第4話 龍との邂逅
彼はゴブリン達から必死で逃げていた。
そのせいで、前方注意なんてろくにできていなかった。
もしかしたら、龍が緑だったのも効いたのかもしれない。
だが、どんな理由を付けようと、タックルしてしまったのは変わらない。
龍は起きてしまったのだ。
時間操作系スキルなどがない限り、なかった事にはできない。
「うっひゃぁ、やっぱり龍って強いんだよね?ね?うっはー!やっべぇ!
これ、もしかしたら、殺されちゃうかも。
冗談言ってる場合じゃねぇ!
死んでみたら夢かどうかわかるかもだけど、ソードでアートなオンライン的な世界とか、現実だったらホントに死ぬうぅ!
おりゃぁトンズラするぜ!まだ蛇生も満喫してないしー?」
まぁ、彼自身も茶色なので、ギリーだから逃げやすいとは思うが…
龍を目の前にして逃げられるほど甘くはなかった。
『我の眠りを妨げたのはお前か…?』
彼は思わず立ち止まった。
「ギクッ…」
『おい、そこの蛇、お前か?』
「い、いえ、違います。私じゃありません」
『ほほぅ、我を前にして嘘をつくか』
「い、いや、ホントです。ホントにやってませんです、はい」
『…嘘だな?スキルを使わなくてもわかる様な嘘をつくな。』
「………(バレてらぁ…それに、逃げても普通にプチッてやられそうだな)」
『ん?無視か?我の言葉を無視するのか?』
「い、いえ、滅相もございません。」
『蛇、お前は我に攻撃した?そうだな?』
「(これは言い逃れできなさそうかなぁ)
い、いえ、たまたま当たってしまっただけです。すみませぬー!」
『なら、完全にお前に落ち度があるということだな?』
「(本当はゴブリンのせいなのに…)
は、はい、そうです。(てか、なんで心の声とか伝わってるんだ?龍も口動かしてないのに、頭に声が響くし…さっきスキルとか言ってたけど、この夢ってスキルとかある系かな?で、【念話】とか?【念話】の権能で言葉とかも通じてるん?)」
『ならお前に罰を与えなければな』
「(え、何、お前裁判官?違うだろ!勝手に決めんなよー?!)そ、そうですね。」
『お前は我を5時間飽きさせずに楽しませろ。それが罰だ。寝ていたのも元々は暇だったからだしな。あぁ、失敗したらもちろん殺すぞ?』
「(え、なに、どんな展開?!こいつそんなに暇してたの!?
まぁ、瞬殺されるよりは良いけど………いきなり5時間楽しませろって言われても……、あぁ、俺の蛇生ここで終わったな…てか、この夢での5時間って現実世界じゃどんくらい?)」
『何を黙っているんだ?償う気がないならそう言え、楽にしてやる』
「は、はい、わかりました…やります、まります。超やります!(やれば良いんだろチキショー!!」
『うむ、良い心がけだ。』
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それから、ひたすらに頑張った。
木に登って落ちたりした。
自分で自分を巻いたりした。
昔話を話した。
龍とかが倒さるシーンが来ないように気をつけて、オタク話を披露した。
ここに来て、今まで無駄に蓄えてきていた知識が役に立った。
5時間耐えきった…!
そう、耐えきったのだ…!
死ななかった!
ふぅーい!
ちなみに、5時間は、現実の世界の5時間と同じだった。
自分でも耐えられるとは思っていなかったので、自分で驚いた…。
意外と異世界系が受けたな、宇◯の戦士、とかも楽しんでいただけたようだけど。
1番喜んでいたのは、◯ロ◯ンガ◯生だった。
変態か、あいつ。
龍のくせに。
もっとかっくいぃ感じな龍いないかな。
いや、萌えるのはわかるんだけどもね。
わかるんだけど、龍のイメージと合わないんだよね〜
まぁ、いいか。
取り敢えず、事後報告でもしよう。
あの後、すっかり機嫌が良くなった龍に、質問をしてみた。
その成果の1つ。
この夢にはステータスがあるらしい。
何?ステータスがわからない?異世界系小説よんでこい。
まぁ、要するに、自分の力の強さとか、速さとか、技能とか能力を、文字や数字に起こしたものだ。
それがステータス。
そう考えておけばいい。
だが、ステータスは、鑑定系スキルを使わないとみれないらしい。
そりゃぁ、今の俺では見れないわけだ。
もちろん、試していたんだが…絶対鑑定系スキルホルダーになってやるぜい!
2つ目が、スキルはやはりあるようだ。
だが、ユニークスキルやら、エクストラスキルやら、そういうものはないようだ。
強いスキルとか、使えるスキルとかの、序列っぽいのはあるらしいが。
その代わりと言ってはあれだが、種族によっては、種族固有スキルがあると言っていた。
ちなみに、俺も種族固有スキルを有しているとのこと。
まぁ、それは後でいいや。
かなり気になるけどな!
それと、スキルの取得方法は、先天的なものもあるのだが、基本的には努力で手にいれるらしい。
今現在、どのように努力したらどのスキルが取れるかわかっているのは、3000個ほどだけだとか。
あとは、『称号』によるスキル取得。
『称号』っていうのは、かなりの人数にそう呼ばれたり、何か偉業を成し遂げたり、人がやらないような事をすると、それを成した記録として、表示されるものだ。
『称号』は、何らかの利益をもたらす場合がある。
それは能力であったり、スキルであったりする。
例えば、『竜殺し』の『称号』を取得したとすると、竜に攻撃が入った場合だけ、攻撃力が増えたりする。
他には、職業によるスキル習得がある。
職業についた状態で経験値を稼ぐと、職業のレベルが上がって、スキルを習得できたりする。
それ以外だと、スキルオーブなどがあるが、一般的なのは前者なので、基本的に無視でいいとのことだ。
3つ目が、現在の位置だ。
この森は、
『エリーミス森林』
というらしい。
ちなみに、名付けたのは、オモーチツ・コウって人らしい。
この森は、かなり広いらしく、例えば、森の端っこから、森の端っこへ、直線距離を時速100kmで200年間も進んだとしても、50分の1も進めたらいい方だ。
そのくらい広い。
頭おかしいくらいに広い。
世界全部が森なのって思っちゃったくらい広い。
えと、俺の計算だと、時速100km で約17日走ると地球一周できるんだけどこの森どんだけ広いの…?
その後、彼は何故か龍に友達認定されて、スキル【龍魔力】を教えてもらってから、その場から解放された。
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ふぅ、助かったぁー!
それにしても…
クッソォォ!
あのゴブリン共、覚えてろよー!
いつか強くなって仕返ししにいってやるぜ!
目標だな!
まぁ、最初にちょっかいかけたの俺なんだけどね!
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彼は、2つ目の、強くなるという目標を持って、またスルスルと歩き始めた。