3.世界情勢は-絶妙なバランスの上に成り立っていた-
全48話予定です
日曜~木曜は1話(18:00)ずつ、金曜と土曜は2話(18:00と19:00)をアップ予定です(例外あり)
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西暦ニ〇四五年、世界情勢は大きく三つの勢力に集約されていた。国土では陸上の約半分を占有する帝国、と呼ばれる勢力と、同じく三十五パーセントを占める同盟連合、残りの十五パーセントが共和国である。
ちなみにレイリアたちは同盟連合に属している。
軍事バランスは、これまた絶妙な関係を築いている。小競り合いを続ける帝国と同盟連合、漁夫の利を狙っているのか、はたまた何か別の考えがあるのか、沈黙を保って一切仕掛けてこない共和国。
世界はその三つの勢力の絶妙なバランスの上に成り立っていた。
そこに同盟連合が開発した新しい人型兵器、それがレイドライバーである。その性能は他の最新鋭の戦車や兵器に比べて、機動性、可搬性ともに圧倒的である。なんと言っても二足歩行をしている点でその優位は歴然としている。
レイドライバーは同盟連合の最高機密であり、その創設時からいるカズはその中でも特別秘密にされている。カズの名前を知っているのはごくわずかだ。レイドライバーはエルミダス基地の司令直轄であり、たとえ階級が上の者でもカズには命令出来ないし、その命令は聞かなくてもいい事になっている。
さらに特異なのは、整備一つとっても機密扱い、閉鎖空間で周りを警備で囲んでの作業という点だろう。そしてその[コアユニット]にアクセス出来るのは、エルミダス基地司令、副司令、整備主任のヤマニ、医療班の主任とカズの、計五人のみである。これには後にクリスも加わる事になる。
まだ四体しか実戦投入できていないが、その存在は拮抗していた軍事バランスを崩すことに成功した。それはここ数週間での敵側の損耗を見れば明らかであろう。帝国軍はすでに三個大隊以上の兵力を失っているのだ。
帝国軍はその打開策として、衛星軌道上から小型の核弾頭をレイドライバーのいるエルミダス基地上空に投下するという策に出た。だが、それはクリスによって事前に回避されたが、敵の対空砲で機体にダメージを負い、さらにコアの停止という事態に陥った彼女は、カズの命令でコアを介さず直接レイドライバーを操縦する事になった。そしてミラール市という隣街の敵基地に不時着する事になった。
[なぜ投棄して帰還しなかったのか?]と敵基地司令に問われたクリスは[そうしたら基地以外にも、街にも被害が出かねない]と返す。そんなクリスに司令は[帝国軍の機械化部隊が進行中である事、レイドライバーの捕縛が目的である事]を教えてくれた。
それを知ったカズたちは援軍を送り、クリスを救出する事に成功する。
この一部始終の中でクリスはレイドライバーの秘密の一端に触れる。帰ってきたクリスにカズは[こちら側の人間]になるか、と問う。クリスの答えは明快だった。
「私では貴方の想っている方や、レイリアさんの代わりにはならないかも知れないけれど、こんな私でも片隅でも置いて頂ければ」
そう言ってクリスは、身も心もすべてをカズに捧げる事にした。そう、カズの事を[ご主人様]と言ったのだ。
その後、カズは大尉に、クリスは二階級特進の中尉兼カズの副官に、レイリアとトリシャはそれぞれ少尉に昇格して現在に至る。
現在、同盟連合は戦線を押し上げ、敵の、同盟連合軍の機械化部隊を巻き込んでの自爆ともいえる核爆発とともに核汚染の街と化したミラール市からさらに北東のアルカテイル市に戦場を移している。
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