4.帰還したメンバー-痛み止めを貰ってから-
全48話予定です
日曜~木曜は1話(18:00)ずつ、金曜と土曜は2話(18:00と19:00)をアップ予定です(例外あり)
「ただいまー」
「戻ったわ」
それぞれレイリアとトリシャが出迎えたカズに声をかけたあと、しばらくして、
「戻りました」
クリスが頭とお腹のあたりを押さえながら近寄ってくる。
パイロットは、操縦桿の他に脳と子宮をレイドライバーとリンクして操縦している。それはもちろん効率よく動かせる為なのだが、
「クリス、あとで俺のところに来てね。急がないからとりあえずパイロットスーツから着替えておいで」
[普通の]操縦を行ったくらいでは当然、それぞれ痛みなどは出ないはずなのだが、コアのリミッター解除をした時や、パイロットがコアを介さず直接操縦した時などには痛みが出る事がある。
パイロットは体のラインがくっきり出るくらい薄く丈夫なパイロットスーツを着て操縦している。だが、このスーツもそうだがレイドライバーにも至る所に[機密保持の為]の爆薬が積まれている。
「分かりました。痛み止めを貰ってからでもよろしいでしょうか?」
カズにクリスが聞く。
「ああ、いいよ。急がなくてもいいから」
「最近、よく痛み出てるみたいだけど、大丈夫?」
レイリアが聞いてくるが、
「大丈夫ですよ、ちょっといろんなテストをしていまして」
曖昧な返事が返ってくる。
だが以前に皆の前で「これからレイドライバーの整備にも立ち会う」と言ったのだ。レイリアにしても、その[テスト]の内容までは聞かないでいた。
「着替えて、コーヒーを飲むくらいの時間は貰えるかしら?」
トリシャが彼女なりに気を遣う。
元々トリシャは人とつるむ事を嫌う。それは彼女の生い立ちが少なからず関係してもいるのだが、元いた施設が施設だ、むしろレイリアの方が変に見えるかも知れない。だが[まったく人が嫌い]という訳でもない。
今までは皆から食事に誘われても[また今度ね]と過ごしていたのだが、核弾頭の一件からこちら、自分から[気が向いたときに]であるがお茶に誘うようにもなったのだ。
――おっ、丁度いいや。
「ああ、いいよ。んじゃ俺も混ぜて。ちょっとみんなに話したい事もあるんだ」
話に乗ってきたカズに、
「貴方から話したい事って言われると、ちょっとドキドキするわ。まさか首突っ込んじゃいけない話じゃあないでしょうね?」
そう疑うトリシャに、
「それは解散したあとにクリスと、ね」
と返す。
「いいわ、んじゃあ着替えてくるからあんたは食堂で待っててよ」
すると、
「いや、パイロットの待機所じゃあダメかい?」
逆にそう聞かれて、
「えっ、着替えながら飲むの? やっぱり……」
「そんなんじゃあないけど、一般兵がいるのはちょっと、ね。それにここは野営地だ、プライベートルームもないから」
エルミダス基地にいた頃は、聞かれてマズい話は完全防音のプライベートルームでミーティングしていたのだが、ここではそうは行かない。それが唯一出来そうなのがパイロットの待機所、いわゆる更衣室である。ここはパイロット以外は立ち入りが制限されているのだ。
「分かったわ。で、も、ね」
トリシャがじーっとカズを見る。
「覗いたりしないから大丈夫だよ、それとも覗いてほしい?」
「ンな訳ないでしょ!! あんたバカなの!?」
更衣室は基地のもそうだが、中はパーテーション等で区切られておらず、上からいわゆる病院などで使われているカーテンが吊るしてあるだけである。しかも丈が膝のあたりまでで、その下は区切るものが何もない。なので、隣で誰かが着替えているとうっすらシルエットが見える、しかも足は隠すものがない。
だが、それも理由は存在する。
パイロット同士、お互いを監視させる為だ。そう、こんなところにも機密保持の考え方が徹底されているのだ。
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