第9話
大変長らくお待たせしました(>_<)
ちょっとイメージを文章にするのに手こずってしまいました。
今回から話が急展開?しますよ!
ヤマダ何でもカンパニー所属『ぶっとびタートル号』は原因不明のエネルギー反応による衝撃でメインエンジン停止状態。
更には惑星ニードルスの重力に引っ張られており、大気圏に突入する事となってしまう。
「し、死んじゃう?私、結局死んじゃうの?」
死への恐怖の為か、電源は点いているものの反応がない通信機を一心不乱に操作しようとしているアンが、悲痛な声を上げる。
「いやいや!まだまだやれる事があるんだ。死なないし、死なせないよ!」
ケンが右手でサムズアップする。
「姿勢制御スラスターはまだ生きてる!ジョージ!そっちのコンピューターは生きてるか?」
右手は即座に操縦捍に戻り、左手は会話中でも休まる事無くコンソールを操作している。
「センサーは全部死んどるが、コンピューター自体はまだ生きとる!今、大気圏突入コースを計算中じゃ!シャーリーさんも気をしっかり持って気張るんじゃ、揺れるぞ」
ジョージは振り返らずコンソールを操作しながらもアンに声を掛ける。
「社長さん、ジョージさん…」
アンは二人の気遣いに感謝しつながら、シートベルトを確認して、足を踏ん張る。
「よし、突入コース確認した。目視による大気圏突入は軍学校以来だな」
ケンは計算結果を確認し、軍学校時代の講習と訓練を思い出しながら、眼下に広がる惑星ニードルスを見た。
『ぶっとびタートル号』は大気との摩擦により激しく揺れながらも大気圏を降下していた。
いつまでも続くも思われた震動が突然無くなり、浮遊感がブリッジを包み込む。
「大気圏を突破した!これより胴体着陸を実行する!皆衝撃に備えてくれ!」
雲ひとつない惑星ニードルスの空を、航空力学を無視した造りの宇宙輸送艦は、最大限に姿勢制御スラスターを噴射させ落下加速を落としていくが、質量がそれを中々許してはくれず、落ちていると感じられる速度のままだった。
アンは地表が近くなるにつれて、目を思い切り閉じて歯を食いしばった。
真っ暗な世界の中で小さな震動とケンの叫び声が聞こえた。
「スラスターぶっ壊れた!」
不吉な叫びの直後に強い衝撃が全身を襲い、アンの意識は途切れてしまった。
アンが意識を取り戻すと、あちこち痛む身体を擦りながら、生きるって素晴らしいなぁと考えつつもシートベルトを外して周囲を見渡す。
ブリッジ内は窓から差し込む恒星の光で明るく、周囲は機材等が散乱しており、見るも無惨な状況になっている。
各座席にはケンとジョージの姿が無い。
「あ、あれ?社長さん?ジョージさん?」
もう一度周囲を見渡しても倒れた姿は見えないので、アンは胸を撫で下ろす。
「お?シャーリーちゃん、目が覚めたかい?」
アンは気が付かなかったが、開放されていたブリッジのドアから、ケンがひょっこりと顔を出した。
「社長さん、ご無事でしたか?ジョージさんは?」
「あちこちぶつけて痛いけど、二人ともNO problem!今、艦内を見て回っていたところだよ」
ケンが何時ものようにサムズアップした。
「そうてすか…良かった」
アンは自分のまだあちこち痛む身体を擦りながら、二人の無事に安堵し目頭が熱くなった。
少し経ってジョージも戻り、三人が無事を喜びあった後に、座りながらケンが口を開く。
「さて、シャーリーちゃんも目を覚ました事だし、状況を確認しようか」
ケンがジョージに目を向けると、頷いたジョージが話を続ける。
「現在は重力制御機関は動かず、目が覚めた時には既に艦内の電源も落ちとる。姿勢制御スラスターは大気圏突入時にオーバーヒートを起こして壊れた。センサーや通信機も外から見てみないとわからんが復旧は絶望的じゃろ」
ジョージが夢も希望も無い話をし肩を竦めた。
「唯一、望めるのは中佐の艦隊がまだいると思うから救助に来てくれる筈なんだが…」
ケンはそこまで話してから難しい顔になる。
「先程の惑星からのエネルギー反応がある限り、警戒して救助挺は出せない…じゃろ?」
ケンの考えを予想したジョージが問い掛けた。
「ああ、あれをどうにかして、更には連絡の手段が取れれば救助は来る」
「え?通信は絶望的なんじゃ…」
アンが泣きそうな顔になりながらも、知っておかなければならないとケンに確認した。
「この船はね。だけど、エネルギー砲の様な施設があるのなら、通信機の一つや二つ転がってるでしょ」
アンの頭を優しく撫でながら、ケンはサムズアップした。
「最悪、戦闘も考えて武器を持った方が良いかの」
ジョージはよっこらせと掛け声を上げて立ち上がった。
艦内には護身用にケンとジョージが武器を積んでいた。
ケンは宇宙服を脱ぎ、何時ものツナギ姿にホルスターベルトを腰に装備して、大型のハンドガンをホルスターに収める。
Rー3レーザーガン。
ロルヴァ軍が正式採用した士官用の大型ハンドガンで、多少の装甲なら撃ち抜ける程の高出力ではあるが、扱いが難しいので実際に使用していた士官は殆ど居なかった代物である。
ジョージも宇宙服を脱ぎ、相変わらす白衣を着て、肩からベルトで吊るされたサブマシンガンを下げる。
KMCー147レーザーSMG
衛星都市シルヴァに本社を置く、個人装備用火器を開発販売するメーカー、カリンメリッサ社の最新作。
独自で開発された冷却装置が長時間の射撃にも耐えられる作りとなっている(当社比)。
また、これも独自で開発された大容量バッテリーカートリッジも、長時間の射撃に拍車をかけた。
問題は照準補正機能の開発が苦手の為に、命中精度は本人の腕次第と言うマニア向けの代物である。
二人は更に銃に繋げて照準補正を行うゴツいゴーグルを掛ける。
このゴーグルには生態反応を感知する機能も備わっていた。
「取り敢えずは周囲の安全を確認するから、シャーリーちゃんはここで待ってて」
ケンはゴーグルの調整をしながら、アンに声を掛ける。
「この惑星は生命活動が出来るレベルの空気が存在しておった筈じゃな?」
こちらも同じくゴーグルの調整をしていたジョージがケンに聞いてきた。
「調査団の報告でもあったし、あれを見れば解るよ」
ケンはブリッジ正面の窓を指差す。
アンとジョージが目を向けると、外にはサボテンと思われる植物や短い雑草が少量見える荒野が広がっていた。
「トカゲや蛇くらいは居てもらえると助かるんじゃがの」
「え?………食べるんですか?」
ジョージの呟きに思考を巡らせ、最悪の結果に至ったアンが恐る恐る声を掛ける。
「何日滞在するかわからんからの。動物性タンパク質は必要じゃ。安心しなさい、鶏肉に似た味で天然物じゃぞ?」
ニヤリと笑うジョージに、アンは不安しか感じなかった。
二人を見送ったアンは自分も宇宙服を脱ごうと個室へと移動した。
個室と言っても二畳程のスペースに小さなベッドと収納が有るだけのものだ。
アンは収納から衣服を取りだし、宇宙服を脱ぎ出す。
宇宙服の前面にあるファスナーを下ろし、身体にフィットしている為に脱ぎ難い宇宙服と格闘すること3分、スポーツブラに質素なショーツの下着姿になったアンは自分の身体に鼻を近付ける。
「ちょっと汗臭いかな?シャワーは水が勿体無いから、身体だけでも拭こうかな…」
アンは下着姿のまま廊下に出ると、手早くタオルと洗面器を取り出し、ついでに水製造機の機能も素早くチェックし、洗面器に水を入れ、個室に戻った。
二人の姿はブリッジにはまだ無かった。
アンは手早く身体を拭き、遮光性と通気性の高い黒のストッキングにデニムのショートパンツ、白の男性用ワイシャツを上半分のボタンを締めた状態に、アームベルトと腰のベルトで動きやすく固定した服装に着替えてブリッジに移動した。
ケンとジョージは宇宙船出入口から、外に出ると、二人揃って顔をしかめた。
「暑いな」
「暑いのう」
空気はあるものの乾燥しており、恒星からの陽射しが大地を焦がしているように感じた。
実際に目に入るのは、岩、遠くに見える岩山、二足で立っている小さなシルクハットを被ったビーグル犬、斑に生えた短い雑草、サボテン位のものだ。
「…………おい、ジョージ」
「何じゃ?」
「俺のゴーグルに、Kidsアニメが映るように改造しなかったか?」
「改造しておらんし、今、目に見えているのは残念ながら現実じゃ。ワシにも見えとる」
ケンとジョージは、目の前の現実にどう対処すれは良いのか戸惑っていた。
まず二足歩行出来そうな帽子を被ったビーグル犬が信じられなかった。
(何処かで頭部に触角がある人間種が存在しているとは聞いた事があったが、あれは殆ど人間と変わらないらしいし…)
ケンが思考に更けていると、ビーグル犬は両前足を横に広げた。
ケンとジョージは、訓練されている動きで、咄嗟に武器を構えようとしたが、ちょっと愛らしい姿に躊躇してしまった。
ビーグル犬は口を大きく開いた。
「ようこそ、スパイク国際宇宙空港へ!…………………ロビーはまだ無いけど」
ビーグル犬は此方の理解できる言葉を発し、器用に肩を竦めて辺りを見回した。
ケンとジョージはお互いの困惑して間の抜けた顔を合わせることしか出来なかった。
読んでくださり、ありがとうございますm(__)m
次はもう少し早く更新したいと思います。
気長にお待ち下さると助かります(^_^;)