ファースト・コンタクト(山賊編) 【ザイン視点】
【勝手に解説】ステータス編⑥
【注意力】
周囲を警戒し、危険を回避する力。
-1~3
恐らく独りでは生きてはいけない。0は無警戒。-1は五感を封じられている。
4~10
一般レベル。常に周囲の状況の変化に対応が可能なレベル。
11~19
野生の獣の如く、気配に敏感になる。大概の相手に対して緊急回避が可能。
20以上
訓練しても身に着けられないレベルまで達した者は、周囲をレーダーのように把握できる。
※100(極限)
絶対を超えた認識能力。未来予知すら可能とする。
【魅 力】
心を惹きつけて虜にさせる力。
-1~3
見た目からしてショボい。0はかなりのブサイク顔。-1は見る者に嫌悪感や恐怖を与える。
4~10
一般レベル。高い値ほど男ならイケメン。女なら襲われても文句が言えないほどの美女。
11~19
高いカリスマ性と人間だけに止まらずモンスターまでも魅了するレベル。
20以上
かつて幾つもの国を滅ぼしたとされる傾国の美女に匹敵するレベル。
※100(極限)
無条件の崇拝。あらゆるものが魂を奪われ、頭を垂れる。魅了された者は、死ねと命令されれば涙を流して喜びの絶頂の中で死に絶える。
俺は【エルフ】というパワーワードを耳にし、気分が少し高揚していた。
「エルフね…?こりゃあ助ける理由がひとつ増えちまったなあ」
俺は口元を拭って助けを求める彼女を見やる。なかなか野性的?な顔立ちをしてはいるが可愛いらしい容姿をしている。
「ボソッ(は~…本当に昔からこういうタイプの二次元女、好きだよねぇ~)」
「ん? 何か言ったか?」
「別に~↓」
そう言って色黒天使は手をパタパタと動かして俺から離れていった。
んじゃ、やりますか。
「極振りっ!【注意力】へ!!」
☛スキル【極値】により【注意力】が100に変化。
スキルを継続する限り、他の能力値が1に変化。
俺のコメカミがビリビリと音を立てるかのような鮮明な衝撃だ。視界が極採食から暗色へと変わっていく。そして暗闇の中、俺を中心に光の波紋が広がっていく。
波紋によってまるで3Dプリンターの様にあらゆるものを俺だけの空間にかたどっていく。地形、地中の岩石や虫や骨、そして人間…。洞穴の奥にいる少年?の息遣いまでリアルに聞こえる。全部で人間は14人か…俺の頭上をパタパタと飛んでいる五月蠅いヤツは除外してだがな。
目の前のエルフのふたりと洞穴の奥に居る子は敵意のない青。他の11人は敵意有りの赤色だ。特に洞穴にいるデカイのがボスだろう。強さも周りと比べて非常に高く感じる。
そして俺はイメージを遂行する。俺が爺さんを抱えて洞穴に入ると俺を捕まえる為の罠が作動している映像が頭に浮かぶ。逆に俺が助けずに逃げ出すと周囲の山賊8人が一斉に襲い掛かってくる。
ただ、俺は罠を簡単に突破するし、8人など瞬殺していたがな。これが【注意力】100の極限値がなせる"未来予知"だ。俺がただの旅人だったらこの二段構えの作戦は成功していたかもしれんが、残念ながら相手が悪かったな?
俺がスキルを解除すると暗闇の空間は消え去り、視界が歪んで光の世界へと戻される。
「おいっ!俺を舐めるなよ? お前らがその辺に隠れてんのはお見通しなんだぜ。サッサと出てきなよ? …それとも単に恥ずかしやがりさんなのかい。特に…洞穴の中に引っ込んでる、デッカイのはさあっ?!」
俺が叫ぶと、俺に助けを求めた彼女は信じられないといった表情を浮かべた後、地面にうずくまった。そして、周りの岩の影からゾロゾロと薄汚い連中が出てきた。みな下卑た笑みを浮かべている。
「ぶははははっ!大した小僧だぜっ。恐れ知らずもそこまでいけば立派なもんだ」
すると洞穴の中からふたりの革鎧を身に着けた男と悠に2メートルを超える傷だらけの筋肉ダルマがのそりと出てきた。
「アンタがこの山賊共の大将かい?」
「そうだ。俺様が"泣く子も泣き笑いする"山賊団【神吹雪】の頭目、ミズムシ様よおっ!」
…水虫? 何とも酷い名前もあったもんだ。思わず足の裏が痒くなりそうだ。
「で? どうするね。俺の観光案内でもしてくれんのかい?」
「ぶはははっ。本当に胆が据わったガキだな? 俺達は最近【ジルモ】から【ロアッツ】周辺に拠点を移したんだが、鬱陶しい騎士共に追い回されて、仕方なく山を越えてこんな時化た場所まで足を延ばしたのさ」
知らない単語が一杯だな。
「【ジルモ】?【ロアッツ】? それに騎士だと? どういう事なんだ?それは」
「………お前、本当に何者なんだ?見なれない見た目してやがるしよぉ」
「俺はあまりこの辺に詳しくなくてなあ。良かったら色々と教えてくれないか?…場合によっちゃあ見逃してやってもいいんだぜ。同じ山賊のよしみでな?」
「ぶはっ!ぶはははははっ! 笑わせるんじゃあねえやっ。お前みたいな青臭い山賊がいて堪るかっ!見栄を張るのもここまでだ…俺様達はお前を暫く見張ってたが、かなり上等な食糧と水を隠し持ってやがるだろう? とっとと出しやがれっ!!」
俺は渋々、腰の【ストレージ】からパンと水を取り出して見せる。
「おおっ? オイオイオイっ!その袋、もしかしてマジックアイテムか? コイツぁ運が向いてきたぜ!コレなら遥々故郷からおん出て来た甲斐があるってもんだ」
「袋が欲しいのか?そりゃあ駄目だ。食い物が欲しければ人数分譲ってやってもいい。勿論、情報と物品で交換だかな?」
すると巨漢が腹を抱えて笑い出した。
「おめでたい奴だな。本物の山賊である俺様がそんなまどろっこしい真似をするわけがねえだろうが!オイっ!」
俺の後ろに周り込んでいた山賊のひとりが俺に向かって手を伸ばす。
「オイオイ?これが最後のチャンスだ。もう無いぜ?サッサと失せなよ。あ、俺に情報をよこしてからな?」
俺はいつの間にか手を伸ばしてきた山賊の後ろにいた。そしてパンと水を袋に収納すると軽く手を振った。その瞬間、俺の近くにいた3人の山賊の装備の繋ぎ目が弾けて身に着けていた装備がずり落ちた。
「…参ったな。この世界にはパンツが無ぇのかよ?それとも山賊はノーパンが主流なのか?」
見たくないものを見てしまった。彼女もまだうずくまってるし、何とかセーフだろう。
「っ?! …お前っ!」
水虫野郎は咄嗟に地面にうずくまったままの彼女に近づこうとするが…
「なんだよ、人質かい?カッコ悪ぃ~なあ。なあアンタ、俺よりも二回り以上デカイくせしてサシで勝負する根性も無いのかい? 本物、なんだろお? 今ならまだケツまくって逃げたっていいんだぜ」
俺は一瞬で彼女とデカブツの間に入り込み、そいつを見上げながら笑みを見せる。
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ミズムシ:男:32
山賊/レベル18 属性:-・▼・±・・・+(悪意)
【攻撃力】12 【防御力】04 HP 20/20
【生命力】10 【敏捷性】08
【魔 力】00 【精神力】03 MP:なし
【技術力】03 【洞察力】05
【注意力】04 【魅 力】00
スキル:【強奪】
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ふん、大した悪党だな。
「アンタ、中々いい感じの立派な斧を持ってるじゃあないか。俺は今、手元に武器が無くてなあ~。アンタが万が一に死んじまったらその斧、俺が貰ってもいいかい…?」
俺は冷酷な微笑を顔に貼り付け、最終宣告をする。
「ぐっ…!すばしっこいだけのガキが調子に乗るなよっ!? そのマジックアイテムを分捕ってやるぅ!珍しく綺麗な面してやがるから、そこの女と一緒に暫く楽しんでやろうかと思ったが…気が変わったぜ!」
そう言うとミズムシは両手斧をまるで玩具の様に片手で上段に持ち上げる。
「そうかい…」
…男にモテるのは初めてだな。まあいいや、早く片付けよう。
俺はスキル【極値】を発動させる。
☛スキル【極値】により【攻撃力】が100に変化。
スキルを継続する限り、他の能力値が1に変化。
俺は奇声を上げるミズムシに向かってゆっくりと拳を突き上げる。
「この馬鹿がっ!? 真っ二つになりやがれええええええええええぇぇぇぇぇっ!!?!」
誰もが俺が斧で寸断される幻影を見ただろう。しかし、その結果は…
ボッ!! ゴバァンッ!!!!
振り下ろした巨大な斧はまるで飴細工で作ったビール瓶の様に粉々に砕け散り、山賊ミズムシだったものはミンチになって山賊達に降り注ぎ、周囲を赤黒く染め上げた。
「………。うわぁ~【攻撃力】100はエグイなあ…服が汚れちまったぜ。コイツらマトモな替えの服持ってるかな? …にしても静かだな。もっとこう何かリアクションとかないの? まあいっか。おいっ!お前ら勝手に逃げんなよっ!逃げる奴は必ず捕まえて殺すぞ? …もっとジックリと時間を掛けてな」
山賊共は皆、失禁していた。
俺が振り向くと、彼女はいつの間にか起き上がってコチラを呆然と見ていた。
彼女の頭にはミズムシの腸の一部がまだ湯気を立てて乗っかている…
残念ながら彼女も例外では無く、足元に水溜まりができていた。
【属性:悪意】
マイナスの属性。世界に対して反感・悪意を持つ。自らの意思で犯罪に手を染める者が多い。
【強奪】
パッシブ(常時効果を発揮)。山賊などのクラスを代表とする習得スキル。
対人からアイテムや装備品を力尽くで奪える成功率が上昇する。
ただし、属性がマイナスに進行する可能性が高くなる。
【ジルモ】
山賊ミズムシから聞いた土地名。氷雪地帯。
【ロアッツ】
山賊ミズムシから聞いた土地名。この世界で1番人口が密集している。
"騎士"なる存在がどうやら山賊達を追いやっているようだが…?