第一記録「どうやら違う世界のようです。」
昔昔と言うほど昔でもなく、遠い遠いと言うほど遠く無い未来。
つまり、現代で1人の天然で元気な女の子がいました。
その子の名前は龍崎海李
どこにでもいるOLである。
彼女は一言で言えばおめでたい子で何があってもめげません。
高金額の入った電子マネーを落としても。
「財布を落とさなかったから大丈夫です!」
毎員電車で痴漢にあっても。
「人がいっぱいだったから当たっただけですね!」
身に覚えのない事で上司にあたられても
「お仕事もっと頑張るのです!」
持ち前のプラス思考で明るく乗り越えていました。
ですが、そんな海李でも乗り越えれなさそうな試練が訪れました。
「はれ?」
目を点にしている海李の周りには悪そうな顔に黒のスーツを着込んだ男達が取り囲んでいました。
「れ?れれ?れ?」
無い頭を自分なりに絞込み、めいいっぱい回転させます。
ですが、何も出てきません。
海李はまず。
数分前の事を思い出す事にしました。
数分前、自分は確かに自宅のソファーでテレビを見ていたはずです。
1つ不可解な事があるとすれば、急に体が光り始め目の前が真っ白になった事です。
「ん〜」
数分悩んだ結果…
「やっぱり分からないです。」
何度考えても体か光り周りがマシっ白になる。
光が消えたかと思えばここにいた。
と言う答えしか出てきませんでした。
考える事を諦めた海李は『てへ♡』と笑った。
「なんだ、あんだけ豪快な演出の割には1人しか召喚できねぇのか?」
海李が諦めたとのと同じ頃、一際悪そうな男が吐き捨てるように言葉を放った。
男は赤紙で睨みつけるような目をしており服装はびっしりと言うより少し着崩していた。
恐らく取り囲んでいる男達のリーダーなのだろう。
他の黒服達とは雰囲気が違った。
「まぁいいや、嬢ちゃん。
大人しく俺達と来な。」
男はツカツカと近づきそう言うと海李の腕を掴んだ。
「いたっ…!」
男は海李を女性として見ていないのだろう。
ただただ力任せに腕を掴んだ。
その力の強さに思わず声を漏らす。
「(なんです!?なんです!?)」
ズルズルと引きずられながら?マークを頭にうかべる海李。
そんな海李に構う事なく男は引きずるのを辞めない。
「(なんだかよくわからないですが、嫌な感じがするです…)」
引きずられながらも海李は周りを見回す。
「(やっぱりおかしいです…
怖いです…)」
無表情で見る黒スーツの集団。
そして、しかめっ面で引きずる男に恐怖を感じる。
「いやです!」
そう叫ぶと踏ん張り男から手を振りほどいだ。
「…ってぇなぁ〜」
振りほどかれた手を擦りながら男は睨みつける。
「!!
お、お兄さん達なんなのですか!?
ここは何処です!?」
海李は頭に浮かぶ疑問をぶつけた。
「お前はそんな事気にしなくていいんだよ。
痛い目にあいたくなけれりゃあ、大人しく着いてこい」
男は手をブラブラさせるとまたツカツカと海李に近づいた。
「やです!
誰か!誰か助けて欲しいです!!」
海李は男と距離を取りながら助けを求めた。
「叫んでも無駄だよ。
ここは俺の部下が見張ってるし、建築中の空きビルだ。
ここからじゃお前の声は聞こえやしねぇよ。」
余程よゆうがあるのだろう、男は冷静に話す。
「嫌です!来ないで下さい!」
逃げ惑うも男はどんどん距離を詰めてくる。
「観念しろ!」
男は海李へとたどり着き再び腕を掴む。
「嫌です!離すです!!いや!
誰か!誰か助けて欲しいです!」
暴れ叫ぶ海李。
「きみんの声確かに届いたメレ…」
「え?」
どこからか声が聞こえたのと同時に強烈な爆風が真横を通った。
「がっ!!」
その爆風は男に直撃し、ぶっ飛ばされ壁に激突した。
「え?え?」
またも頭の中が?の海李は声が聞こえた方を見た。
そこには暗闇からゆっくりと人影が見えた。
「嫌がってる女の子を無理やり連れていこうとするのは良くないメレよ?」
おかしな語尾の人影はカツカツと海李達に近づいてきた。
「てめぇ〜…」
壁に激突し倒れ込んでいた男がゆっくりと起き上がる。
「メレメレ、今のを喰らって立ち上がるとは
きみん、只者じゃないメレね。」
ゆっくりと歩いてくる人影に光があたる。
その人影は男性で角の生えたカメレオンのパーカーを着ている。
身長は高いのだろうが酷い猫背で正しい身長は分からない。
右手にはマイクを持っている。
男はスタスタと守るように海李の目の前で止まった。
「てめぇ…掃除屋かぁ」
「そうメレ
きみん達彼女に一体なんの用メレ?」
「お前に教える義理はねぇーなぁー!!
てめぇ等!やっちまえ!」
赤髪の一声と同時に周りの黒服達がパーカーの男に襲いかかる。
「メレメレ
手を出したのはそっちがさ決メレよ?」
そう言うと掌を掲げた。
「風真忍法!竜巻玉!」
強烈な風がパーカー男の手のひらに集まり球体状へと変化した。
その球体を向かってくる黒服の1人にぶつける。
すると球体が弾け、大きな竜巻へと変化し周りの黒服達飲み込んで行った。
竜巻が収まると飲み込まれた黒服達は地面へと叩きつけられた。
余程強力だったのだろう。
男達は立ち上がれそうになかった。
「ちっ!雑魚共が
クソの役にもたたねぇ」
赤髪が乱暴に吐き捨てる。
「さぁ…
後は君ん1人メレ」
パーカー男は赤髪にマイクを向けた。
「…そのパーカー
…そうか。
てめぇ〜影塚鰐だな。」
「だったらなんメレ?」
「ククク
掃除屋最強と言われてるテメェが来るとはな。
こいつぁ気が抜けねぇなぁ〜」
赤髪は急に笑いだしたかと思うと、何かを悟り首をコキコキと鳴らし始めた。
「大人しくする気はなさそうメレな
お嬢さん少し離れて隠れてるメレ」
鰐は赤髪を睨むと海李に優しく微笑んだ。
「熱くなってきたぜぇ!!」
男は急に叫び出すと鰐に殴りかかった。
「勝手に熱くならないでほしいメレ」
鰐は襲いかかってきた男を軽くあしらう…
が、男は続けて攻撃に移る。
すかさず受け止めカウンターに入る。
そういった攻防がしばらく続いた。
「なんです?なんなんです?
なんでこんな事になってるんです?」
その光景を見ていた海李は自分の立たされている状況に恐怖し混乱していた。
あたふたしているとドカン!!と言う大きな物音が聞こえてきた。
音をするほうを見ると赤髪が殴り飛ばされていた。
「さぁ、大人しくするメレ」
鰐はカツカツと赤髪に近づく。
「はっ!本番はここからだろうが!!」
赤髪はそう言うと両手から炎を出し、そのまま鰐に投げ飛ばした。
「メレ!?」
鰐の体は一瞬にして炎に包まれた。
「ひゃはは!骨まで燃えろ!!」
赤髪は燃える鰐を見ながら甲高く笑った。
「はわわ!あの人燃やされちゃったです
です!?あの人手から火を出したです!
なんなのです!」
その光景を見ていた海李は更に慌てふためく。
「風真忍法、風上龍滝」
地面から風が巻き上がり鰐を包んでいた炎を消し飛ばした。
「その角にこの妖気…
きみぃ、鬼メレね?」
赤髪の額には2本の角がいつの間にか生えていた。
「無傷か…やるねぇ…」
「魔道具で力を隠してたメレか…
なんにせよ、鬼と分かれば気は抜けんメレ」
鰐は体全体に力を込めかまえた。
「へぇ…俺の正体が分かっても逃げずに戦うのか?
さすが掃除屋最強だな」
赤髪はニヤリと笑うと鰐に拳を向け踏ん張るようにかまえた。
「ますますわからんメレなぁ
鬼があの子になんの用メレ?」
「だからぁ〜…
答える義理はねぇーーよ!!」
赤髪の拳から炎が吹き出しまたも鰐を包もうとするが鰐はそれを避け高く飛び上がった。
「なら、力ずつで聞くまでメレ!」
鰐は赤髪にマイクを向けた。
「風真忍法、疾風砲!」
鰐のマイクに風が集中的に集まり爆風へと変わり赤髪に向かって飛んで行った。
「さっきの技か!
フン!」
赤髪は両手で顔をかばい足に力を込め爆風を受け止めた。
「やはり一筋縄ではいかんメレか」
「いいねぇ!いいねぇ!
今度はこっちの番だぜぇ!!」
赤髪が手を広げると掌に炎が集まり球体状へと変化し炎の玉が出来上がる。
「おら!おら!おら!おら!」
赤髪は炎の球体を何発も作り出し鰐に向けて投げ飛ばした。
「風真忍法!昇り龍!」
鰐がマイクを上下に振るとそこから小さな竜巻が起こり、柱状へと変化し炎の球体を粉砕していった。
「やるなぁ〜…
だが、これならどうだあぁあ!!」
赤髪が両手を広げると周りに大量の炎の球体が出現し鰐目掛けて飛んで行く。
「風真忍法、竜巻玉!昇り龍!風上龍滝!疾風砲!」
鰐はそれに対応するように技を繰り出した。
「あの人風を操ってるのです!なんです!?
なんなんです!?頭がおかしくなりそうです。」
その光景を見ながら海李は頭を抱えた。
自分の知らない世界を目の当たりにしているのだ普通はこうなる。
「ちっ…
しゃらくせぇ〜なぁ〜!!!」
赤髪が両手を上にあげると巨大な炎の玉が現れた。
余程の熱さなのだろう周りの鉄などが溶け天井は突き抜けた。
「あつ!熱いです!」
遠く離れていた海李にもその熱さが伝わり思わず隠れていた所から出てきてしまった。
「風真忍法!風散歩」
鰐は一瞬にして元いた位置から海李の所まで瞬間移動した。
「ねむ、この子を守っててほしいメレ」
鰐がそう言うと肩に乗っていた妖精が海李の前に移動し手をかざすと風が吹き出し守るように包み込んだ。。
「です?熱くないのです。
です!?妖精さんがいるです!」
「メレメレ
大丈夫メレか?」
鰐は微笑みながら海李に聞いた。
「はいです、これは妖精さんですか?」
海李は見た事ない妖精に疑問を感じていた。
「そうメレ、風の妖精のねむちゃんメレ」
「妖精さん…ホントにいたんですね」
海李はマジマジと妖精をガン見した。
「ホントにいた?」
海李の言葉と表情に?マークを浮かべる鰐そこに…
「ひゃはは!」
赤髪の大きな笑い声が聞こえてきた。
見ると炎の玉がドンドン大きくなっていく。
「メレ!?なんて大きさメレ。
この辺り一体を火の海にするつもりメレか!?」
鰐は火の玉を睨みつけるように見る。
「せっかく苦労して召喚したんだ。
連れていかれたらたまんないんでねぇ
それにお前がどうにか出来たらそうはならねぇえよ!」
赤髪は睨む鰐を嘲笑う
「召喚? いや、それよりアレをどうにかせんとメレ」
鰐は覚悟を決めてかまえる。
「行くぜえぇ………」
赤髪が炎の玉を投げ飛ばそうとした瞬間、赤髪は炎の玉事その場から消えた。
「メレ?」
思いもよらない出来事に目が点になる鰐
当たりを見回すと先程倒した黒スーツ達も消えていた。
「何が起こったメレ?」
体験した事ない出来事に警戒しつつ辺りを見回す鰐。
どうやら危機は回避したようだ。
「完全に気配が消えたメレ。
妖気も感じんと言う事は完全にこの場から消えたって事メレね…
ん〜わからんメレ。
新しい魔道具メレか?」
鰐は何やら1人でブツブツと呟いている。
「あ、あのぉ〜です」
そこに申し訳なさそうに海李が声をかけた。
「すまんメレ(汗)
怪我はないメレか?」
鰐は慌てて謝ると微笑み尋ねた。
「はいです!
あの、さっきの人達は?
それに貴方は何者なのです?」
海李はいちばん疑問に感じていた事を質問した。
「ぼくぅの名前は影塚鰐メレ。
掃除屋をやってるメレよ。
さっきの連中はわからんメレ。
恐らくどこかの組織なんメレが、まさか鬼が出てくるとは思わんかったメレ」
鰐は微笑んだかと思うと急に険しい顔になった。
「掃除屋?組織?鬼です?」
聞き慣れない言葉に海李の頭がついていけていない。
今にもオーバーヒートしそうだ。
体験した事ない事からのこのワードだ混乱するのも無理は無いのだろう。
「おお〜い鰐ぃ〜」
海李の頭から煙を出してる所に綺麗な声が聞こえてきた。
「おやおや、ハイジさん下の方はもうかたずいたんメレ?」
鰐は声の方を向き訊ねた。
「それが急になんの前触れもなく消えてしまったんだよ。」
声の主の容姿は美形で独特の話し方をしているがとても育ちが良い印象の人物だった。
「やはりそうメレか」
鰐は腕を組み何やら難しい顔をした。
「それより鰐その子は誰だ?」
どこからか渋く低めの声が聞こえてきた。
「です?です?」
その声に気づいた海李は辺りを見回す。
が鰐とハイジと呼ばれていた人物しかいない。
「この子は助けを求めてた子メレよ。
光さん」
特に気にする様子もない鰐は普通のテンションで答えた。