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山賊の王  作者: 佐の輔
序章
2/35

大女神との交渉 【ザイン視点】


【勝手に解説】ステータス編②


【攻撃力】

攻撃する力や能力。主に武器を装備・訓練することで変化する。

 -1~3

 白兵としては戦力外レベル。0は素手の状態と同じ。-1は攻撃不可の状態。

 4~10

 一般レベル。それなりの武器を装備した状態に等しい。

 11~19

 達人の域に達した武芸者が武器を扱うレベル。常人相手ならば一撃が致命傷となる。

 20以上

 伝説級の武器を装備し、使い熟せているに等しい値。

※100(極限)

 絶望的な暴力。あらゆるものが消し飛び、消滅する。


【防御力】

敵の攻撃などを防ぎ守る力。主に防具を装備・訓練することで変化する。

 -1~3

 0は裸同然の状態と同じ。-1は物理を無効化している状態。

 4~10

 一般レベル。一端以上の防具を装備した状態に等しい。

 11~19

 致命傷となるような一撃すら耐えることが可能。巨大な岩や大木に等しい耐久力。

 20以上

 伝説級の防具を装備しているに値し、生半可な攻撃など跳ね返す。

※100(極限)

 絶対安全神話。何者もそれを傷付けることはできない。


「なっ…何をおっしゃってるんですか?! 貴方はっ!? 魂が消滅させられても良いと言うおつもりですかっ」

 俺の異世界担当だという女性は動揺というよりは怒りの表情を浮かべている。まあ確かに自分の仕事をポカにしようとする男が目の前にいればそうなるか…でもな。


「そうだ。むしろ消滅したいのさ? 俺はもうこの世に未練…というか生きている理由が無いんでな」

 そう俺が言い放つと彼女は急に表情を変えてしまう。…アレ? 何か涙目になってないか。拙かったかなあ。


「…何故そのような事を仰るのですか」

「俺は確かに死刑になって死んだ。これはハッキリと憶えているんだ。だがなあ、それよりも俺の心を満たしてたのは途方もない絶望と虚無感だけだ。別に自分が死刑になったからって訳じゃあない。俺はずっと前に掛け替えの無い大切な存在を失った。それを奪った連中にはキッチリと肩をつけた…ような気がするかもしれんが記憶が曖昧だな。しかし、俺は自分ができる限りの事を全て成して、死刑になった気がするんだよ。…だから、な? …これ以上、地獄(・・)に居たくはねえんだよ」


 すると彼女は声を震わせ、完全に俯いてしまった。


 あちゃ~。やらかしちまったかな?まだ15、16位のお嬢さん相手に随分と勝手な事言っちまったしなあ。全く自分はとうに40を過ぎたオッサンだってのにな。


「…上から口を挟んで申し訳ありませんが、ザインよ。どうか我らの助けとなってはくれませんか?」

 俺は【大女神ホーリー】の儚く美しいが、余りにも大きい顔を見上げる。


「…もしも我らの悲願を叶えた暁には、貴方が死の間際に願った奇跡(・・)を叶えて差し上げる、と申しても考えは変わりませんか?」


 俺は全身が硬直するのを感じた。余りの焦りからか生唾を思わず飲み込んでしまう。俺は大女神に対して視線を鋭くすると、

「…本当に信じてもいいのか? 俺を… ふ、ふたり(・・・)にっ、…会わせてくれるというのかっ!!」

「【大女神ホーリー】の名の下に約束しましょう。そしてその我々の願いですが…」


 大女神はチラリとまだ泣き止まない彼女を見ると、軽く溜息をついてから口を開いた。

「貴方の転生は既に決まったことなのです。もし貴方が我らの願いを断っても、叶えられずに異世界で生涯を終えたとしても、我らの【シットランド】と共に緩やかな滅びを迎えることとなるでしょう。その時は私達もご一緒しますので宜しくお願い致しますね?」


 そう言って微笑む大女神の顔は徐々にヒビが入り風化しているようだ。

「誠に恥ずかしいのですが、【シットランド】は滅びの道を緩やかではありますが確実に辿っているのです。大地は渇き、海は荒れ、毒が舞い、死の嵐が罪なき民の命を刈り取っています。ですが、この世界で最も失われたもの。それは【信仰】なのです」

「【信仰】? それは大女神(アンタ)さんを信じてない。ってことか?」


 女神は目を閉じて話を続ける。

「そうです。正確には私や私の娘達(・・)を指していますが。…これをご覧になって頂けますか」


 そう大女神は言うと自身の滝のように流していた石の髪を梳いて持ち上げた。

「なっ?! こりゃあ一体…」

 彼女の胸元には幾体もの人間サイズの女神像が縋りついていた。


「我が娘である女神達は既にだいぶ前に力を失ってしまい、女神としての存在を保てなくなってしまったのです。彼女達の力が失われたことで大地と民の人心は更に荒んでしまいました。…全ては民草の管理を怠った我ら女神にありますが、今から千と少し前、【シットランド】は繁栄の時代を迎えつつありました。しかし、その分、力ある者達の争いも増え永い間続きました。そこで強大な権力を振りかざした国の王が我ら女神から与えられる【加護】を独占しようと偶像崇拝を禁止し、民から女神という心の拠り所を取り上げてしまったのです。そして永く続いた戦であらゆるものが壊され、燃やされ、消えていったのです。そしてその国すらも戦の疲弊で滅び去り、いつしか女神を信仰するものはいなくなったのです。辛うじて口伝によってまだ【信仰】は生きているようですが、今の私達には奇跡を起こせるほどの力はありません。それに荒んでしまった心の持ち主から真の【信仰】を取り戻すのは限りなく難しい…」

「そこで、俺の出番という事か?」


 大女神が再び目をゆっくりと開いていく。

「…そうです。貴方には我らの使徒として、【シットランド】の…世界の民の安寧と女神への信仰心を取り戻して欲しいのです。彼らの飢えを取り除き、暴力の恐怖から救って貰いたいのです。そして、その無辜の民の助けとなる為に"神を信じる心"を必ず取り戻して欲しい…」

「…ハッキリ言って、俺はそんなヒーローになれるような器じゃあないと思うんだがなぁ」


「…いいえ。貴方にしか、貴方の様な魂にしか成し遂げられぬように思えたのです。"混沌として善"の心と傷を持つ貴方ならば…!」

「………」


 俺は頬を掻きながら口を開いた。

「…しかしだな。そんな厳しい世界を救うにはそれとなくともかなりの準備がいると思うが?」


 すると未だ鼻声の女性が声を出す。

「…グスっ。そこはコチラからも差し出せるものがあります…。まず貴方のステータスですが、【攻撃力】【防御力】【生命力】【敏捷性】【魔力】【精神力】【技術力】【洞察力】【注意力】【魅力】の全ての能力値を"常人のピークとされる10"にします。これだけで大概の脅威から身を守ることができると思いますし、それとコチラを」

 そう言って袋が括り付けられたベルトを渡してきた。


「これは?」

「その袋は【ストレージ】です。生き物(・・・)でなければどんな物でも貴方が触れさえすれば収納・出し入れすることができます。時間経過による劣化もありません。また、1日毎に100人分までの食糧が補充されます。それで飢えで苦しむ方達を救って下さい。数は微々たるものなので大女神様の御力を取り戻すまでの繋ぎ止めにしかならないかもしれませんが」


 俺は袋を受け取ると早速腰に吊った。彼女は目をやや乱暴に拭うと笑顔を作ってこう告げた。

「では今度こそ【シットランド】を救って下さいますねっ!」










































「だが断るっ!!!!」



 俺は全力で言い放った。



【大女神ホーリー】

 異世界【シットランド】を創造した女神の一柱。

 【信仰】の力を失った彼女は巨大な女神の彫刻と化しており、彼女の娘達でもある【女神】もまた力を失って石化している。滅びゆく世界を救う為、ザインを転生させる。


【女神達】

 【大女神ホーリー】が異世界【シットランド】を管理するために創造した世界の管理者。

 現在、力を失って彫刻と化しているが、ザインが【信仰】の力を取り戻せるのならば、再び息を吹き返し、民を救い、ザインの新たな力となって協力してくれるはずである。

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