38.サンドの目の前でそれは起きた-自爆モードに移行します-
全48話予定です
日曜~木曜は1話(18:00)ずつ、金曜と土曜は2話(18:00と19:00)をアップ予定です(例外あり)
「よし!」
思わず声が出る。
「次は?」
「軌道算出。最適解が出ました」
見れば自軍の戦闘機を追い回している機体が見えた。その敵を視界に捉えると、やはりすうっと回避運動を始める。
「逃がすかよ、バルカン砲」
やはり数発ずつ打ち込んでいるがなかなか当たらない。
そうしていると、
「攻撃中止、回避運動に入ります」
サンドが[えっ?ロックオン?]と考えるより前に急旋回がかかる。と、同時に今いた所に敵の弾丸が飛んで来た。
――そうだ、ジョンは?
そう考えていると、
「隊長! 助けてくれ!」
無線からそんな声が聞こえる。
「デルタフォーの位置を」
「了解」
そう指示すると敵戦闘機に背後を取られているようだ。
「救出する。軌道計算」
直ぐに軌道が出る。その軌道通りに最短距離を取りながらジョナサンの機体に張り付いている敵を捕らえた。
だが、サンドの目の前でそれは起きた。
サンドが背後に付くほんの少し前、敵戦闘機はジョナサンの機体にミサイルとバルカン砲を打ちながら回避運動に入った。サンドが何とかその相手を倒しはしたが、その二手は積まれているコンピューターでも回避の算出が出来ない軌道だったのだ。ジョナサンの機体はミサイルはかわせたがバルカン砲を喰らってしまったのだ。
「ジョン!」
思わず本名が出る。
「ああ、やられちまった。どのくらいのダメージだ?」
「基地への帰投は不可能です」
コンピューターの声が無線を通して聞こえる。
「ジョン、不時着か脱出しろ!」
「悪い、そうさせてもらう」
ジョナサンがそう言うと一瞬の間のあと、
「えっ!? 脱出出来ない?」
「自爆モードに移行します。十、九、八……」
「ちょっと待てよ、脱出出来ないってどういう事だ、コンピューター!」
サンドが怒鳴ると、
「当該機は戦闘継続が困難と判定。帰投の可能性もありません。よって機密保持の為爆破します」
合成音がひと際冷たく感じる。
――そんなの聞いてないぞ!!
「何とかならないのか?」
「カウントダウンが始まれば回避不可能です」
「助けてく……」
最後まで言えずにジョナサンの機体はちょうどコックピット当たりのところで爆発した。
「ジョン!!」
本当はそのまま感傷に浸っていたいのだが、今は戦闘中だ。
「状況!」
半ば当たり気味にコンピューターに指示を出す。
「敵戦闘機は残り二機。こちらの戦闘機は自機を含めて、現空域には三機です。燃料残が余りありません。あと一度が限度と判断します」
抑揚のない合成音が響く。
「一番可能性のあるやつから仕留める。予測を!」
「出します」
その軌道には別の線も出ていた。どうやら地上部隊の砲撃の予測線のようだ。
――今更かよ!
「空域が移動した為、ワンワンの射程に入りました。支援を要請します」
――――――――
「距離三千五百、風力北西二、敵戦闘機まで上に三クリック、左に一クリック……」
アイシャが声をかける。
「ああ、やってくれ」
「狙撃します」
その宣言と同時に弾丸が放たれる。もちろん敵戦闘機は回避運動をするが、こちらの放った弾は炸裂弾だ。回避運動中にそのまま地上に激突した。
「命中。次はどうする?」
「あと一機はあのコンピューターを積んだ機体がやるだろう。ワンワンは機械化部隊が移動した後に移動し、市街地ギリギリのとろこで待機。あ、そうだ。もちろんホログラムは入れといてね」
とカズが指示を出すと、
「了解です、マスター」
ラグのない返事が返って来る。
「あたしはどうすればいい?」
アイシャたちと一緒にいたレイリアが無線に入って来る。
「ワンワンと一緒に作戦行動だ。きみもホログラムを入れといて」
「何か他に出来ない?」
「今は負傷中だ、無理はさせられないよ」
見ればレイリアの機体もスナイパーライフルを持っている。トリシャがいつも使っているものだ。
「状況が変われば頼むかもしれないから、その時まで温存しておいて」
カズは優しく語り掛ける。
「り、了解です」
レイリアは大人しく従う。
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