第四話 迷える子羊(幽霊鈴木由美)
学は、初めて超がつく高級車に乗せてもらっている。
乗るの時、靴を脱ごうとしたら桜子に鼻で笑われた。
この車は数千万円するという車である。自分のような凡人には一生縁がない車である。
だが、今は仕事中である。上司からも、お前は櫻子お嬢様の手となり足となり働けと言われているからもう頑張るしかない。
「桜子お嬢様。あの、どこに向かっているんですか?」
「鈴木由美さんの彼氏の所よ」
「え? そうなんですか?」
「えぇ。なんでも、数又は当たり前の最低男らしいわ。浮気を知って別れようと思っていたらしいの」
「え! 浮気? かなり動機があるじゃないですか!」
「浮気はいけないわ。女性を裏切るなんて。しかも、由美さんにはかなりお金を借りていたらしいの」
「えぇー。そうなんですか?」
「だから、懲らしめてやりましょう」
「え? 犯人探しじゃないんですか?」
「まぁ、そのうち犯人には、行き当たるでしょう。けど、その前に成敗よ」
学は大丈夫だろうかと心配しているが、桜子に着いていく他ない。
ついたのは、古いアパートの前であった。
「さぁ、行って現状を見てきて頂戴」
「え?! 自分が見てくるんですか?」
「見て、どんな様子か教えてくれるだけでいいわ。鈴木由美も憑いていくから、安心して」
「えぇ!? いや、むしろ安心できません!鈴木由美さんも、ここで待っていてください。もし……もし浮気相手がいたら悲しくなるでしょう?」
その言葉に、桜子は驚く。
「とにかく、ここに居てください」
学は鈴木由美のアパートへと足を向けると、部屋のチャイムを鳴らした。
「すみません。いらっしゃいますか?」
「はい。なんすか?」
部屋から出てきたのは若い茶髪の男で、学を訝しげに見ている。
学は警察手帳を見せると、男に尋ねた。
「鈴木由美さんの件でお伺いしたい事があるのですが」
「は? あー……あの女。なに?」
「としくぅーん? だぁれ?」
「何でもないから、入ってろ」
部屋の中から若い女が顔を出したが、男に言われて部屋の中へと戻って行った。
「あの女は……まぁ……軽く遊んでただけだから、関係ねぇよ?」
「交際関係だったのでは?」
「ちげーよ。あの、俺忙しいから。じゃ」
そう言うと男は扉を締めてしまい、学はため息をつくと桜子の元へと帰った。
「すみません……えっと……浮気相手の方が家にいました。」
素直にそう言うと、桜子は頷く。
「あの……鈴木由美さんは大丈夫ですか?」
その言葉に桜子は笑う。
「ええ。無事に男に憑変えができたみたい」
「え?」
「今は男に憑いているはずよ。さぁ、明日迎えに来ましょう。家に帰ってお茶を飲むわよ」
「え? え?」
「わたくしが力を貸してあげましたから、大丈夫。さぁ、行きますわよ」
学は、その時、桜子の言っている意味が分からなかったが、次の日、その答えを知ることになるのであった。
目には見えないからこそ、恐ろしい。




