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山賊の王  作者: 佐の輔
序章
9/35

償い 【キナ視点】


2020/11/07

本編を更新せずにまた色々とステータス関連を弄ってます。

一番大事なHPとMPを抜かすとは何事か!?

また本文も微妙に変更してます。 オニイサン ユルシテ!




 私はキナ。懐古派"失われた森"に属するエルフ、ナットーの孫。そしてその息子アマナトの娘。

まあ、私はエルフって言ってもお母さんが獣人だったから【半獣人】ってやつだけどね。だから物心つく前から懐古派エルフの聖地【マッメ】から離れた里で暮らしてたけど、いつかは生まれ故郷に戻ってみたいという気持ちもある。


 今や見渡す限り荒野、私達の土地である【ステークオ】もかつては草原と豊かな森に囲まれていたってエルフの歴史書には書いてあるらしいけど、正直信じられないかなぁ。祖父のナットーは森を復活させる為に仲間と一緒に各地を旅していたから、その話を子供の頃からよく聞かされたわ。私も他の土地を一度くらいは見てみたいけど…。


 だけど、お母さんは弟のエダマノを産んで暫くしてから病気で死んでしまった…。そして1ヶ月前くらいに武装盗賊団【緑の虎】が聖地【マッメ】を襲い、私達が暮らす里を滅ぼした。父のアマナトは私達を逃がすために囮になってはぐれてしまった。恐らくもう生きてはいないでしょうね…。


 私達は祖父の古い友人を頼って【ステークオ】中央にある集落を目指していた。しかし、目的地まで後1週間という所で山賊達に目を付けられて捕まってしまった。


 私達は悲惨な未来を覚悟していたわ。けど…


「静かに…!今夜仲間が集まりきる前に君達の縄を細工しておく。隙を見つけてどうにか逃げ延びてくれ」

 そう言って山賊のひとりが枯れ木に縛り付けられた私と祖父に話しかけてきた。


「待って!弟がいるの。弟は何処にいるの?」

「…悪いが男の子は奴隷商人に見せるからって違う場所に連れて行かれちまった。残念だけど今は諦めてくれ。しかし、…僕ができるだけはやってみよう」

「…なあ、若いの?何故にお主のような心根を持つ男が山賊などに身をやつしておるのだ。残念でならんわい…それにお主もただでは済まないだろう、恨みがないとは言わんが儂らと来ないか?」

 祖父が山賊相手にこんな事を言うなんて。でも彼の眼はとても澄んでいたわ。


 青年はナイフで縄を弄りながら顔を伏せて苦笑いを浮かべる。

「…色々あってね。僕は単なる腰抜けさ?それにれっきとした山賊(・・)だ。街には入れないし、アンタ達の足手まといになるだけだよ…気持ちだけは有難く頂くよ。…よし、もう少しでここにいる残りの連中が仲間を呼びに離れる。その隙にアンタ達は逃げてくれ、じゃあな…」


 青年は他の見張りの山賊達の元へと去っていった。


 彼の言葉を信じ、私達は逃げ出したが2日後の朝には追い付かれてまた捕まってしまった。


「げっへっへっへ。やっと捕めえたぞ、ケモ耳のお嬢ちゃん」

 山賊が私の胸元に手を伸ばす。


「やめんかっ!孫に薄汚い手で触るでないわっ!」

「うるせっ!このクソジジイめ!」

 祖父は羽交い絞めにされた上に後ろから頭を殴られて昏倒させられてしまった。


「御爺様っ?! お願いやめて!」

「馬鹿なジジイだぜ。この人数に敵うはずねえだろが」

 祖父を殴った山賊が地面に唾を吐く。


「おいおい。まあジジイは殺してもミズムシが怒ることはないだろうが、身分がかなり高そうだ。コイツらの所縁のある者から身代金が毟り取れるかもしれないからまだ殺すなよ? 娘もここまでてこずらされたんだ、しっかり元を取らねえとな」

 もうひとりの山賊が下卑た笑みを浮かべて顎をさする。


「これもボンレスの腰抜け野郎のせいだ!全く、アイツはスキルさえなければ俺が殴り殺してやれるんだが…しかもクソガキを庇って俺達に喧嘩なぞ売りやがってよ」

「落ち着けよ、ザザ。アイツのおかげで普段からマトモな飯が食えるんだからよお?俺達は男所帯にしちゃあ、そこら辺の盗賊共より恵まれてるぜ? それに昨日の夜にゃフナムシの糞野郎にこっぴどくやられてたし、だいぶ懲りただろ…」

 私は逃がしてくれた青年の姿が目に浮かんで涙が零れそうになる。


「それにだ、コイツらを追っかけてる内に良さげ(・・・)な次の獲物も見つけられたしな。俺達は運が良い」

 そう言って岩場から身を乗り出す。


 私は恐る恐る山賊達の視線の先を見つめる。


 そこには何か浮世離れしたような少年が呑気に腰を掛け、見たことも無いような食べ物を口にしている。服装も初めてみるものだ。


「にしてもアイツさっきからブツブツと誰に話しかけてるんだ? …なあ、もしかして"狂人"なんじゃあねえのか?」

「ありえるかもな? あの身なりだ、どこぞの高貴な血の小僧かもしれん。大方襲われて、連れでも殺されたか。だが、油断はしちゃいかん」


 その言葉に先ほど窘められた男が口を開く。

「まさか!あの小僧が"賞金稼ぎ"だとでも? …あり得ねえぜ」

「だが俺達が【ロアッツ】でよく喰わされた手だろ? まあ周りにゃアイツの味方も見当たらねえし、その心配はないと思うがな」


 そう山賊達がヒソヒソ声で話す中、彼は未だ独り言を続けている。


 …可哀想なひと。恐らく心を砕かれる程に辛い思いをしたのだろう。


「まあ焦るなよ。もうすぐでアジトの近くだ。…それに俺達にはとっておきの餌があるじゃあねえか? 久々に楽しめそうだぜ」

 そう言って男達は顔を歪めていく。




「お、お願いしますっ!た、助けて下さいっ」

 私と祖父は山賊達に岩場の影から彼の前に突き飛ばされる。彼をアジトである洞穴に誘導しろと脅されて…。でなければ弟を殺すと。


 目の前の少年は不思議そうな表情で私を見つめている。私は思わず地面にしゃがみ込むと、

「お願いです…私の祖父が身動きが取れなくなってしまいまして。どうか貴方様の御力を貸していただけませんか? どうか雨風を凌げるような、アチラの洞穴まで…」


 私は胸が張り裂けそうだった。私は見ず知らずの彼を犠牲にしたのだから。


 すると彼は少し笑みを浮かべると立ち上がったの。そして、周辺に向かって叫んだ。

「おいっ!俺を舐めるなよ? お前らがその辺に隠れてんのはお見通しなんだぜ。サッサと出てきなよ? …それとも単に恥ずかしやがりさんなのかい。特に…洞穴の中に引っ込んでる、デッカイのはさあっ?!」


 私は愕然としたわ。彼は既に私達に気づいていたのだから。それでも逃げ出さそうともせず私達から仕掛けるのを待ったいたのだから。


 私は呆然と彼の顔を見てた。しかし、彼は微笑んでいたの。それは狂気などではない、全てを悟った者が浮かべることのできる、余りにも今の私には優し過ぎる微笑だった。


 私は自身の恥に耐えられなくなって、その場に顔を隠して伏せたわ。


 何やら彼と山賊とのやり取りの言葉が耳に入る。すると私の近くに足音が迫り、私は恐怖から咄嗟に顔を上げたの。


 彼は醜く顔を歪めた大男と私の間に立ちはだかっていた。

「なんだよ、人質かい?カッコ悪ぃ~なあ。なあアンタ、俺よりも二回り以上デカイくせしてサシで勝負する根性も無いのかい? 本物(プロ)、なんだろお? 今ならまだケツまくって逃げたっていいんだぜ」


 彼の挑発に激高した大男が叫び声を上げると、巨大な斧を振り上げて彼に襲い掛かって来たの!駄目っ!? せめて彼だけでも…!私はせめて身代わりにと立ち上がったけど、遅かった。


 だけど…そこからはよく覚えてないの。気付いたら彼が私の顔や体を綺麗に拭いてくれて、祖父を介抱してくれていたみたい。


「そういえば、洞穴の奥に子供がまだいるみたいだが?」

「っ!? どうしてそれを?私の弟なんですっ!あの中に居るんですねっ?」

 私は礼もまだ満足に言えてないのに洞穴の中に駆け込んでしまった。弟の無事を確認するのに必死になっていた。


 弟は洞穴の柵の中に居た。

「…っ!エダマノっ!無事?! 怪我してないっ?!」

「大丈夫だよ…お腹は空いたけど」


 私は安堵から涙が零れた。


「…山賊の兄ちゃんが、庇ってくれたから」

 …!そうだ、山賊達の中には私達を助けてくれた青年がいるんだ!洞穴の外の少年。少年にしか見えないが、あの大男をあんな風にできる人を超えた修羅からすれば山賊達は撫でるだけで死んでしまうような存在だろう。


 私は弟の手を取ると洞穴を急いで出たの。


 そこには今まさに青年の首を落とそうとする彼の姿が目に入った。


「お願いしますっ!そのひとを殺さないで下さいっ!」

 私は夢中になって叫んでいたわ。


「どうしてだ?」

 振り向いた彼の表情を見て息を呑む。


 彼は義憤に燃え、怒り狂っていた訳ではなかった。彼は圧倒的な力を持って山賊達を誅戮(ちゅうりく)し、嗜虐心を満たす笑みを浮かべていた訳でも無かった。


 彼は今にも泣きそうな顔をしていた。何故、そうような表情ができるのだろうか?私は場面も自分の立場も忘れて彼を抱きしめたくなった。いや、もしかして泣いて縋るのは私の方かもしれない。そんな抗いがたい表情をした彼がそこにいた。


「…い、いいんだっ!もう、僕を庇わないでくれないか…」

 青年の震えた声が耳に入る。青年は懺悔の言葉を口にした。そして、剣を持つ彼に救いを求めた。


 嗚呼、…もう私にはかける言葉が無い。


 青年の言葉に頷いた彼が剣で首を払った。しかし、地面に落ちたのは黒い紐のようなものだった。

「その【隷属の組紐】で奴らに攻撃できないようになってんだろう? …よく耐えたな」


 青年が信じられない表情を浮かべている。


「知ってたさ。お前が好きで山賊団なんかに入ったわけじゃあないのはな。目が濁ってねえからなあ~綺麗なモンだ。そいつらとは一目瞭然だったよ。…それにお前はその女の子を必死に逃がそうとしたんだろう? まあ、運悪く屑野郎に見つかっちまったみたいだがな。…安心しろよ?少なくともその子はな、お前を恨んでなんかいねーよ。…それでも、まあ償いを続けたいってんなら俺が用意(・・)してやる。お前に必要な場所をな…」

 彼は優しく微笑む。私はいつの間にか胸の前で手を組んでいた。


「うっ! うわあああああアアアぁぁ~~~~~!!」

 青年は泣き崩れた。…私も泣いていた。これまでの人生の中でこんなに情け深い人を初めて見たのだから。子供の様に泣きじゃくりながら祖父の姿を見ると、祖父は手で印を結んで頭を深く下げている。あれは"失われた森"に伝わるエルフの最大級の敬礼であった事を私はぼんやりと思い出していた。


 その後、彼は私達に手伝いを求めたの。彼が倒した山賊と、洞穴にあった恐らく女性達と思われる遺体を火葬する為にね。


「…死ねば、みなホトケ(・・・)か」

 彼はいつの間にか燃えていく亡骸を前に目を閉じ、掌を合わせていた。


「…ホトケ?」


 私は無意識に問いかけてしまったんだけど、彼は困った表情でコチラに視線を向けると、

「ああ、う~んとなあ。人間死んだらお終いっていうか、どんな善い行いをした奴も、逆にとんでもなく悪い奴も死んじまえば同じものっていう考え。と言えばいいのかなあ?」

「…そうなんですか」


 尊い考えだなあと私は漠然と思ったが、私も彼にならって目を閉じて掌を合わせる。…彼は何者なんだろうか?私は目をそっと開けて彼を横目で伺う。



 彼は、涙を流していた。


 私は息をするのも忘れてその横顔を暫く見ていたわ。



 私はその場から立ち上がると、心配した目でコチラを見る弟の手を強く握りなおす。そして、彼を見つめて深く心に決めた。


『彼にはもはや返しきれないほどの恩がある。私は生涯を賭してこの恩に報いよう』



 これが私にできる、唯一の償い(・・)だ。



【ステークオ】

 現在ザインがいる土地。【シットランド】の東に位置し、殆どが荒野と化している。かつては草原と森の豊かな土地であった。


【マッメ】

 懐古派"失われた森"に属するエルフにとっては聖地とされる場所。

 純潔のエルフが存在しているとされる半ば伝説となったエルフの神殿がある。

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