第一話 お嬢様
少しでも楽しんでもらえたら幸いです。
財力を持つものの中には、吐出した能力を持つ者がいる。そうして持っている者は、多くの苦悩を抱く頃もあるが、それによって成功する道を築く可能性を持つ。
西園寺家は、名だたる名家の中でも頂点を極める家柄であり、その血族は大臣、警察、弁護士、医者、学者、様々な所に身を置いている。
その大本となる総本家は西園寺グループを率いており、年商数百億を稼ぐ大手であった。恐らく、生活する中で西園寺グループの品を、一家に一つは必ず持っているはずだ。
そんな西園寺家の、お姫様とも言われるお嬢様の名を西園寺桜子と言う。
白いワンピースに薄紅色のカーディガンを羽織り、美しい髪を可愛らしく編み込み片側に流している。
桜子はその日も優雅にお茶を飲み、ほぅと息を吐いていた。
ただし、そこはサロンなどではない。
「あ……あの……お嬢様。その……帰って頂けませんか?」
そう言ったのは、今年刑事になったばかりの新米真部 学であった。学は、右も左も分からない中、突然お嬢様受付係というものにされてしまい、目の前のお嬢様の前で小さくなりながらそう言った。
突如として現れたお嬢様に、警察署は大慌てである。何せ、このお嬢様を蔑ろにしたものなら、有名大臣や警察庁の官僚、その他大勢の者達からの圧力がかかると言われている。
触らぬ神に祟りなし、触らぬ桜子に祟りなし、とまで言われる程の存在である。
はっきり言えば、学は西園寺桜子などというお嬢様を知りもしなかった。だが、刑事になった初日に西園寺桜子に触るべからず、近寄るべからずという事を真剣な顔で先輩刑事から学んだ。
だが、西園寺桜子はやってきた。
そして、皆が新米に西園寺桜子という爆弾を押し付けたのである。
「あら? 貴方、警察官をやめたいのかしら?」
桜子のその言葉に、学は一瞬で青ざめると首をぶんぶんと何度も横に振った。
「いえ! いえ! そんなわけありません。自分は、刑事になったばかりです!」
「なら、ちゃんとわたくしの話しをお聞きなさいな。」
「えっと……はい。お話はお聞きしたいと思うのですが……その」
「ハキハキ喋りなさい。ぐずは嫌いですよ」
「はい! 了解であります!」
「分かればよろしくてよ」
そう言って、横に控える執事の入れるお茶を一口のみ、桜子はほぅっとまた息をつく。
その仕草はとても美しく、学も思わず見惚れてしまう。
桜子は、とても美しい。
大きなアーモンド型の少し釣り目な瞳も、白い肌に薄っすらと朱のかかる頬も、赤い唇も、手入れの行き届いている黒く長い髪も、頭からつま先まで全てが洗練されていて、大和撫子と言う言葉がよく似合う。
だが、このお嬢様はおかしいのだ。
何故ならば、このお嬢様。
「わたくしの所に迷える子羊(幽霊)がやってきましたの。解決してくださいませ」
そう言うのだから、学は頭を抱えるしかない。
ありがとうございました。




