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山賊の王  作者: 佐の輔
第一章 新しい仲間
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カタコンベ 【チュカン視点】


ブックマークと評価ありがとうございます!


励みます!


 拙僧の名はチュカン。

 修行中の身の上だが、物心つかぬ幼子の時にセンテ様に拾って貰ったモンクの男だ。

 センテ様は拙僧らにとっては育ての父以上であり、この世で最も尊き御方だ!


 センテ様の弟子を名乗る拙僧であるが、日々自身の無力さに嘆くばかりだ。先日もモンスターの肉を得ようと狩りに出たのだが、ブルーチキンの群れを見つけたまでは良かった。が、不用意に近づき過ぎたのか同じくブルーチキンを狙う別のモンスターの群れと戦うはめになり、結果は手傷を負って逃げ帰ることとなった。


 センテ様にも寺院に匿う子供達にも心配を掛けてしまったが、一番の失敗はサンタナを泣かしてしまったことだろう。サンタナは亜人の娘だがとても心が優しい乙女だ。そんな彼女が寺院に訪れた際に拙僧の手傷を見て悲しませてしまったのだ。それに憤慨したサンタナの父親であるジョニー殿がサンタナを連れ帰ってから暫くサンタナとは会ってはいないな。はあ…これも拙僧の修行が足りぬからだ。精進せねば!


 それから暫くして、寺院跡地の高台から日課の偵察をしていると、遠方から土煙が上がっているではないか! それも見たことも無いモンスターが人間を乗せた箱を曳いてもの凄いスピードでコチラ目掛けて移動している。


 …信じられん!その箱と並走しているひとりは恐らくハルピュイアのような飛行種族だと思われるが、もうひとりは平然と地を足で蹴って進んでいる。ただ者ではない!?


 拙僧はすぐさま子供達を寺院裏のキノコ畑である洞窟へと隠すとセンテ様にも逃げるよう説得を試みるが、首を立てには振ってはもらえない。

 

 最近のセンテ様はますます体調が悪くなられておるようだ…そこに不届き者共を近づけるわけにはいかぬ!最悪相手が野盗の類であれば拙僧が打って出るしかない。


 そして件の連中はやはり寺院の前まで辿り着いてしまった。多勢に無勢。せめて兄弟子であるゴテ様がここに残っておられれば…!決死の覚悟で相手に姿を見せて問いただす。

「何用だ」

「チュカン様!」


 驚いたことにそこにいたのはサンタナだった。聞けばセンテ様の古きご友人をお連れしたとのこと。そのご老体の見事な礼拝に拙僧は慌てて膝を付き無礼を恥じる。

 良かった…!敵ではなかったか。

 …それにしても驚いたの恐らく拙僧と同じくヒューマンの黒髪の男。見た目は寺院の子供らよりは少し歳が上くらいの少年に見えるが…雰囲気が常軌を逸している。おまけに背後の護衛はまるで影のようにピッタリと少年に張り付いておりまるで隙が無い。


 しかし、そのザインという男は大変に器の大きな男であった。大量の貴重な食糧を惜しみも無く我らに与えて下さったのだ。拙僧は感謝の念に押しつぶされ、何度も頭を下げることしかできなんだ。



 しかし、その時がやってきてしまった。これも女神の慈悲なのであろうか?


 センテ様が礼拝堂にて友であるナットー様と会話をしていると突然苦しみ出された。

「センテ!?」

「ぐはっ…」


 センテ様が血を吐かれた事は前にもあったが、ここまで黒い血を吐かれたのは初めてだ!?

 しかも、センテ様の皮膚をおぞましいものが這いずり回っている!


「センテの弟子よ!早くザイン殿を!」


 拙僧も恥ずかしい事なのだが、そこからはよく覚えておらなんだ。よほど心を乱しておったのだろうな。全く持って修行が足りん…。


 呪いの毒に蝕まれ、もはや死にいく拙僧らの父にできることは無いと絶望していた場でザイン様だけがセンテ様に治療を施すと声を上げられた。


「ただ、彼の肉体は限界だ。身体からエーテルを全部掻き出しても、助かるかはわからない。爺さんとチュカンは手伝ってくれるか?」

「勿論、微力ながらお供いたしますぞ!」

「拙僧めも!」


 幻覚すら見え始めたセンテ様には一刻の猶予も無い!拙僧はザイン様がおっしゃる通りにナットー様と共にザイン様の身体に向かって魔力を流し続けた。


 結果としてザイン様の治療は成功した。


 とても信じられぬのだが、ザイン様は気を失われたセンテ様の胸に両手を突き刺したが一滴たりとも血は溢れはしなかった。何かを探る様に暫くその状態が続くかと思った矢先にセンテ様の胸から巨大な黒い塊を引き抜いたのだ!そればかりかそれを一瞬で消し去った。


「いやあ~爺さん達がいて助かった! 俺だけじゃあ魔力が負けてエーテルを吸い寄せることができなかったからな。…しかし、よくもまああんだけ体に貯め込んで生きてたもんだなあ」

「ザイン様!で、では…」

「おう。無事成功したぜ? まあ、血は増血するようにはしといたが…体力的な問題は残るから、暫くは安静にさせとけよ?」


 拙僧はセンテ様の安らいだ顔を見た瞬間滂沱の涙が溢れて止まらなくなった。


「あ゛ぅ…ざ、ざあ゛ぃ゛ん゛ざまぁ゛…!せ、せっ゛そう゛あ…なん゛とれい゛をもう゛せば…!」

「お、おういいってことよ。取り敢えず腹が減ったぜ、さっさと下に降りよう?」


 拙僧はただ無様に泣きむせぶ事しかできなんだ。

 誠に感謝の念しかない!もはや拙僧の命をもってしてこの大恩に報いましょうぞ。


 子供達はセンテ様が気になって飯も食わずに我らを待ちわびていたが、センテ様の無事を知ると飛び跳ねて喜んだという。


 拙僧はこんな泣き腫れた顔を皆に見せるわけもいかずにひとり寺院跡地の外れにて呆けていた。

 日が遠くへ沈んでいく…。



「…はあ」


「……チュカン様?」

「な!? サ、サンタナさん何故ここに!」

「その…食事を取りにもこられないチュカン様が心配で…」


 拙僧はなんと情けないのか。

 思わず拙僧を心配してくれた彼女に背を向けてしまう。

 …こんなことでは!この先、センテ様を…子供らを…そして、彼女を守ることなど拙僧にはできるのであろうか?


「………」


 サンタナが拙僧の背中にそっと身を寄せる。


「…!? サ、サンタナ…さん」

「……辛かったのでしょう?」

「…子供らは?」

「みんなお腹が一杯になったらすぐにイビキをかきはじめてしまいましたよ?」

「フッ…本当に拙僧は、ザイン様には頭が下がるばかりだ…無論、サンタナさん達にも感謝しているが」

「…その眼」


 サンタナがそっと拙僧の頬に触れる。


「情けない姿であろう? 父と慕うセンテ様をお守りすることも、癒すこともマトモに出来ぬ男だからな…」

「そんなことないっ!」


 サンタナが潤んだ瞳で拙僧を見つめる。…イカン!センテ様がまだ病床に臥せっておられるというのに、拙僧は何を…


「助けてくれえぇ~~~~!?」


 そこに突然、絹を裂くような男の悲鳴が上空から聞こえた。


 ザイン様だった。


「クフフ…!今夜こそハ、アタシと番ってもうヨ! ザインを今夜だけハ独占デキル約束ネ。誰にも邪魔できナイ、どこか高い崖の上までデートネ! ア。ユキは今回ばかりハ、ザイン助けナイヨ? 呼んでも無駄ネ」

「ユキムシィぃいぃぃ~~~~~!?」


 とても幸せそうな顔をしたハルピュイアの少女の脚で肩から脇の下をガッチリホールドされたザイン様が空へと連れ去られる。

 …その後を装束姿の少女が何とも言えない眼をしながら追って行った。


「……さあ、もう暗くなる。火が焚かれた場所まで戻ろう」

「……イヤ」


 困ったことにサンタナは頑なにこの場を離れようとはしてくれない。それどころかそっと目を閉じてその身を委ねてくるではないか!…もはや、これまでか!?


「………あ~すみませんが、チュカン? 少しいいかな…?」

「「はぅあ!?」」


 拙僧らは痙攣したように飛び跳ねたあと急いで離れる。


「センテ様!? もうお立ちになって良いのですか!?」

「センテ…お主ものう…昔から融通がきかぬのも変わらんのう。何も若いふたりの逢瀬を邪魔することはあるまいよ…?」


 センテ様の身体を支えるナットー様が白けた顔を向ける。


「ああ、いやいや…どうぞ続けて下さい。私はナットーに寝所まで連れて戻って貰いますからね」

「「…………」」


 拙僧とサンタナは互いに顔を赤くして身動きできずにいた。


「それにお主が礼を申したいという当人のザイン殿は女達に連れ去られてしまったようだぞ?」

「仕方ありませんね…チュカン、申し訳ありませんがザイン様が戻られたなら伝えて欲しい事があるのです…此度の礼は改めて私が直にさせて頂きますが…」

「ほ、他には…」


 センテ様は笑みを消されて拙僧に答えた。



「ザイン様には…共に見て頂かなければならないのです。寺院の地下…カタコンベの奥にある、この世の地獄を…!」



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