旅立ち
やっぱりこれが好きって気持ちなんだ。
偶然、君と目が合った。
だんだんと近付く距離に、胸は張り裂けそうなのに頭や手足は冷えきっていて。
加速していく意識と正反対に、世界がとてもゆっくりに感じられる。
越えてしまえば楽なのに。
踏み出す一歩がどうしようもなく重くて。
靴も脱ぎ捨てて、空を見上げた。
ようやく辿り着いたこの場所で。
感情のままにここに来ようと思った。
辛いことばかりで、何が辛いのかもわからなくなって。
君と出会えたことすら嫌になった自分も嫌いで。
すれ違いやお互い以外のことでも苛立ちが募っていく。
いつからか分からなくなっていた。
君が好きだということ。
伝えた気持ちに嘘なんてひとつもなかったはずなのに。
初めて会ったあの時からずっと。
まるで、これが運命なんだろうって。
あぁ、なんて、あべこべな景色。
最後の口付けも、逆さまなまま。