要塞化・女神復活の準備
小説のヒントを得ようと超久々にスカイリムで遊んでたら、週末が終了していたでゴザルの巻。
ところ変わってここは【パアルス遺跡】のほぼ中央。周囲からは"王の巣"と呼ばれる建造物の最上階にある円卓の置かれた広場だ。ザイン達はここを今後の方針を決める会議室と使うようにと話は収まっていた。
ザイン達はセンテとの邂逅を果たし、再びこの場へと戻ってきていた。
「え~ゴホン。 じゃあこれからどうするか、皆の意見を聞きたいと思う」
議題は…
1.この遺跡の要塞化
2.【信仰】の復活について
3.他の要塞との接触
以上。細かい事を省けばこのあたりだろう。
「ん~とまあ、まずここの要塞化についてだが…こりゃあ単純に脅威からの防御だな。この遺跡は基本外部からはむき出しだし、いくら見張りを立てても隙はできるし…だからひとまずここら一帯を壁で覆う。本来の城壁とかの厚さとか高さとか俺はどうすればわからないから創るだけ創って後の調整は爺さんに丸投げになる。いいかな?」
「そうですな。ですが、この遺跡全体を囲うともなると…かなりの広さになるかと思いますがの?」
「う~ん。1平方キロメートルくらいは流石にありそうだしなあ。取り敢えず1辺を1キロに四角く囲おう。まあ実際にその辺はやりながら…検討してこうぜ? あ。あと皆の家も並行して創るからな」
周囲からおお~!と感嘆の声が上がる。
実質、ザイン達が去ったのを見計らってなのか山賊の一団がこの遺跡に残った家族を襲った。何とか日帰りで帰ってきたザイン達が間に合い、死傷者は誰もでなかったのが幸いだ。山賊共の生き残りは身包みを含めた全財産を没収した上、遠く離れた荒野に捨ててきた。
「まあ、ザイン殿ですからの…」
何故かひとり頷くナットー。釣られて他の面々も頷く。
「でだ。次に2の【信仰】の復活だが…」
「はい。使徒様…ここは私が」
この場に新しく加わった者がいた。それは寺院跡地からこの遺跡へと付いてきた聖職者センテであった。寺院に残した子供達の面倒は彼の弟子であるチュカンと何故かちゃっかり残る事を決めたジョニーの娘サンタナが見ることになった。定期的にこの遺跡から寺院に様子見の者を派遣してやり取りする予定だ。
「…女神の復活には儀式が必要なのです。つまり儀式を執り行う為の場所、"神殿"と女神を降ろすための"巫女"が必要になります。幸運なことに天使様から、そこのキナ様が巫女としての条件を満たしているとのお言葉を賜りました」
センテが微笑むと、この場に居る者からの視線が集中したキナが顔を赤らめてうつむく。
「儂の孫のクラスである【踊り子】がこんな形で女神に貢献できるとはのう。この娘の母親も喜ぶであろうな。自身と同じクラスである娘が女神復活の儀式を執り行うの誉れをのぅ…」
そう呟きナットーは鼻を擦る。
だがザインは、円卓の中央で胡坐をかくマユに訝し気な視線を送る。
「マユ…本当にその儀式とやらは、キナには害はないんだろうな? もし、何かあったら…」
「へ? もちのロン★っスよ~? まったく心配性なんスから~。彼女にやって貰うのは神前で踊って貰うだけなんスってば! それに彼女のクラスなら練習とかも必要ないから体を借りるだけ…ってヤバ!?」
「…体を、借りるだけぇ~? その話、もうちょっと詳しく聞こうじゃあないか。ん?」
「いやだから絶対彼女には悪い事にはならないっての★」
「使徒様。お気持ちはわかりますが…天使様もこう仰っておりますし。それに女神を復活させるのは急ぐべきかと、私も愚考いたします。どうか…!」
そう言ってセンテは膝を付いてしまった。周囲の者もその姿に慌てている。
「…センテ。無理もあるまいよなぁ。ザイン殿もアレをご覧になったでしょう。…あの地獄はあそこでけではないでしょう。それこそ世界中で溢れているかと。…儂とてこのセンテと同じ思いなのです…どうか儂らの願い…叶えて下さいますでしょうか…」
「ナットーさん。あの朝、ザイン様と一緒に何を見られたのですか? ザイン様も朝どころか昼も何も食べませんでしたけど…」
「若いの。お主は知らんでもよいことかもしれん。…地獄はのぉ、地獄はあるのだよ…」
ナットーが顔を顰め、尋ねてきたボンレスを見ゆる。
ザインもまたあの日、昨日の朝に見た光景を思い出していた…
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チュチュからやっと解放されたザインの下を、杖をついてナットーに支えられたセンテが訪れていた。ザインはやややつれ、首元には無数のあざのような痕が残っていた。それに比べてチュチュは機嫌が良く艶もすこぶる良い。鼻歌を歌いながら空中でアクロバットを繰り返しており、無邪気な子供達がそれを指さしてはしゃいでいる。
「…ザイン殿。大丈夫かの? あの鳥娘はなかなか大変であったようだのぅ…」
「…うん、まあ」
頭を上げたセンテが口を開く。
「私の体調が万全であれば多少は心を軽くすることができたのですが…」
「いやいや、それには及ばないよ? 流石に精神魔法を掛けてもらうほどじゃあないしな…昨日はちょっと彼女が激しかっただけだよ」
首をさするザインを彼の背中からユキムシが何とも言えない表情で伺っていた。
「…礼はしたりませんが、使徒様に厚かましくもお願いがあるのですが…どうか聞いて頂けませんでしょうか…」
「うん?」
「…使徒様に一緒に見て頂きたい場所があるのですが」
「…センテ、お主…!」
「そんな事なら別にいいけど?」
「…感謝いたします」
センテは深く頭を下げた後、近くにいたチュカンを見やる。
「…チュカン。これからカタコンベに使徒様をお通しします…!良いですか、決して子供らが入り込まぬよう注意して下さいね…」
「せ、センテ様…わかりました…」
チュカンの顔色が良くない。
「センテ様どこ行くの~?」
「あ!お墓に行くの? 危ないよー」
「夜はずっとオバケが叫んでるし…」
止める子供達にセンテは微笑む。
「…大丈夫ですよ。私には友や使徒様もいるのですからね? あなた達は決して入ってはいけませんよ? 女神様の声を聞こえるようになった大人しか入ってはならない決まりなのですからね? フフ…よしよし皆、良い子ですね…」
頷く子供達の頭を撫でたセンテに誘導されてザインとナットーは寺院裏手の古びた扉を開く。
「キナ。チュチュ…子供達を頼んだ」
「はい…お気を付けて」
「敵来なイカ見張てルヨ!」
地下は暗闇を讃え、湿気ではない別の嫌な感触がザイン達の悪寒を誘う。
センテの魔法なのかザイン達の体の周りだけが明るく照らされている。
「…ここは?」
「…カタコンベなどと呼ばれる場所ですが、古い地下墓地のようなものです。…ですが、もはやこの場所で安らぐ死者などいないでしょうが…」
ナットーも何かを察したのか表情が暗い。それと地下に潜って通路を進むたびに…風の音だろうか?
なにか低い唸り声のような音がする。
「…使徒様。かつて管理していた女神がこの地からお隠れになり、"死者の門"が閉ざされ地上は死者の魂で溢れてしまっています。…アンデッドになった人間が解放されずに最後まで辿り着いてしまった様をご覧になったことは?」
「……ないが。 …どうなるんだ?」
センテは微かな笑みすらその表情から消した。
「死ねなくなるのです。永劫に…どのように肉体が破壊されようとも決して…そろそろですね。止まって下さい。これ以上は進めませんから…」
気付くとほんの数歩先に穴が開いていた。この響き渡る耳にこびりつく音もそこから聞こえるようだった。
「すみませんが、ここでは火を起こせませんから…ナットー頼めますか?」
「…うむ。"灯火の創成"」
ナットーの片手に輝く光線が収束して3寸ほどの光の束となる。それを足元の穴に向かって放り投げた。
光はゆっくりと周囲を照らしながら地面へと着地した。
「う!? こりゃあ…」
「使徒様。これが地獄です…」
穴は大きく深さは数十メートル、直径百メートル以上はあった。
しかしその床は常に蠢いていた。
それは無数の人間らしきものの肉片だった。
風の音などではない!音はもはや声さえ出せないもの達の呻き声だったのだ…。
「もはや、救えなかった者は無力化する為、このような惨い姿にしてこの場に捨て置く他ないのです…!…使徒様、彼らを救う方法はないのでしょうか…!」
センテは涙を流しながら頭を下げ続ける。
「俺には多分無理だ。恐らく消し去る事はできるが…恐らく魂とやらは解放できない。下手すりゃあ一緒に…とにかく外に出ようぜ。あんたも見ることのできるマユ…ってアンタの言うとこの天使だが、アイツは空と繋がった場所じゃないと呼べないんでな」
「センテ…そう嘆くな。お主はただただ、この者らを救いたかっただけであろう…!」
涙を流して嗚咽するセンテをザインとナットーが抱えてこの地獄から地上へと戻った。
「…死者の門…スかぁ。…上位の女神のひとり、土の女神ゲートキーパー様でなければ解放は出来ません…残念っスが…ウチに死者を救えるほどの力は…」
申し訳なさそうに腕を組んで宙を浮かぶマユにセンテが膝をつく。
「そうですか…天使様の力でも、今すぐに彼らを救うことは無理なのですか…」
「でもよ、マユ? その【信仰】とやらを取り戻せれば、いずれその女神様も復活できんだろ?」
「そりゃあもちのロン★」
「…仮にもお前さあ、俺以外にも見えるようになったんだから、こう…まあいいや。という事だセンテのジ…いやセンテでいいだろ? 諦めるのは早いぜセンテ!」
センテが顔を上げる。
「俺の目的はその女神を復活させることなんだ!ならアンタと目的は一緒だろ? さあ、さっさと遺跡へ戻るぜ! だからアンタにも俺の手伝いをして欲しい。俺と一緒に一度遺跡まで来て、爺さんと一緒に知恵を貸してくれないか?」
ザインは手を差し出した。そして、その手は力強く握り返されたのだった。
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ザインは頬を掻く。
「まあ、別に反対はしないぞ? …キナ、いいのか?」
「はい!ザイン様のお力になれるなら…!」
「そっか、ありがとな」
ザインはキナの頬を軽く梳いた。
「後は神殿ですが…ナットー」
「うむ。ザイン殿…これは儂がセンテの神学と擦り合わせて描いたものなのですがの」
ザインの目の前に数枚の紙が置かれた。その紙もザインが混成魔法で創成した白い紙だ。前世界のコピー用紙を模したものだが、この世界にはそんな真っ白い紙は存在しなかったのか、ナットー達がえらい悲鳴を上げていたのが記憶にまだ新しい。
「ほうほう。階段のついた台座。柱に覆われた四角形…まんまパルテノン形式だな。 ん? この中央奥の像と石室は?」
「そこは各儀式で使う重要な箇所になります…像はザイン様がおっしゃった【大女神ホーリー】様を模したものを創って頂ければと…!」
「そうなんだ。よし!とにかく壁と並行して進めていこう。基本の土台は俺が創るから爺さん達は監修してくれ」
周囲から是の返答が返る。
「あとは…あ~そうだセンテ。神殿がおおよそ完成してからでもいいんだが、住民に先ずこの世界の成り立ちっつうか女神の存在とか色々教えてやってくれないか。単純に子供らに教えるくらいのノリでもいいからさ」
「いいえ、使徒様!このセンテ、女神の慈悲と使徒様によって救われたこの命。全力で務めさせて頂きます…!」
「ま、まあ程よく頼むぜ? まだ病み上がりだろーしな…んで最後に3の他の要塞との接触だが…これは保留にしようと思う。まあ足りない物資が多いが他の所から賄えるかっていうとなあ~…ええと爺さん、その近くの要塞って」
「【フージ】ですな。中立の要塞という建前ですがのう。そこまでガラの良いところではないと思いますしの。それにあの要塞は賞金稼ぎ多い…」
全員、特にジョニーやウルフ達が目を閉じて黙ってしまう。
どうあがいても、実質ジョニー達は山賊であるし、ウルフに至っては賞金首だ。その所在が知れれば、賞金稼ぎが嬉々として襲ってくる可能性は高かった。
「…余計な敵は増やしたくない。先ずはこの遺跡を要塞化する!これは決定事項だ。とにかくこれから神殿と壁。余裕があったら余計な建物は更地にしたり、新しい家とかも創るぞ! ウルフ!男達に昨日作ったスコップとか道具持たせて遺跡の~ああ、あのアーチ門の近くに集めておいてくれ! センテと爺さんは俺と一緒に神殿の土台を創る場所探しな! おっしやるぞ! 解散っ!」
「「「おうっ!」」」
皆、ザインの言葉を皮切りに勢いよく席から立ち上がったのだった。




