第2話 ゴブリンとの遭遇
彼は現在、森の中を歩いていた。
いや、足なんてものは無いので、歩くというのかは疑問だが…。
とにかく、彼はこの異様な風景の森の中を気の向くままにズルズル移動していた。
実は、彼は勘違いしているが、夢の中にはきちんと痛みを再現するものもある。ある…が…、彼はもちろんそんな事は知らないので
「これが夢では無いのだとしたら…」
これはまさか…?
実際に異世界トリップしちゃった系?
いや、そもそも身体が蛇になっただけで、異世界とは限らない。
それに、そんな非現実的なことはあるはずが無い。
「つまりこれは、おそらくフルダイーブなVRをプレイしている…。
いや待て待て待て、落ち着くんだ俺…。
今はまだフルダイブは開発されていない、されていたとしても、自分の記憶には無いし、ログインした覚えもない。
ってことは…現実?
それかあれか?やっぱ夢か?
まぁ、1番あり得るのはそれだよな…痛かったのはなんかの間違いかもしれないし…
だな、それだそれだ。じゃなきゃ、俺がソウルなトランスレーターに入ってるって事になるかな…。
わかりやすくいうとアンダーなワールドだ。
まぁ、何故かこの話を続けちゃいけない気がしたから、やめにしよう。
これが夢だとすると、もしかしたら、電車に乗る前から夢だったのかな?
それとも、今自分は、電車の中でうたた寝してしまっているとかかな?
出来れば携帯無くしたのも夢であってほしいなぁ……。
ま、夢なら夢で、蛇になるなんて体験は珍しいし、起きるまでは遊び尽くしてやろうかな!」
と、彼は思い直し、心機一転、進み始めた。
「いやー、もの凄い規模だなぁ」
彼は見たことも無いような色の果実をつける大樹…直径4mほどの幹を見て、そんなことを思っていた。
しかも、それがいかにも当然の大きさと言わんばかりに、周りの木々もかなりの物だ。
まぁ、彼自身実は体長10mな為、普通の人間から見ると余計に大きく感じるだろうが。
70mを優に超える木々の根や葉をガサゴソとかき分け進むこと20分ほど、前方に何か、臭いものがあり、熱が感知できた。
彼は不思議に思い、そこに行ってみることにした。
そこに行って見ると…まるでこの森の緑に紛れるような、明るい緑色の肌、先端が尖った耳、自分の身長の5分の1も無いような、醜悪な顔をした人型の生物が、1人でウロウロしていた。
彼は一瞬でその生物の正体を見抜いた…というより、知っていた。
「俺の知識が夢でも適用されるなら…こいつは……ゴブリンだ!!」
彼は歓喜した。
何故なら、ゴブリンなんて架空の生物、見たことも無かったからだ。ちなみに、今まであえて言っていなかったが、彼は所謂オタクである。
故に、夢とはいえ、何故かかなりリアルな夢でゴブリンを見た彼は、興奮した。あ、性的じゃ無いよ?
かなり興奮して冷静じゃなくなった彼は、1つのことを思いついた…いや、ついてしまった。
「ゴブリンって序盤に殺されるやつやん?やつやん?あ、ここテスト出るから。つまり…俺でも倒せるかもしれない!」
彼はここが夢だと思っている為、命を奪うことへの抵抗など無かった。
その上、ゴブリンは雑魚という固定概念を持ちすぎていた…故に気付けなかった。思い出せなかった。
ゴブリンの繁殖力が異常というテンプレを。