農業協同ギルド2
【VS】
タイトルにあります通り、この度この『がんばれ農協聖女』が書籍化する事となりました!
出版社や時期についてはおいおいご報告致します!
この結果も、ひとえにアリシアに、ロランに、この作品に向かって
「がんばれ! がんばれ!」と言い続けてきてくれた読者の皆様のお陰であります!
今後もこの作品をよろしくお願い致します!
「ギルド……!?」
流石にこの発言は突飛だったらしく、レオが訳がわからないという表情で私を見た。
「ギルドって……そりゃまた一体どういうことだ?」
「どういうことも何もないわ。ギルド、組合、そのままの意味よ。それにこれを思いつかせてくれたのは、レオさん、あなたですわ」
私が言うと、「お、俺……?!」とレオが目をひん剥いた。
「そう、あなたがいた冒険者ギルドの話です。アリもみんなで協力して大きな獲物を巣まで運ぶ……そうでしょう?」
私が訊ねると、レオが珍妙な顔を浮かべた。
そう、一人ひとりの力は小さくても、力を合わせれば大きな事ができる。
それは人間という弱小な種族が生き残るための、古来からの知恵であるはずだった。
例えば、と私は説明を始めた。
「結、という概念を知ってますか?」
「ユイ?」
ロランとレオが同時に頭の上に「?」を出した。
「例えば、麦の刈り入れの時期には、近所の農家を頼って作業を手伝ってもらう。その家の刈り入れが終わったら、今度は手伝ってもらった家の刈り入れを手伝う……労働力は労働力で返す、それが結です。そういう相互扶助の制度が昔から農村にはあるんです」
そう、つまりそれは緩やかな連帯。組合的な精神はどこの農村にも既にあるものだ。
「けれど、根本的に壊滅してしまったこの四つの村はそのシステムも壊れてしまった。なら、それをいっそのこと制度化してしまえば……」
「またこの村にも相互扶助の制度が生まれる、なるほどな」
ロランが唸るように後を引き取った。
流石、ロランはこう見えて頭の回転が速い。
私の突飛な発想も瞬時に理解できるらしい。
「それだけじゃありませんわ。ギルド構成員から講の形で少しずつ資金を供出してもらい、それを積み立てておいて、貧農を助けるための基金や災害復興資金として使います。肥料や農機具も組合で統一すれば作物栽培のノウハウも共有でき、施肥の方法や作業日程も規格化できます。組合で特に手慣れた人を任命して営農指導をしてもらえば、この村に入ってくる新規就農者も心強いですわ」
私が説明すると、ロランとレオが私を呆然と見つめた。
おや、流石にこの構想は壮大すぎたかな……と思っていると、ロランが首を振った。
「アリシア、君って人は……」
呆れたような、驚いたような声でロランは私を見た。
「まさかこんな壮大な思いつきを自分だけで考えていたなんていくらなんでもズルいじゃないか。結局、枠組みは君がたったひとりで作ってしまっているし……全く、僕は早くも実行に移したいような気になってきてるんだがな」
「もう、何度も言いますがロラン様は気が早すぎます!」
私はまだ不満そうなロランを諌めるように言った。
「第一、これはハノーヴァー領にとっても微妙な問題ですよ。どこまで私たちが肩入れしていようと、私たちは貴族なんですから。農民が徒党を組むということはどこの領地でも御法度、そうでしょう?」
「確かに農民と冒険者じゃ立場が違うよなぁ。冒険者はいくら集まっても有象無象だけど、農民はとかく団結するからな」
レオがぼやくように言った。
そう、それこそが私がこの事をおいそれとは口に出さなかった理由でもある。
とかく貴族というのは領内の農民が徒党を組んだり大勢で集まることを嫌うものだ。
それがなにかの間違いで一揆や蜂起、強訴の類に発展することは当然惹起されることであるし、実際にありうることだ。
しかもこの思いつきは貴族側の人間である私がそれを作らせる、いわば官製の徒党である。そのギルドが発端となって強訴や一揆に発展してしまった場合、そのギルドに貴族側がお墨付きを与えてしまうようなものだ。
そう言うと、ロランも流石に手放しでは賛成できないようだった。
うーん、と腕を組んで考え込んでしまう。
「しかしアリシア、この思いつきは素晴らしい。これが実現すれば農民たちの生活は根本的に変わるだろう。それに、逆に言えばこれを領主である僕らが主導するということになれば、農民たちの管理もある意味ではしやすくなる。僕らに利点がないわけじゃないな」
「確かにそれはそうですわね。一長一短、というところでしょうか。ただ、現在ではそこまで固まっているわけではありません。いずれにせよこれはもっと議論が必要ですわ」
「ふむ、とりあえず今のところは僕たちだけじゃ議論は堂々巡りだな……」
それだけ言って、ロランはまた考え込んだ。
黙考は長く続き――そして、終わった後でロランは言った。
「よし、決めた。こういうことはスコットにも相談してみよう」
うえ……! と私はその言葉に呻いた。
「す、スコットさんって……あのマルカノー商会の?」
「マルカノー商会!? そんなデケェところと繋がってるのか!?」
私の言葉に大いに驚いたのはレオだ。流石に大陸中を冒険者として走り回っていた彼はこういうことに詳しいようだ。
「ああ、こういうことはやはり後ろ盾があれば安心だしね。それにこれには少なくない規模の金も絡む話だ。金のことなら一言相談しておいたほうがいい」
確かにそうだけれど――私は少しだけ尻込みした。
その表情に気がついたロランが不思議そうな顔を浮かべる。
「ん? どうした、アリシア?」
「あ、いえ、スコットさんですか……まぁ、そうなりますわよね……」
「アリシアはスコットが苦手かい?」
あっけらかんと言われて、逆に何故得意だと思うのかと聞きたかった。
何しろ、私は既に『有望な商品』としてスコットとその親元であるマルカノー商会に紹介されてしまっているし、そういう売り込みをしたのはロランの方じゃないか。
「いえ、苦手というわけではないですけど……」
「大丈夫だよ、アリシア。彼はやり手だけど決してこっちを裏切ったりはしない、信用できる男だ。まぁ少し意地悪なのはその通りだけど」
その『少し意地悪』だから苦手なのだけれど……。
私はそう言いたかったけれど、確かにマルカノー商会からの共同購入は農業ギルドの第一歩としては避けて通れないところだろう。
私は諦めてロランに頷くことにした。
「面白そう」
「続きが気になる」
「頑張れ農協聖女」
そう思っていただけましたら下から★★★★★で評価願います。
何卒よろしくお願い致します。
【VS】
活動報告の方でもお知らせいたしましたが、当作品の書籍化に当たり、
噂の「書籍化作業」というのが始まって来ております。
つきましては今後、少し更新の速度が遅くなることが予想されます。
とりあえず金曜日には一話だけでも更新しようと考えておりますので、
何卒ご了承ください。





