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山賊の王  作者: 佐の輔
序章
4/35

ファースト・コンタクト(ゴブリン編) 【ザイン視点】


【勝手に解説】ステータス編④


【魔 力】

自らの肉体に宿る神秘のエネルギー。

 -1~3

 残念ながら魔法使いは諦めよう。-1は魔力アレルギー。

 4~10

 一般レベル。魔法使いの才能有り。

 11~19

 偉大な魔法使いになれる可能性があるレベル。

 20以上

 伝説の極大魔法を扱えるレベル。強大な魔法の制御ができる。

※100(極限)

 魔神。世界を歪めることすら容易い。あらゆる魔法の使用回数∞。


【精神力】

何かをやり抜こうとする意志の力。

 -1~3

 よほど幼い子供か精神に問題があるレベル。0は仕事をよくサボる。-1は脳味噌が無い。

 4~10

 一般レベル。高い値ほど精神的にタフで我慢強い。

 11~19

 どんな拷問にも屈しない鋼の心を持てるレベル。ダイエットも余裕。

 20以上

 凄まじい思念の力が奇跡を起こす。スキルが無くとも超能力の使用が可能となる。

※100(極限)

 絶対の精神。他者の精神・記憶を改変することすら可能となる。


 ―――ドスンっ

「ふんぬっ!!」

 俺は強かに腰を打った。地面は驚くほど硬かったようで俺の尻の跡がクッキリと何かの石膏の型のように残っている。


「痛てて…俺じゃあなかったら、ケツが三つ…イヤ、五つか六つには割れたな。というか転生する位置もさ、もうちょっと考えようぜ」

 高さもだが、場所もだ。


 見渡す限りの荒野だった。


 人っ子ひとりもいない…こんな僻地に降ろさなくてもいいんじゃあないか? そう思ったが、俺は不意に視界に入った足元にある木切れを拾い上げた。

「こりゃあ風化してボロボロだが…装飾されたドアか何かの破片だ。というかこの周りが…」


 自分の周囲を改めて見渡すとここがある程度大きな街?であったことが分かった。俺の初の異世界体験にしては10もある【洞察力】から恐らくここら辺には少なくとも約3千人以上は住んでいた事や、滅んだのは遥か800年以上も昔で、しかも人間以外の二足歩行の生物?種族もいるようだ。人間に混じって足の形が明らかに違うものが幾つもある。犬?こっちは猫?こっちはトカゲのような尻尾を引きずった跡まである。 まあ、この現状で生き残っていればの話だがな。


「成程ね。ここが最初の街だったわけだ?800年も前の話だが」

 ヒュン! ゴカっ


 俺は後方から迫ってきたものを振り返らずに腕でガードした。バラバラに砕け散ったソレが余りにも脆いので最初は泥団子か何かかと思ったが、見るとそれなりの大きさの石であった。むぅ…【防御力】が装備無しでも10もあるからかな?


「ギギィ!ゲギャアアア!」

 近くの瓦礫の影に隠れていた者達が飛び出してきた。 まあ、最初から何となく分かってたけどな【注意力】10もあるから。


 しかし【ゴブリン】だろうか?何かイメージと全く違ってるなあ、確かに小柄の小鬼って言われるだけあって中学生みたいな背丈くらいしかないが、めっちゃ肌がシワシワだ。ミイラか。イヤ案外的を得てるかもしれないな。【洞察力】から奴らの皮膚があからさまにボロボロで生命活動していないことがわかる。ゾンビか?


「「ギギィィ!!」」

 そう変な叫び声を上げながら3匹の内、2匹のゴブリンが釘バットのような棍棒を振りかざして襲い掛かってきた。


 ブンっ! ヒュンっ! ブンっブンっ!


 全ての棍棒の一撃が空を切る。

「遅すぎる。太極拳か何かか? スローモーションかつ次の動きががまるでわかっちまうなコリャ」


 俺は特に武術を公式に修めた記憶は無いが、これが能力値オール10の補正ならば確かにこれは十分過ぎるステータスだな。


 棍棒を躱し続けるのに飽きてきた俺はワザと攻撃を無防備に受けてみることにした。 ゴバァン! 俺の頭にヒットした棍棒はまるでビスケット菓子の様に粉々に砕け散った。ハリセンで思いっきりシバかれたくらいには痛い。


「ギ!ギギャガァ!」

 攻撃が当たったのが嬉しかったのかゴブリンが笑い声に似たような声を上げる。もしかしてモンスターじゃあなく第一村人ってことはないよな?まあ一応、平和的に…


「なあ、お前ら俺の言葉わかr」

 俺がまだ喋っているのにも拘わらず、調子に乗ったゴブリンが俺の顔面に向けてパンチしてきた。


 …まあ当たったところで俺にたいしたダメージはないだろう。


 …しかしだ、さっき砕けた棍棒の破片が服の隙間に入ったのか心なしかチクチクするんだよなあ。


 …そして何よりコイツの調子こいた面が気にいらねえっ!

「お返しだっ!オラっ!」


 俺の拳がゴブリンの顔に吸い込まれた瞬間、パン!と乾いた音と共にゴブリンの頭が吹っ飛んだ。

「「「は?(ゲギ?)」」」


 頭を失ったゴブリンは俺の横を通り過ぎ、ヨタヨタと数歩、歩いたところで立ったまま動かなくなった。

「流石に脆すぎだろ?」

「ゲギャ!アギャックウ!」

 

 何か叫んでるようだが俺には意味が解らない。うん。コミュニケーションを取るのは無理っぽいな。


「…それにしても俺もなんか武器が欲しいなあ。あ、そうだ!それくれよっ」

 そう言って俺は目にも止まらない速さで何か叫んだゴブリンの棍棒を引っ手繰る。


 ブチンッ!


 アララ。何か余計なオマケまでくっ付いてきちまった。棍棒にはゴブリンの片腕がぶら下がっていた。ゴブリン達はショックの余り固まっているようだ。変に繊細だなあ?ゾンビのくせに。


「にしてもやっぱりゾンビかね?出血があまりにも少なすぎる… どれっ」

 ガブっ。俺はくっ付いてきたゴブリンの腕を外すと直に噛み付いた。


「ゲギャ?! グーギャ!」

「グーギャ!グーギャ!」

 そう叫び声を上げてゴブリン達が一目散に俺から逃げていく。俺はそれをぼんやりと眺めながら咀嚼を続けていた。


「ブっ! ぺっぺっ!やっぱり相当傷んだ肉の味がする。でも見た目以上に腐敗が進んではいないんだなぁ、何でだ?」

 俺はゴブリンの腕を腰に付けた袋、【ストレージ】に収納する。


☛アンデッド・ゴブリンの腕を収納した。


「ほお、やっぱりアンデッドか。初見からアンデッドとはパンチ(・・・)が効いた世界だな」

 まあいい。あの程度のモンスターばかりなら大して気苦労はしないだろう。俺は気晴らしに棍棒をスイングする。


 スイングで一振り振り切る前にミシミシっという音を立てて棍棒は砕け散った。



 …やっぱり、この棍棒とあのゴブリンが特別脆かったんじゃあないか?






―――――(アンデッド・ゴブリン視点)―――――





 腹が減った。イヤ俺達アンデッドは常に満たされない空腹感と乾きに苛まれていた。これでアンデッドじゃあなけりゃあ、この荒野でサッサとくたばって楽になれるんだが…


 いや、死んだところでより酷い状態でゾンビになるだけだろう。本当に嫌な世界だ。


 俺の前をアレックスがトボトボと歩いている。


 ドサッ! 後ろを振り向くとデイビットの奴が転んで倒れていた。


「ギギゴォ、ギ?(オイオイ、大丈夫か?)」

「ギボ…(すまない…)」


 俺とアレックスとデイビットはずっと3人で旅をしている。辛い旅だが仕方無かった。癒えぬ飢えを満たす為、それと死ぬ(・・)為だ。俺達アンデッドの呪われた特性によって自殺とアンデッド同士の殺し合いじゃあ死ねないのだ。


「グガァ!(糞ったれめ!)」

 アレックスの奴が棍棒を地面に叩きつけて癇癪を起し始めた。


「…ギ(…おい)」

 俺はデイビットを助け起こすとアレックスに声を掛けた。


「ギギィ!ゲルガァ、ギギャガ!(もう嫌だ!こんな旅はいつまで続くんだ!)」

「ゲギャ(死ぬまでさ)」

 アレックスが俺を睨む。


 俺はアレックスがぶん投げた棍棒を拾って渡すと、

「クーゲン、ゲテ。ギギィミギャア。グルググ・ゲギャ(今日中にもう少し先まで進もう、そうした方がいい。次の得物をそろそろ見つけないと限界だ。時期に本当に身動きが取れなくなっちまう)」

 俺がそう言うと、アレックスも諦めたのかムクリと起き上がってまた歩き始める。


 俺達アンデッドの最大の苦しみ、それは生きて(・・・)いることだ。肉体の殆どが生命維持を既に手放しているのにも関わらず、生き続けねばならない。糧を得られねば体は動けなくなる。しかし、簡単には死ねない。肉体が雨風に永いことさらされて風化し、塵となったその時にやっと解放されるのだ。


 それは、俺達にとって一番苦しく、辛い死に方だった。


 そんな俺達アンデッド・ゴブリンでも滅多に共喰いなどしない。理由は死ねないことが一番大きいが、そんな事をしてはあの忌々しい【グール】と同じだからだ。【グール】はアンデッドすら忌避する呪われた存在だ。奴らはアンデッドですらないが正真正銘の怪物だ。アレで元は人間だったなんて誰も信じないだろう。アイツら生き物とアンデッド見境なく襲い、食い散らかす。しかも趣味も悪くて最悪だ。アイツらの最近のトレンドは俺達アンデッドをワザと殺さないようにバラして装飾品代わりに飾ったりコレクションすることだからだ。


 捕まったら最後、この苦しみから永遠に解放されずに玩具にされるだけだろう。




 次の日の昼、俺達が瓦礫の山を背に休息を取っていた時だ。急に何かが落下した様な音が近くで聞こえた。


「ギギィ!グッゴウ!(しめた獲物だ!しかもまだガキだぜ!)」

「デビィト!ギ!(デイビット!頼むぞ!)」

 数か月ぶりの獲物だ。ここで生き物の肉が喰えればまた暫くは動けるだろう。デイビットが獲物に向かって石を投げつけ、俺とアレックスが奇襲を掛ける。いつものパターンだ。


「ギギィ!ゲギャアアア!(獲物がいたぞ!死ねえっ!)」

 俺とアレックスが棍棒を獲物目掛けて振り回すが、一向に当たる気配がない。まるで風で舞う木っ端を相手にしている気分になる。


「ギ!ギギャガァ!(やった!喰らわしてやったぜ!)」

 やっとのことでアレックスの棍棒が当たるが、しかし当たったままに粉々に砕けてしまった!


 普通じゃない!この棍棒は長い間使っても壊れなかったし、それなりに堅い素材でこしらえたものだ。


 止せ!と声を掛ける前にアレックスが獲物目掛けて飛び込んで行く。その目は何かに憑りつかれたような、しかし満たされたてもいたと思う。


 アレックスが拳を相手の顔面に叩きつけたと思った瞬間、彼の頭が吹き飛んだ。

「「「ゲギ?(は?)」」」


 俺達は呆然と解放されたアレックスを見つめていたが、獲物は今度は俺に視線を向けた。

「ゲギャ!アギャックウ!(死んだ!アレックスが!)」


 俺はそう叫んで咄嗟に距離を取ろうとしたが、ブチンッ!という音と共に俺の棍棒は無くなっていた。俺の右腕ごと。俺は随分と前に感じていた"痛み"を思い出そうとしていたが、後ろにいるデイビットが騒がしい。何だ?俺は俺の腕を引き千切った相手を見る。


 ソイツはあろうことか俺の腕に喰らいついて目の前で喰い始めたのだ!


「ゲギャ?! グーギャ!(化け物めっ?! コイツはグールだ!)」

「グーギャ!グーギャ!(グールだ!グールだ!)」

 俺は心からの叫び声を上げる。アンデッドになってからこんなに恐怖を感じたことはない。俺達は一目散にその場から逃げ出した。



 数日後、俺達がその場を訪れるとアレックスの遺体は無かった。…持ち去ったのか?


「…ギ、ギゴ(…おい、あれ)」

 デイビットが何かを指さす。


 それは折れた棍棒でつくられた墓標だった。根本を調べると土に混じって青味を帯びた灰が含まれていた。俺達アンデッドが完全に解放されると遺体はこの様な色味を帯びた灰となる。


 …そうか。アレックス、まあ待っていてくれよ? 俺達も、いずれお前に追い付くさ。




 俺達は墓標を後にし、旅を続けた。



【アンデッド】

 生ける屍。女神の慈悲が絶たれた世界では肉体に宿ってしまった呪いの力を浄化(成仏)できず、魂が肉体に縛り付けられてしまい、死んでいるのに死ねない状態になってしまう。特にモンスターはこの傾向が強い。アンデッドになったものは決して満たされない飢えと渇きに苛まれる。これにより、徐々に理性を失っていき凶暴性が増して遂には死を振りまく怪物となってしまう。

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