シャロたんかわゆす
うっひゃー! 評価上がってる! ありがとうございます!
ジャイアントツリーはとにかく射程がある。
魔法や飛び道具は使わないのだが、特徴的な長い腕で攻撃してくるのだ。腕の長さは2m以上あり、幹には棘がたくさん生えている。
幹の硬さも鋼並みで、通常の武器ではダメージすら与えられない。
「効くとしたら魔法か……」
急激なレベルアップをしてから魔法も使えるようになった。弱い頃の俺では初級魔法すら使えなかったのだが、今では宮廷魔術師を凌駕する魔術師になっている。全属性lvMAXで【詠唱破棄】まで覚えているので、もはや俺に使えない魔法はないのではないか。
魔法の知識も頭の中に入っているし、これなら大抵のモンスターは一撃必殺だろう。一番強力とされる幻想級魔術の中には、星一つを破壊するものもあった。使う機会はないだろうが。
じゃあ、中級魔法でやってみるか。
「【火球】」
ぶわっ、という効果音が聴こえてきそうな火の玉が手のひらの上に乗っかっている。不思議なことに触っても熱くない。
これは自分だけで、他の人が触ったら大火傷なのだそうだ。ちなみにこれは神の知識から頂戴した。
火球をボールを投げる感覚だ。
腕に力を入れて、投げた。
ブオンッ!
金属バットを振ったときのような音がでたと思うと、火球はジャイアントツリーにぶつかり、爆発した。いや、爆裂という言葉が相応しいかもしれない。
俺のところまで爆風がきて、熱い風が肌を撫でる。
きっとVITが高くなかったら俺は死んでいたことだろう。
木々が燃え、景色は赤へと変わっていった。
これ、本当に中級なの?
中級程度なら多くの人が使えるはずだ。
魔術ギルドでも中堅と呼ばれる人達でも使えるし、国お抱えの魔術師ならポンポン撃ててしまうくらい。うーん。これは俺自身のレベルが高いから魔法の威力が強くなったと考えるべきかな。
こんな魔法を使える人が何人もいたら、それこそ世界は既に終わっているな。
そんな俺が、最上位の魔法を使ったら……。
うん。考えないでおこう。多分世界どころか宇宙が崩壊するからね。
やっぱ神って凄いんだなって思いました。
●
「えっ!? ジャイアントツリーと遭遇したっ!?」
「はい……まぁ……」
俺は冒険者ギルドに戻って、依頼報告を完了させようとした。最初、ジャイアントツリーに遭遇したことは隠そうと思った。だが冒険者には、倒したモンスターなどを報告する義務があるのだ。
今まで自分を支えてくれたシャロに嘘をつくのも申し訳ないので、隠さずに言ったのだ。さすがに神を殺したことを教えるわけにはいかないが。
「よく生きのびましたね……」
「本当だよ……ってちがあああああああああああうっ!!」
「ふぇっ!?」
何普通に返そうとしてんだ! シャロのせいなんだぞ。
「シャロのせいだろうがあああっ! もう少しで死んでたかもしれないんですけど!?」
「いやっ、でもっ、生きているじゃないですか――」
「そうだけどっ。俺が死んでたらどうするつもりなの!?」
「いや、それはっ」
ふーっ。落ちつけ、俺。
まあ実際シャロのお蔭で強くなれたようなものだし。別にいいや。
「それと、ジャイアントツリーは倒しておいたから」
「えええーーーーっ!?」
「ふぇっ!?」
俺まで変な声が出てしまった。これじゃ、幼女じゃないか。
いや、顔面は違うけれども。顔面は違うけれども。
大事なことなので2回言った。
「倒した、って……嘘でしょ?」
「俺が今まで嘘をついたことがあるかよ(キリッ)」
「ありますけど。何なら嘘製造機ですけど」
「……」
会話がかみ合わない。話が進まない。
やはり相性が悪いんですね分かります。
「それはさておき、倒したのは本当なのでしょうか?」
「本当だよ。さっきから言ってるだろ」
「でも……失礼ですけど、マークさんには……」
「倒せない、と?」
「……はい」
さっきまでの明るい?雰囲気が一変。
シャロには困惑の表情が浮かんでいた。
信じられないのも仕方ない。Bランク冒険者でも、何人かで挑まないと勝てないモンスターに一人で勝ったというのだから。
頭のネジが吹っ飛んでない人なら、普通は信じない。
「別に倒してなかろうが、倒していようが、関係ない」
「……?」
「だって、俺――」
きっとシャロは怒るだろうが。
「冒険者やめるから」
ああ、シャロに殴られるだろうな。
今まで必死に足掻いてきて、苦しいときも一緒だったのに、いきなり「冒険者やめる」なんて言ったら。
そしてシャロの方を向く。
シャロは顔を伏せていた。
「……あ、そうですか。分かりましたー。手続き済ませておきますねー」
「へ?」
「え?」
いやいや、リアクション薄すぎん?
想像と違うなー。何でだろ? 普通なら、
『冒険者やめるから』
『えっ!? 待ってください! 私はあなたに一生ついて行くって決めたんです!』
『シャロ……』
それか、
『冒険者やめるから』
ペチーン。
『そんなこと言わないでください! これからも一緒に、頑張りましょうよ!』
『でも……』
『私は、あなたの味方ですから』
こんな感じだと思ってたんだが。
何が、手続き済ませておきますねー、だよ。
「ちょっと、リアクション薄すぎないですかね?」
「……そうですか? 私はマークさんが冒険者やめることなんて分かってましたし。私も受付嬢やめますし」
「はっ?」
「いや、だから、私も受付嬢やめるんですよ。そろそろ。それで――」
シャロは大きく息を吸った。
「ずっと、マークさんについて行きます」
ドキューン。
心臓が爆発しそうです。思わぬところで、運命です。はい。
泣いていいですか?
「シャロ……」
「だって私、マークさんのことずっと尊敬していたいから」
そして、俺は。
言葉を返そうと口をあけて、心臓が高鳴る音を聴いて――
驚きすぎて、失神しました。