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山賊の王  作者: 佐の輔
第一章 新しい仲間
21/35

男と熊の闘い

ちょっと短い。


あと、ウルフのセリフが読みづらい(でも直さない)


「…くま(・・)ァ? おれノ名前ハ、うるふッ!! 強大ナ、巨人ノ血。偉大ナ、大狼(おおおおかみ)ノ血ヲ引ク戦士ダッ!!!!」


 武装した亜人達を押し退け、ザインの前に立ちはだかった巨大な男が力強くそう名乗りを上げた。

 ウルフと呼ばれるその男はザインと比べると、まるで大人と子供ほどの差ではきかない体躯を揺らし、敵対者であるザインを睨みつける。背中にはまるで岩そのものから削りあげたような巨大な棍…いやもはや柱の如きものを背負っている。


「おわっ…図体もデカイが声も腹にズンと響きやがる。…イヤ、しかしまた凄いのが出て来てやがったな~? …一昨日の筋肉ダルマの比じゃなさそうだ… かなり強い(ヤル)な…!」

 ザインは頭を掻きながら、佇まいを直してウルフを睨み返す。


「コチラこそ改めて名乗ろう。俺の名はザイン!…いくら言っても無駄かもしれんが、アンタらに害をなそうとは思っていない。それにアンタらの家族をここから追い出そうとか、代わりにものを分捕ろうなんて気持ちもないぜ。…んで、クm、じゃなかったウルフとやら、お前さんがここのボスって事で間違いないんだな?」

「…アア、ソウダ。オ前ガ、何者カハ知ラン!ダガ、ミズカラ山賊(・・)ナドトヌカスヨウナ奴ニ用ハナイッ!!オレノ家族ヲコレ以上、危険ニサラス訳ニハイカネェ…見逃セバ、仲間ヲ呼ンデ攻メテクルカモシレンカラナ? ココカラ、タダデ返スコトハデキンゾォッ!!!!」

 ウルフは背中の柱を片手だけで、まるで軽い竹の竿でも振り回すかのように頭上で回転させる。それだけで周辺の風が大きく薙ぎられ、小石がまるで雨のように飛び散る。そしてそのまま柱を地面にズドンっと打ち付けた。その衝撃はザインの馬車を玩具のように揺らし、後ろの遺跡すら動かしたかのようにすら思えた。


「…おお!スゲー馬鹿力だこと。あんなので殴られたらどんな奴でも木っ端微塵だな…!」

「チョット!あんまり余ユーこかないほうがいいっスよ★ あのデカイの多分、"トロル"だよ…」


 ザインの背中にフワリと褐色の少女が飛び乗る。彼女、天使のマユはザイン以外には不可視の存在。もちろん、その声を聴くすべもまだない。


「トロルぅ~? ああいうのが俗に言う獣人ってヤツじゃあないのか?」

「ソレが違うんだなぁ~★ 獣人はれっきとした人間種!イメージ的には人間からケモっぽくなっただけなんだよね。だから能力値だってあんまり違いがないんだよ」

 ザインはマユの声に訝し気に反応しながらもスキル【極値(マックス・アポーツ)】を使用する。


☛スキル【極値】により【洞察力】が100に変化。

 スキルを継続する限り、他の能力値が1に変化。


「鑑定」



∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴

ウルフ:男:19


山賊/レベル20 属性:-・・■±・・・+(混沌)


【攻撃力】15    【防御力】10  HP 100/100

【生命力】15+10 【敏捷性】04

【魔 力】00    【精神力】04  MP:なし

【技術力】03    【洞察力】04

【注意力】08    【魅 力】08


スキル:【強奪】【毛皮】【爪牙】【妖巨人】

∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵


 【毛皮】

 パッシブ。身体を覆う厚い毛皮により【防御力】+5、冷気耐性。

 【爪牙】

 パッシブ。生まれ持った鋭い爪と牙により武器以外の攻撃+5

 【妖巨人】

 パッシブ。脅威の生命力を誇るトロル種のユニークスキル。

 【生命力】+10。HPの最大値が【生命力】の4倍になる。



「げっ?! HPがヒャクとかっ!俺の通常値(デフォルト)の5倍もありやがるぞ…?」

 ステータスを見たザインは流石に冷や汗をかく思いであった。


「【妖巨人】のスキル持ってるでしょお? それは亜人種のトロルのユニークスキルなんだケド、それにあの見た目…恐らくトロルとモンスターの混血だと思うよ?」

「えっ?モンスターとの混血って…コイツ、モンスターなのかよ?」


 ザインの問いにマユは首を振る。

「イヤイヤ違いますッスよ? 肉体の組成にオニキス、いわゆるエーテルを持たないモンスター種って呼ばれるハイ・ウルフだと思う。知性は人間より高いくらいだし、何より人間の姿に変身できたはずだし★ 限りなく亜人種だね。いわゆー半魔半亜人ってヤツかも」

「フーン。モンスターにも色んな奴がいるわけか…面白れぇな」


 ザインは目の前のトロルと狼のハーフである男、ウルフに興味を持った。その表情には軽い笑みすらあった。

「フン! コノ棍ノ威力ヲ見テモ、怯ミモシナイカ。胆ガスワッタヤツダ…!」


「…?! やはり何かおかしいんじゃあ…アイツ、急に弱あなったり、強おなったりしおるようにめえる。…わての眼がおかしぃなってないなら奴ぁ"自分の能力値をかなり自由に変化させるスキル"を持っとるかもなぁ」

「ユキムシ、そりゃマジか!? ウルフっ!迂闊に手を出すなっ!ソイツはただの狂人じゃあねえぞ!」

 ウルフの後ろからゴブリンの男が叫ぶ。


「…驚いたな。あの忍者のコ、俺のスキルに気付いたのか? 恐らくスキルか、ステイタスを鑑定できるほどの【洞察力】の持ち主か…厄介だな」

「あの忍び装束も亜人だと思うっスね★ 多分、下手したら目の前のクマさんより強いかも」

 ザインの視線はウルフの奥にいる装束を纏った小柄な人物へと移る。その姿はまるで異世界版忍者とでも言うべき姿であった。

 

「今の凄まじい揺れはいったい?! キナ、無事か!」

「ザイン様!」

 流石に先のウルフの棍による地震に驚いたのか、馬車の中に居たナットーとボンレスが転げ出てくる。


「なっ!」

「うわぁ!」

 ナットーは自分達を取り囲んでいる亜人達に強い警戒を示し、ボンレスはウルフの巨大さに驚いて腰を抜かしてしまった。


「…えるふノジジイニ、ドーミテモ山賊(・・)ニャア見エナイ腰抜ケ? ホントニ何デコンナ場所ニキヤガッタンダ?」

 ウルフがナットー達を見下ろし唸る。周りの亜人達も最初は馬車の中から新手が飛び出したかと武器を構えたが、今では疑問の視線を向けている。


「あ~あ。出てきちまった。アンタが驚かせるからだぞ? キナ、お前の弟はどうだ?」

「は、はい。その、まだ寝ています…スイマセン」

 御者台の窓から中を覗いたキナが顔を赤らめて俯く。


「ハハハっ!エダマノは将来、大物になれるぞ。…さて、じゃあエダマノが目を覚ます前に片付けるか。あ~!荒っぽいことは嫌なんだけどなぁ~」

 

 ザインは諦めたような表情をすると、何の躊躇も無くウルフへと歩み寄る。

「なあ、ウルフ(・・・)。ここはひとつ、俺と勝負しないか?」

「アァ? 勝負ダトォ?」


 ザインはニヤリと顔を歪める。

「そうさ。アンタを()と見込んでの勝負だよ」

「…フ!フワァッハッハァ~!! …オレヲ見込ンデ、勝負ダト? 山賊(・・)ノ!シカモ、賞金首(・・・)デアル、オレニカッ!ファハハッ!! 笑ワセルナヨッ!!?!」


 ウルフから怒りを帯びた咆哮がザイン目掛けて放たれるも、ザインは歯牙にもかけない。


「…なんだ。それじゃあお前らも…その家族も、そこら辺にいる山賊のクズ共と同じってことか? ガッカリだなぁ~」

 そう言ってザインは俯き、大袈裟に溜め息をついてみせる。


 ピクリ。


「…ナンダトォ?」

 ウルフの怒気がより強くなる。さらに、彼の後ろの控える亜人達からも怨嗟にも似た憤りすら感じた。


「ウルフ。アンタらなら堅気の連中に惨い真似まではしないはずだ。違うか?」

「…………」

 ザインはバッと顔を上げると、ウルフの眼を真っ直ぐに見つめる。


「俺とアンタ、素手でサシの勝負といこうぜ? 俺が死んだら、俺の持ってるモノは全部くれてやる。コレは奪っていいと言ってるんじゃあないぜ。アンタらに譲り渡す(・・・・)と言っているんだからな? 先に宣言してんだから、これから俺の財産をどう扱おうがアンタの身内のクラスが山賊とかに変わることはないだろ。…ただ、ひとつ条件がある。ここにいる俺の連れの面倒を見てやって欲しい。最悪、この家族の身の安全は保障してくれ。なに、爺さんは魔法が達者だし、ソイツは気が弱いが便利なスキルも持ってるし恐らくアンタらとも上手くやっていける。…そういう心根を持っているヤツだ」


 ザインが発した言葉に場は騒然とする。これには流石のウルフも口を閉ざしてしまった。


「ザイン様っ!」

「ザイン殿!早まりなさるなっ!貴方様には生きて果たすべき使命が、儂らの悲願を叶えて下さらなければならぬっ」

「ザイン様!ぼ、僕も戦いますっ」

 ザインのもとにナットー達が縋り付く。キナは既に大粒の涙を流してすらいた。


「オイオイ。万が一だよ? マ・ン・ガ・イ・チ。安心しなよ、俺は負けないからさ…」


 ウルフ側、"狼の歯"の面々もざわついていた。

「…呆れたヤツだぜ。正気とは思えないぜ?」

「ああ、あのウルフを相手に素手(・・)だと? 何を考えてやがるんだか」

「しかしだ、アイツらが乗ってた変な箱?を素直に差し出すってんなら得じゃあねえのか? それにあの半獣人の子、かなり可愛いし…」


「お前らっ!静かにしなっ!!」

 片手剣を収めたゴブリンの男が声を荒げて仲間を諫めた。そして、ウルフの言葉を静かに待った。


「…本気ノヨウダナ。ナニガ、狙イダ?」

「ん? いや特には… ああ、イヤ違うな。俺に負ける気がコレっぽっちもないようだしなぁ~…俺が勝ったらそうだな、お前(・・)がいいな…!ウルフ、お前を貰うとしよう!(俺の手下にでもなってもらおうかな?)」

 そう叫ぶとザインは腰にあった【ストレージ】を外してキナに放り渡し、上着と靴を脱ぎ捨てズボンだけとなって拳を構えた。


「ファ、ファウハハハッ!! ヤハリ、オレノ首ガ狙イカッ! …ダガ、気ニ入ッタ!! ソノ勝負、受ケタゾッ!小僧ォォォッ!!!!」

ウルフは手にした巨大な棍を投げ捨て、身に着けていたプロテクターを乱暴に取り外した。


「待つんやぁっ!ウルフ相手に乗るなっ」

「ウルフが素手の勝負で負けるか!」

「やれ!ウルフっ!黒髪をぶっ飛ばせっ!」

 装束に身を包んだ少女?とゴブリンの男がウルフの身を案じたが、他の仲間達はウルフの勝利を確信しており、一気に囃し立てた。



∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴∴

ウルフ:男:19


山賊/レベル20 属性:-・・■±・・・+(混沌)


【攻撃力】05    【防御力】05  HP 100/100

【生命力】15+10 【敏捷性】04

【魔 力】00    【精神力】04  MP:なし

【技術力】03    【洞察力】04

【注意力】08    【魅 力】08


スキル:【強奪】【毛皮】【爪牙】【妖巨人】

∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵∵



「装備を外してもコレかよ…? だが生憎、負けるとわかって挑む勝負はないんだなコレが。…それとお前、19って…ボンレスよりも年下じゃあねえか? 俺、44だよ? …俺は小僧じゃあねぇぇぇぇぇぇェェ!! さん(・・)をつけねえか!このクマスケやろおぉぉォォォッ!!?!」

「グオオオオオォォォォォ!!!!」


 こうして拳を付き合わせたゴングによって"闘い"の火蓋は切られた。




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