新たなる神殿
なんかチャート通り書いてたらやたら1話1話が長くなりそうなので話を半端ですがよく切っています。見辛れぇ…そして短いです。
「このあたりの瓦礫を撤去して…あの辺りまでではどうですかのう」
「良いのでは? ちょうどほぼこの遺跡…いえ将来の要塞の中央ですしね。いかがですかザイン様」
「いやさあ、まあ俺が文句言うのはアレだがここでいいのか? 隣じゃん…」
ザイン達が神殿の設計図を広げているのは先程までザイン達が話し合っていた"王の巣"から歩いて15秒の場所だった。
「良いのです!使徒様のお住まいの直ぐ側などまさに理想の立地と言えましょう。幸いにもここら一帯の建物は瓦礫ばかりで人は住んでおられないことも確認済みですしね」
「うむ。まあ、ザイン殿が頼りですからのう…」
「…何かある度に家から飛び出さなきゃあいけないってか近すぎて落ち着かないんだがなあ~。まいいや取り敢えず瓦礫をどけよう…おーい!皆瓦礫の上から降りてくれ~。間違っても俺の前に立つなよ? 巻き込まれっから」
ザインは次々と手で触れた巨大な瓦礫を消し去った。その度に周囲から感嘆の声が上がり、ナットーやセンテに至っては祈りすら捧げている。単にザインの腰にある無限の容量がある【ストレージ】にどんどん収納していってるだけではあったのだが…。
2時間後、あらかたの瓦礫が片付き、必要な面積は確保できた。手で運べるようなものは周囲の住人によって取り除かれている。
「…はあ。割と疲れたな…」
「ザイン様。お疲れ様です」
「お。ありがとうキナ」
ザインはキナから水の入ったコップを受け取り喉を潤す。キナがそれをニコニコと見つめており、ナットーも微笑みながら髭を撫でている。
「ん。爺さん、設計図見せてくれるか?」
「おお。もうやりなさるか」
「…ふむふむなるほど。よしちょっとやってみよう! お~いみんな離れてくれ~!土台を作っちまうからさ!」
周囲で同じく休憩中の住民達が急いでザインの後ろへと逃げていく。
「うし!…地面を形成…地面の上昇をイメージ…台形の土台…ぬうぅぅん!"地殻変動"!」
地面が揺れた。全ての建物が揺れ動いたかのようだった。ザインの前の地面が隆起し、徐々に台形の地面がせり上がってきた。
「ぐぐぐ…かなりバランスが…!? 均等な形にしようとすると…乱れる…! チュチュ!」
「ザイン!どしたネ?」
「この設計図を見てくれ。んで上を飛んでこの形通りになってるか見てくれないか?」
「わかタ!」
俺の肩に飛び乗ったチュチュが空中に舞う。
「…っぐぐ!」
「お前様…」
ユキムシが心配そうな表情で後ろからザインの顔を伺う。
「ユキ…お前は目が良いだろ? 土台の高さが均等になってるか見てくれ…頼む…!」
「わかったんじゃあ」
頭上からチュチュが叫ぶ。
「ザイン!チョットだけ右上が飛び出てるヨ?」
「おう!」
「お前様…今ので左側に少おしばかり傾いたんじゃ…」
「お、おう…ぐぎぎ」
ザインはかなりの苦戦を強いられたが…やっとの思いで神殿の土台を完成させた。そこからナットー達と検分しながら土台の強度を確かめたり、ナットーの観測術や補佐を受けながら神殿の周囲を囲む柱を1本1本建てていく。そして中央の聖火台に石室。そして…
「…ふう。なあ、マユ。どうだ? 【大女神ホーリー】様みたいに見えるか?」
「………まあ、これくらいの出来なら怒られることはないと思うっスよ★」
「おおぉ…これ、が…」
「…女神よ…!!」
ナットーとセンテが滂沱の涙を流しながらザインが創った巨大な女神の像の前にその身を投げ出して祈っていた。しかし、結果的にその日1日は神殿だけで日が暮れてしまった。
「はあ。疲れたわ…壁の方は明日だな?」
「う、うう…!し、使徒様…あり、ありがとうございます…!」
「いやいや、ザイン殿、仮に儂が百人おったところでこれほどの神殿を造ろうなどとしても数年は費やすでしょう。…否、儂でも恐れ多くも女神の姿を模すことなでできなんだか…! 儂からも伏して礼を申し上げるザイン殿…!」
「ま。1日で形になって良かったよ。まあ細かいとこは爺さん達で調整よろしくな? …俺は先に戻るよ」
そこにゾロゾロとジョニー達がスコップ片手に帰ってきた。
「悪かったなあ。城壁作りは明日にするよ」
「いやあ、構いませんぜ旦那! てかアレが神殿?ですかい!凄いもんですねえ! あんな馬鹿デカイのがたった1日で出来上がっちまうなんて…」
ザイン以外の住民全員が呆けた顔で神殿を見に集まっている。
「ハハハ。流石の俺も疲れたがなぁ」
「いや、疲れたってだけで済むんだからよお…旦那にはまいっちまうよなあ?」
ジョニー達は乾いた笑い声を上げる。
「お。そうだ! センテ! 泣いて喜んでくれるのは嬉しいんだが…早速頼んでもいいか?」
「おお…女神よ… え?」
その夜、新たに創られた信仰の象徴。神殿では夜通し火が焚かれた。その神殿に集まった住人達はセンテからこの世の成り立ちや女神・歴史…そしてそれに基づく信仰の心を解かれた。理解できない者がやはり大半であったが、その女神の使いであるザインを目の当たりにしているのだ。それらを信じられないような者は子供を含めてもいなかった。むしろ、ザインこそが救世主というセンテの言葉に感銘を受けた住民達はその喜びに涙すら流してセンテの話を請い、センテもまた「これで…この世界はきっと救われる。暗黒の時代は必ず終わります…!全ての種族の子供らが誹りを受けず、誰もが手を取り合って暮らせる世界が…!」と涙を流して女神像に祈りを捧げたのだった。
それを察することができる者は神殿に集う者達の間で奔る淡い光のようなものを微かに感じられただろう。
マユは満足そうにその様子を柱の上から伺っていた。
「ザイン様…今日はお疲れ様でした…」
「むにゃ… キナ…早くお前を… できるように… ぐう」
「………そのお気持ちだけで、私は幸せですよ? …ザイン」
その神殿の火の灯りが微かに届く部屋で、キナが微笑んで眠る男の頬に唇をそっと触れさせた。
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翌朝。ザイン達は遺跡のアーチ門の前で立ち尽くしていた。
「…ヤバイ。城壁が創れない…俺の混成魔法だけじゃあ…?!」
そこには頭を抱えたザインが居た。




