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スペースオペラっぽい話  作者: jammer平
俺は宇宙の配達屋?
3/10

第3話

遅くなって申し訳ありません。

今回はちょっとだけ量が増えました(^_^;)

楽しんで頂けたら幸いです。

「はい、これでコンテナは全部なんですね?了解しました。お疲れ様です」


 カプセルタイプの格安個別宇宙港の荷捌きスペースにて、惑星サンドレアスへの支援物資の入った3メートル大のコンテナを複数運び込んだ都市内運送会社のスタッフと個数確認を行っている赤毛の女性、アン・シャーリーはスタッフに挨拶をして掌サイズの端末に記録していく。


 彼女の頬が若干朱に染まってるのは、彼女が現在着用している宇宙服が身体にフィットしている為に身体の女性らしい曲線がハッキリと分かる為である。

 少々身体の一部にコンプレックスがある彼女としては、この宇宙服を着用する仕事はあまり嬉しくない。


 衛星都市シルヴァの下層にある格安個別宇宙港はカプセルタイプで、可動式タラップと荷卸や積載用の頑丈な手動式マニュピレーターがあり、燃料補給用の可動式パイプも備わっている。

 宇宙に出るには料金を支払った後、正面突き当たりのハッチが解放されるようになっている。


 このカプセル型宇宙港に鎮座しているのが、ヤマダ何でもカンパニー所有の元ロルヴァ軍製輸送型ノンジャンプシップ「ぶっとびタートル号」である。

 船首にメインブリッジを有した直線に伸びた細目の船体の両脇に貨物用の大型コンテナを装備している150メートル級の宇宙船で重力制御推進機関を搭載したロルヴァ軍初の実験船でもあった。


 当時の銀河連邦軍は実用化した重力制御推進機関を標準搭載しており、ロルヴァ軍の既存の戦闘艦との性能は差が開いてた。

更には古代文明の遺産であるジャンプドライブ、俗に言うワープ航法を実現させる機関を研究し、性能は著しく落ちて巨大化されているものの、実用化されたコピージャンプドライブを搭載した艦隊が投入されて、ロルヴァ軍は消滅することになった。

 現在では殆どの軍艦はコピージャンプドライブを搭載されている。


 コピージャンプドライブの大きさ的に100メートル級以上の宇宙船にしか搭載出来ないというのと、ジャンプするための燃料費もバカになら無いと言う問題があり、民間でコピージャンプドライブを搭載されている艦船は大手の運送会社や旅行会社に限られている。


 稀に未探索の古代遺跡等から当時のジャンプドライブを搭載されている宇宙船、オリジナルジャンプシップが見付かる事があり、手に入れた者は売れば億万長者に慣れる位の金額を手に入れられるらしい。


 勿論、「ぶっとびタートル号」はそんな技術の無かったロルヴァ軍の船なのでジャンプドライブは搭載されていない。


 マニュピレーターのコンソールでは、何故か宇宙服の上に白衣を纏っている初老の男性、ジョージ・バージニがコンテナを積み込む為に操作をしている。


 アンは可動式タラップで宇宙船のメインブリッジ下にある入口へと向かい、開閉部の操作パネルに暗証番号を打ち込みハッチを開く。

 元軍用だけあって、民間船では有り得ない位の外部装甲が持ち上がり、入口のハッチが開かれる。

 無骨な金属製の階段を上がりブリッジの扉の前まで来ると、アンは中から人の話し声が微かに聞こえるのに気がつく。

 入るかどうか悩んでいると、1分もしないうちに話し声が聞こえなくなったので、念のために声を掛けてドアの開閉スイッチを押す。


「アン・シャーリーです。入ります」

ドアは幾分引っ掛かった音を立てながら開く。


 中は突き当たりに操縦席がありその席の両側にオペレーター席が二つ並んでいる。

 一段高い所に艦長席があるが、今は亀の縫いぐるみが鎮座している。


 操縦席にはボサボサの黒髪だったが、後ろで纏めて宇宙服の邪魔になら無いようにして、無精髭も剃ったイケメン中年のケン・ヤマダがコンソールに両足を乗せて寛いでいるように見える。

 アンは操縦席の左側にある、通信設備で埋め尽くされているオペレーター席に移動しながらケンに声を掛ける。


「社長さん、荷物の搬入確認終了し、ジョージさんが積み込み作業を行っています」


「はい、シャーリーちゃんご苦労様」

通信用オペレーター席に座るアンにケンは片手を上げて答える。


「どなたかと通信されていたんですか?」


 通信用オペレーター席のシートにはアンが自費で購入した赤いクッションが敷かれており、そこに本人が少し気にしている大き目のお尻を沈める。


「まあね、無駄に終わるかもしれないけども、用心に越したことはないからね」

アンはケンの言葉を聞きながら前日の事を思い出していた。





前日、ヤマダ何でもカンパニー事務所。


 私達は依頼を受けると簡単な手続きをして、速やかに事務所に戻ってきた。

 終始難しい顔をしていた社長さんとジョージさんは、事務所に戻るなり、宇宙航路の立体画面を標示させて画面と睨み合っている。


「どこかで聞いた事があると思ってはいたんだか、やはりな」


「最近になって活発になってきたと聞いとるが?」


 私はいつもの人工珈琲を入れて二人に渡しながら聞いてみる。


「何か問題でもあるのですか?」


 今回の依頼は依頼主の素性は確かだし、報酬だってかなり良いと思う。

 前金が1万クレジットで成功報酬が6万クレジットで、しかも一週間以内に配達すると更に1万クレジットのボーナス!

 昨日受けた町内会の下水道掃除は成功報酬のみで3千クレジットだったのを考えると破格です。


「ああ、ごめんね。珈琲ありがとう。今、宇宙航路を確認していたんだけど、シルヴァがここで、惑星サンドレアスがここね」

 社長さんが分かりやすいようにコンソールを操作して、画面内のシルヴァと惑星サンドレアスを赤く光らせる。


「そんで、惑星サンドレアスに向かうには3つのルートがあるんだよね。一つは一番時間が掛かるけど、一番安全な航路のジャポネ自治区ルート」

画面内に青く光るラインが伸びていく。


 ジャポネ自治区は軍事兵器が主な産業で、付近の自治区へ輸出している。

 しかも、ジャポネ自治軍はその特性上、強力な装備が一般的で宇宙航路の治安も非常に良い。


因みに私の生まれ故郷でもあるけど。


「軍需産業で有名ですもんね」

と相槌をうっておく。


「そうそう、よく知ってるね!んで次から不安しかないところなんだが」

と社長さんが苦い顔をしながら続ける。


「次が聖地である惑星エノレサレスを巡って3つの宗教がいざこざを起こしている、エノレサレス自治区、そして最後が反連邦の武装集団がゲリラ活動に勤しんでいるレィヴィア自治区なんだよねぇ」

画面内に黄色に光るライン、赤く光るラインが伸びていく。


「レィヴィア自治区を通るのが一番近いんだけど、内戦状態で治安が致命的に悪い。まだ治安が致命的ではないエノレサレス自治区を通った方が何とかなりそうではある。ジャポネ自治区ルートは一週間を越えるから通りたくはない」

確かに画面内のラインを見ると青いラインが一番長い。


「そして更に問題なのがその3つのルートが交差する宙域なんじゃ」

ジョージさんが話を引き継ぐ。


 画面内で三色のラインが交差する惑星サンドレアスの手前にある惑星を指してる。


「ここは無人の惑星ニードルス。この惑星の宙域はどの自治区にも属しておらん。この宙域では昔から通過する宇宙船がたまに消息不明になる所で原因は不明。今ではジャンプ航法がメインになってきとるから、ノンジャンプシップでここまて遠出しようとする者もおらず、誰も滅多に通らない航路なんじゃよ」


「数年前にたまたま問題なく惑星ニードルスに降り立って調査した連中がいて、そこからニードルスにはロルヴァと同じ様に埋蔵資源が豊富との情報がもたらされてね、当時のシルヴァ自治区区議会議員の一人が他の3つの自治区との共同で採掘事業を展開しようとしていたんだけど、惑星ニードルスに向かった視察団が消息不明になってね、同行していたその区議会議員も消息不明、採掘事業も頓挫したって事があってね」

社長さんが肩を竦める。


「誰かが意図的に消息不明にしたんじゃないかって噂が飛び交って、その渦中の一人が採掘事業に猛反対していた、かのピーター・ハインズ区議会議員って訳」

社長さんが溜め息混じりに苦笑いしながら更に続ける。


「元々、ハインズ氏は慈善事業の陰でblackな噂が絶えない人でね。談合、恐喝、贈賄、犯罪組織との繋がり、それらが裏の事情に詳しい連中が囁いてるもんだから乗り気ではないが、報酬を考えると拒めないってところだね」


「航路としてはエノレサレス自治区経由って事でいいんじゃな?」

ジョージさんが社長さんに確認しながら船の出港手続きを入力していく。


「あ!ジョージさんすみません、私の仕事なのに」


 説明を頭の中で整理するのに集中してて、手続きデータを作成するの忘れてた…。


 ジョージさんは自分のマグカップを軽くあげ

「なに、いつも珈琲を入れてもらっているんじゃ、これくらい手伝わんと罰があたるわ」

ニヤリと笑う。


 くぅ~見た目は兎も角、ジョージさんマジ紳士!

前の職場と全然違って皆優しい!





 アンは横に座るケンを見ながら、やっぱり身嗜み整えるとかっこいいわーと、全く関係無い事を考えながら宇宙港の管制室と連絡をやりとりしている。

 そこにブリッジの扉が開きジョージが入ってくる。


「ケンよ、船への搬入終わったぞい」


 ケンに作業終了を告げて、操縦席右手のセンサー類のモニターが並ぶオペレーター席によっこらせと声を出しながら座り、各モニターをチェックしていく。


「社長さん、出港許可下りました。料金は引き落とし済みです」

アンは端末を確認しながら管制室との通信を終了させる。


「いよぉし!全員、念の為ヘルメット着用しておいてくれ」

ケンが操作パネルや操縦捍を弄りながら、器用にヘルメットを装着する。


「船体、生命維持装置関連、センサー類問題なしじゃ」

ケンのヘルメットからは、宇宙服標準搭載の近距離通信でジョージの声が聞こえる。


「シャーリーちゃんもヘルメットOK?それじゃ、お仕事に向かうとしますかね!」


 軽く元気な声を出して、ケンが右手で操縦捍をゆっくりと動かしながら、姿勢制御用のコンソールを左手で操作しつつ、出力調整のペダルを小刻みに踏む。


 港内の誘導灯が伸びていき、出港用の外部ハッチが八分割されて開いていく。

 慣れてない宇宙船パイロットだと、入出港時に壁に擦ったりするくらい狭いカプセル型港内を、古びたゴツい輸送船「ぶっとびタートル号」がスムーズに宇宙へと出港していく。

やっと宇宙にでました!

続きはのんびりと待って頂けたら嬉しいです。


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