17 お披露目準備? ・ 武闘
本来対象外の半魔の舞踏も教わる等してクリアナによる舞踏講習を引き延ばしてきたが、それもいよいよ限界。
舞踏会まで残り一か月余り。いい加減、きちんと教えさせていただかないと舞踏会にも出せないとのクレームもあり、俺はついに正規の舞踏の先生とやらに教えを受けることとなった。
「どうでしょう?」
一通り踊り終え、先生とやらに振り返れば彼は顎が落ちそうなほどに間抜けに口を開き切っていた。
「先生?」
やりすぎたんだろうなと察しながらも、時間がもったいないので俺は先生の正気を呼び起こそうと声をかける。
「し、失礼しました。細かい間違いはありますが、このまま舞踏会で踊っても問題ないレベルかと」
取り繕うように先生はコホンと一つ咳をしてから、太鼓判を押してきた。細かい間違いというのは、エルミアの狙い通りクリアナが間違えて覚えていた部分だろう。
「そうですか。それでは他にも学びたいことがありますので、舞踏の練習は終わりで構いませんね?」
これ幸いと俺はにっこり笑って、興味のない講習を終わらせにかかる。
「いえ。とはいえ間違いはありますので、それを直していきましょう」
内心で舌打ちしながらも、外行きの笑顔を張り付け続ける。
「失礼ながら、クリス様は舞踏の経験はお付きのメイドに一ヵ月習っただけというのは本当ですか?」
先生が立派な顎鬚を撫でつけながら聞いてくる。
「はい。でも正式に習うのは初めてでしたが、兄や姉の舞踏会の後にエルミア様に一緒に踊ってもらっていました」
予め用意していた嘘を訝しむ先生に披露する。困ったときはエルミアに習っていたことにすれば大抵どうにかなる。
「なるほど、エルミア様に。いやしかし……それにしても五歳であの動きというのは」
しかし、今回の先生の疑惑は拭いきれなかったようだ。面倒なことになったと俺は内心嘆息するが、
「このリーフネクト。舞踏講師人生で最高の才能と出会ったようです。クリス様のお披露目会では過去最高のお披露目舞踏を皆様の御覧にいれましょう!」
「え? あ、いや、普通に発表できればいいので」
「そうはいきません! これほどの素材を前にして磨かぬのは罪というもの! クリス様、私の持てるすべてをお注ぎいたしますぞ!」
……完璧に間違えた。後悔するも俺は無駄にやる気を出した先生のおもちゃになるしかなかった。
※※※
「舞踏の練習は順調?」
純粋な問いかけか、からかいか。いつも通り感情の読めない微笑でエルミアが聞いてくる。
「お前、知ってて逃げただろ」
対する俺は猜疑心まみれ。
「さあ? なんのことかな」
本当にいい面の皮してやがる。
「まあそれはさておき、いい加減に武闘会の話もしようか」
「舞踏会の話なんて嫌って程してるだろ?」
「そっちの舞踏会じゃなくて、この国伝統、君が求めてやまない戦う方の武闘会だね」
僅かな思考停止の後、
「おいっ!?」
エルミアの言葉を理解した俺は叫んだ。
「アッハッハ」
「初耳なんだが!?」
珍しく心から楽しそうなエルミアに不満を訴えずにはいられない。
「それはもう君の目と耳に入れないように苦心したからね」
「なんでだよ……」
どこまでも楽しそうなエルミアに俺は諦めの脱力。
「だって君、知ってたら踊る方の舞踏会なんてそっちのけだったでしょ」
「うっ」
「そういうこと」
「さ、最低限はやったぞ?」
「はいはい」
エルミアにあっさり受け流されるが反論できない。
「それに、武闘会の準備なんてしたら、クリスは目立ちすぎる」
「え?」
「まあ、手遅れというかどっちみちクリスじゃ意味ないだろうけど」
呆れたような、諦めたような、それでいて楽し気にエルミアは笑う。
「それでも最低限の決め事は守って」
言って、エルミアが人差し指を立てる。
「まず当然わかってると思うけど、偉大な源泉は使用禁止」
まあ、まだ制御できてないし、そもそも人族より半魔の魔素に似ているらしいしこれは当然だろう。
「二に使用する魔力は十分の一まで」
「……マジで?」
ただでさえ人族かつ子どもで少ない魔力をさらに十分の一? なんの冗談だ?
「うん、マジで。ちなみにこの制限は、誰かの命の危険でもない限りは普段もね」
「……わかりました」
反論の自由がない俺は不承不承ながらも従うほかない。
「よし。それじゃあ、あと相手を傷つけることも禁止」
「何言ってんだ?」
意味不明すぎて即座にぼやいてしまう。敵を傷つけない戦いなんてあるわけない。
「君は人族相手の加減がわかってない。再起不能にでもされたら対戦相手も可愛そうでしょ」
エルミアの言い様に言いたいことは幾らでもあるが、
「俺が勝つ前提ってのはやらせか?」
仮にも王族のお披露目会。真剣勝負は望めないのだろうか。
「普通の国ならそうかもしれないけど、ここは人族の最前線、戦士の国ヴァーンハイムだから」
苦笑しながらエルミアは続ける。
「王族のお披露目会だから必ず勝たせるとかそういうのはない。ただ王国で一番強い戦士の血筋の王族とは言え五歳児。対戦相手は王国軍の一般兵レベルだから」
「弱いのか」
落胆にぼやく。
「弱くはないよ。帝国軍や神聖軍と並んで、同年代の人族の軍中では最高レベル。ただまあ、赤子に毛が生えた頃からアーサーや僕を相手にしてる君からしたら物足りないだろうね」
「そうか」
溜め息を吐いて、俺は武闘会への興味を失った。
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