46.カズの機体を-意識が戻らない、と?-
全48話です
日曜~木曜は1話(18:00)ずつ、金曜と土曜は2話(18:00と19:00)をアップ予定です(例外あり)
前線の野営地まで戻って来たクリスたちは、カズの機体をバラせるところまでバラしたあとヤマニと医療班の主任、それにクリスの三人で緊急の分解整備をしていた。
もちろんレイリアたちは、
「あたしたちにも手伝わせて」
とクリスに頼むのだが、
「無理に決まってるでしょ! クリスは確かに今はレイドライバー部隊の指揮官だけど、副官が臨時で指揮官になる時は[現状維持]が義務付けなの、覚えてるでしょ? それに、今までだって私たちがレイドライバーの整備に携われた事なんてないでしょ? それくらい分かりなさいよ」
とトリシャに突っ込まれる。
だが、それはアイシャたちにも言えるようで、
「マスターの生死は俺たちの生死と変わらないんだ」
「何とかお手伝いできませんか?」
アイシャとミーシャ、それぞれがそう申し出るのだが、
「申し出は大変ありがたいのですが……申し訳ありません、そういう規則ですので」
そう言うとクリスは後ろを向いて幕の向こうに入っていく。そして周りには警備兵がぐるっと取り囲む。
中ではパラせるところまで一通りバラし終わったカズの機体がある。
「状況は?」
とクリスが尋ねると、
「今コックピットの装甲を外してるところや、ちょい待ち」
見ればヤマニが工具とバーナーを使って胸部の装甲板を外しているところだ。
しばらくは出番がないが、それでもヤマニは嫌というほどこの機体を整備して来たのだ。普通の整備士では手惑うところを手際よく外していく。
すると、
「見えたで」
「大尉!」
ほぼ条件反射でカズを抱きかかえようとするクリスを医療班の主任がすかさず止める。
「まずは手当からです」
主任はそう言うと、基本的な診察を始めた。脈、呼吸、脳波、それからハンドスキャナーによる体の中の損傷個所の確認。
それがひととおり終わると、
「取り敢えずは大丈夫のようです。が」
「意識が戻らない、と?」
クリスが恐れていた事を口にすると、
「ええ、かと言って無理に起こすのは逆に危険です。脳波は一見すると正常に見えますが、一部乱れているところがあります。ここまでして、ここまで来て起きない、意識が戻らないという事は[起きられない]という事です。ですが、ここではこれ以上の事は出来ません。ので、大尉はそのままエルミダス基地まで搬送します。手を貸してください」
そこでようやくクリスはカズに触れる事が出来た。レイドライバーとリンク状態になっていのを解除し、頭部と腹部のケーブルを抜く。
――そう言えばご主人様はどうやってレイドライバーとリンクを取っているのだろうか。私たちは頭部と腹部の子宮を使うのだけど。見たところケーブルは確かに頭部と腹部に刺さっているけど、この腹部のケーブルは一体? そういえば[ミーティング]の時、ご主人様のを見せて頂いたことはない。それは私の事を性的に見ないという意思のようなものなのだと思っていたけど、このケーブルと何か関係があるのか……。
そんな事を考えながら、いちど幕から出てカズを基地まで輸送するよう指示を出してまた幕の中に入る。
全48話です