奇病発生
【VS】
タイトルにあります通り、この度この『がんばれ農協聖女』が書籍化する事となりました!
出版社や時期についてはおいおいご報告致します!
この結果も、ひとえにアリシアに、ロランに、この作品に向かって
「がんばれ! がんばれ!」と言い続けてきてくれた読者の皆様のお陰であります!
今後もこの作品をよろしくお願い致します!
暗く、湿った空気が吹き付ける路地を足早に歩く男がいた。
折からの吹いていた大風が雲を引き連れ、季節外れの冷たい雨を降らせた夜のことである。
彼は目当ての建物に滑り込むと、途端に火がついたように泣き叫ぶ子供の声が聞こえた。
またか。彼は眉間に皺を寄せ、これから始まるであろう苦難の時間に思いを馳せ、ぎゅっと目を瞑った。
「先生――!」
「ああ、わかっとる。“黒斑病”じゃな?」
年老いた外見に見合った嗄声で言うと、彼の助手である孫娘のロレッタは大きく頷き、彼が纏っていた外套を手早く脱がせた。
彼が診察室に入ると、不安そうに顔を曇らせた妙齢の婦人と目が合った。
目だけで頷き、彼は診察台の上に寝かされている少年に視線を落とした。
年齢は十歳前後と見える少年は、目を真っ赤に腫らしながら泣きわめいていた。
苦しい、苦しい、という悲痛な叫びが嗚咽に混じって聞こえてくる。
早速、彼は少年の診察に入った。
脈は弱々しく、窓を鳴らす風に今にも吹き消されてしまいそうに感じられた。
予め聞いていた症状は、腹痛、吐き気、頭痛、下痢、そして痙攣――。
その症状は王国の各地で過去数度流行したコレラ症に似ているが、そうであるかないかは更に確認の必要があった。
彼は意を決するように少年のシャツの袖を捲くった。
やはり、と彼は嘆息した。少年の肘の内側には、大人の掌大の黒い痣が浮き出ている。
「先生――」
少年の母親は椅子から腰を浮かせて彼の顔を見た。
彼はゆっくりと少年のシャツを手首まで戻すと、うなだれた。
「すまん。これは黒斑病だ。残念じゃが――手の施しようがない」
一瞬、少年の母親が、はっと虚を衝かれたような表情を浮かべたように、彼には見えた。
今まで降りかかるはずがないと信じていた運命が降りかかり、彼を取り込もうとしていることに、今更ながら気づいたような表情だった。
黒斑病に罹ったら命の定め。いかなる霊薬も秘薬も功を奏さず――。
巷に聞こえている狂歌の一節は、無論彼女にも聞こえていたに違いない。
「そんな――!」
母親が顔を両手で覆って悲鳴を上げた。
その悲鳴すらかき消さんとするように吹き荒れる雨風が、ガタガタと窓を揺らす夜のことである。
「面白そう」
「続きが気になる」
「頑張れ農協聖女」
そう思っていただけましたら下から★★★★★で評価願います。
何卒よろしくお願い致します。





