがわかる。


 ――これで、やっと同盟連合に一矢報えるな。


 そんな事を考えていた。


全48話予定です


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