たぷん、ぷよん。ああんんっ
PVが毎日増えてる! 感謝!
何だこの気持ちよさは。
心地よい風が吹いていて、雲一つない晴天のもとで寝ているかのようだ。
頭には枕のようなものがある気がするが、柔らかさは極上だ。
「……ここは?」
周りを見渡してみると、そこは広場だった。
花がいっぱい生えていて、木もある。そして、上を見上げると――
二つのボールが浮いていた。
柔らかそうなボールだ。俺が少し動くと、そのボールもぷよんぷよんとしている。まるでスライムみたいだ。
触りたい。
俺はボールに手を伸ばし、揉み始めた。
たぷん、ぷよん。ああんんっ。
ああ、これめっちゃ柔らかいな。ん? 最後のはちょっと違う。
そして、次は口で――
「なにしてるんですか!?」
「ぐほっ……!」
腹を殴られた。同時に転げ落ちる。あれ? 痛くねえわ。
そうして、やっと良好になった視界で確認できた。あのボールは胸だ。しかもシャロのだ。
気付いたときには遅かったようだな。うむ、仕方ない。
「ああ……シャロか」
「シャロか、じゃありませんよ! マークさん変態だったんですか!? いや知ってましたけど! 女性の胸を揉むってどうかしてるんじゃないですか? そろそろボケてきました? ねえ?」
「いや、ごめん。知らなかったんだよ。でもさ、シャロも喘いでた――」
ドスッ!
鳩尾に鉄拳が……。
そういえば、シャロは元冒険者だったけな。俺じゃなかったら、多分失神してたぞ。女は怖い。以上。
でも、シャロは「ああんんっ」って言ってた。間違いない。
「はぁ……。それより、大丈夫ですか?」
「殴ってから言うな」
「マークさんが悪いんです。というか、私の攻撃喰らってピンピンしてるとか、本当にステータス弱いんですか?」
「……ジャイアントツリー倒してから少し強くなっただけだ」
「ふ~ん?」
やべぇ、完全に疑われてる。
蛇のような瞳でこちらを睨んできている。こ、殺される!?
「それで、もう冒険者をやめた訳ですが。これからどうするんですか?」
「うーん。まずは、今まで貯めた資金を使って店を建てる。それでスローライフ」
「で?」
「え、えっと。まあ、ひとまず、ポーションをつくります。はい」
怖いよぉ。ステータス上がって恐怖耐性とかついたんじゃないの? 無意味かよ。
「それだけで生きていけると思ってるんですか? というか、ポーションのつくり方なんて分かるんですか? 生産スキル持ちじゃないでしょう。それ以前に、そんなに金ないでしょう?」
「……あ、はい」
シャロは「一生ついていく」とか言ってたけどさぁ、これは訳すと「一生ついていってやるよ、クズめ」みたいな感じなんじゃね?
今までシャロのことはツンデレとか思ってた俺が馬鹿だった。
無じゃねぇか。
「いや、そこらへんは大丈夫だよ。多分」
「……どこが? 今の聞いて、そう思えるんですね。羨ましい性格(笑)ですね」
「……」
「まあ、そうなると思ってましたし。金銭面は私が援助します。その分は働きで返してもらいますよ」
分かりましたすいません。
「まずは家を確保しましょう。その家の一階で商売、二階で生活したらいいでしょうから」
シャロが思いの外有能だった。
もうメイドでいいんじゃね。
「それでは商業ギルドに行って、店を開く許可をもらってきます。マークさんは家を選んできてください」
「分かりました!」
【悲報】おっさん、女の子の奴隷となるwww
自分で悲しくなってくるわ。
俺はシャロから金のはいった袋を貰う。
てか、量が半端じゃない。全部で四千万エルはあるんじゃ……。
盗賊でもやってるのかな?
そう考えてたら顔面に拳はいりました。ちくしょう。
●
というわけで、家を買いにやってきた。
シャロとは広場で一旦わかれて、俺は不動産屋で家を買うことになっている。四千万エルあれば大抵の家は購入できるだろうから、まずは人が寄ってきそうな外観の家にしないとな。
テキトーに選んで契約結んだらシャロに殺されるし。ぶるぶる。
やってきた不動産屋は『ドワーフ建築』だ。
働いている人全員がドワーフであり、世界有数の建築技術を誇る大手なのだとか。価格を最低限に抑え、最高の質をお届けするというのがモットーらしい。
実際、三百万エルで購入できる家も造っているのだそう。
そのドワーフ建築にやってきたのだが、その建物がまた凄い。
全何階あるの? というレベルだ。摩天楼とはまさにこれを指しているのだろう。
入口は自動で開くようになっており、世間一般では「自動ドア」と呼ばれているそうだ。これつくった人天才だな。
中に入ってみると、そこはもうドワーフの巣窟だった。
身長が低いかわりに肩幅が広いドワーフ達が、事務作業をしている。うん、似合わん。
ドワーフ達はなんやら板みたいなのを叩いているがなんなのだろう。少しデコボコしている板だ。その板の前には、何やら光を放っている画面があった。
それを、ステータスで補正されている視力で覗くと、文字が羅列している。
多分、あの板を叩くことで文字が入力されているのだと思う。すげえな、俺も欲しい。
てか一階で事務してるとか客の迷惑になるとか考えなかったのかよ。
閑話休題。
近未来の光景を目の当たりにした後、俺は受付の人に話しかけた。ちなみに黒髪の美人系の女の人だ。
「すいません、家を購入したいと考えているのですが……」
「ようこそドワーフ建築へ。どのような家がよろしいですか?」
おおっ、最近ではやっとマトモな人に会ったな。涙が出そうだ。
「えっと、価格は四千万エルまでで二階建てがいいです」
「……それですと、かなりグレードの高い家を購入されるということですね。家はどのような目的で購入されるなどはありますか?」
「店を営みたいと考えています。ポーション等の冒険者や商人が愛用するようなものを販売する予定です」
「分かりました。お客様にぴったりの家がありますので、そこまで案内させていただきます」
「ありがとうございます!」
感極まって、頭を下げる。
だって、こんなにマトモな人が傍にいたらどれだけ嬉しいことか。
うちのシャロと交換してほしい。
そう思ってたら悪寒がしたので、心の中で悟りを開きました。
●
「こちらです」
「おお~っ!」
この街のど真ん中にある二階建ての立派な建物。
横に広くて、縦もなかなか。木でできていて優しい印象を与えている。
人もよく通る場所なので、栄えそうな場所じゃないか。
「中にご案内します」
そういって、扉の前に立つと、自動でドアが開いた。
まさか……自動ドアなのか!?
「こ、これって!」
「はい、自動ドアでございます。近寄るだけで、索敵系の魔法が発動してドアが開く仕組みになっております。尚、この自動ドアにはオンオフの機能がありますので、閉店以降はオフにされると、泥棒などに入られることもありません。監視カメラと呼ばれるものも整備されていますから、セキュリティも万全です」
すげええええええっ!!
ドワーフ建築、神ですわ。監視カメラなんてあるのか! 千里眼みたいなものじゃないか、ちょっと違うけど。
ドワーフ建築の社長さんと会ってみたいな~。きっと凄い人なのだろう。
内装も凄かった。
今は中に何もいれていないので、少し足りない感じもするが、物を置いたら凄くいい感じに仕上がるだろう。
魔力をエネルギーに発光する先の丸い玉。床は真っ白で、艶やか。
完璧!
「では二階へ」
「はいっ!」
俺の返事は自然と明るいものになっていた。
二階はどちらかというと落ち着いた雰囲気。
生活するのにぴったり。部屋も五つあって、誰かを泊めることだってできる! そんな友達いないんだけどさ。
「買います、買わせて下さい!」
「あ、は、はいっ。この建物は千二百万エルです。大丈夫ですか?」
安すぎない? さすがドワーフ建築だ。
これほどの技術をもって、この安さとは恐るべし。
答えは決まっている。
俺は千二百万エルを案内してくれた女の人の手に乗っけた。一括だ。
カッコいいだろ? 全部シャロの金だけど。
「あ、ありがとうございます。では、契約書にサインを」
「はい」
マーク、と。
こうして、俺は無事、家をゲットした。
スローライフの始まりだぜ!
シャロにお金返さないとな……。
シャロたん……うふふ。