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茶番

今回は少し短めです。


 

 家を確保した俺が次に向かったのは、商業ギルドだった。

 店を出していいかどうか交渉しているシャロの元へ行くためだ。

 実はこの街にはルールがあって、許可を取らずに出店したら罰を与えられるのだ。出店する前に商業ギルドと「売り上げの一割を徴収する」という契約をむすんで、やっと商売ができる。

 

 そろそろ終わっていることだろう。

 

 商業ギルドは意外と近かった。

 徒歩で五分ちょっとで着く距離にあった。近くに商業ギルドがあったら何かと好都合だ。

 

 見た感じはあまり冒険者ギルドと変わらない。建物自体は三階建てで、とても大きいという程ではないが、明らかに冒険者ギルドと違う点がある。

 それは、雰囲気だ。

 冒険者ギルドは荒くれ者が集まっていて日々乱闘が起きているが、商業ギルドはそんなことはない。商人だと思われる人達が静かに入口に入っていく。扉を蹴ったり、剣が飛んできたり――

 そんな危険なことは一切ない。

 これが冒険者ギルドの場合、人が吹っ飛んできたり壁が破壊されたりなんて当たりまえなのだ。俺は今まで、なんて常識外れな場所にいたんだ……。


「あ、マークさんっ!」


 扉から出てきたのは、とびきり可愛いパーフェクトビューディフォーな少女――シャロであった。いつもこんな感じならいいのになあ。

 残念なことに、こいつはドSだからな。


「おお、シャロ。終わったか?」

「はいっ。マークさんこそ家は買えたんですね」

「ああ……それも最高のスローライフが送れそうな家だ。俺から見たら別荘みたいだったぞ」

「あはは……それはマークさんが貧乏で馬小屋で寝泊まりしてたからじゃないですか?」

「……」


 こいつ、さらりと俺の心を抉りやがる。

 

「いや、本当に凄いんだ。じゃあ、行こうか」

「はい――あ、マークさん?」

「ん? なんだ?」

「お金、返してませんよね?」

「……そういえばそうだったな。悪い悪い」

「(じーっ)」


 俺は余ったお金をシャロに渡した。

 いや~、本当に忘れてただけだ。バレないかもなんて思ってないからな。本当だぞ。


「油断も隙もないですね」

「隙をつくる貴様が悪い!」

「……何ですかそれ。格好悪いですよ。あと、周りの人の視線が冷たいので、私から離れてください。私まで変な人だと思われたら困るので」

「あ、はい。すいません」


 うわぁ、本当だ。周りの人がゴミを見るかのような視線を送ってきている。


 なんやかんや揉めながら、俺達は家に向かいました。


 ●


「すっごーーーい!!」

「だろ?」

「私の金で買ったんですけどね」


 家を買って喜んだと思えば。なんだよ。

 冒険者をやめてからというもの、シャロの態度がだんだん軍曹化してると思う。そのうち軍隊でもつくりそうだな。

 

「でも、凄いです。さっそく中に入りましょ!」

「お、おう」


 シャロが俺の手を引っ張る。

 おうふ、柔らかい。健康的でふっくらとした手だ。

 傍から見れば俺たちカップルに見えるんじゃね? いやないわ。顔面ヒエラルキーの差がありすぎたわ。


「うわあ、中まで綺麗!! これは儲かりますよ~」

 

 これだけで儲かるなら人生苦労しねえよ。全員貴族様になってるよ。

 俺を見ろ、毎日馬小屋で寝てきた人間だぞ。なめるんじゃねえ。


「それじゃ、必要なものを揃えていこう」

「はいです!」

「まずは商品を置く棚だ。これは必要不可欠。次に、より能率よく商売をしていくための道具を仕入れなければならない」

「……どういうことですか?」

「例えばポーションをつくる時、手作業よりも自動化した方がいいだろ? そんな感じで、儲けるためには策が必要なのだ!」

「すごい!」

 

 褒め称えてくれるシャロ。もっともっとだ! クハハハハ。


「それで、まずは事務に必要な道具を揃えていきたい」

「そんなのは紙に書いていったらいいじゃないですか」

「ふふふん、君は何もわかっちゃいないねレディー。それもより楽にするのだよ」

「なるほど! でもどうやって?」

「それはな――」


 俺はプランをシャロに教えていく。


「ほほう。でも上手くいきますかね?」

「大丈夫だ。こちらにも取引材料はあるんだから。これが成功すれば我々は世界有数の店となりえるだろう」


 なんだこの茶番。

 だが、内容はちゃんとしているぞ。意味がない訳ではない。


 

 そうして、俺は『ドワーフ建築』に向かった。

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