追憶 1
《とある屋敷での大人たちの会話》
「あの瞳の色をご覧になった?」
「勿論見ましたわ。今日こちらに伺った楽しみに一つですもの」
「噂では聞いていましたけど、あの瞳を見ているとなんだか吸い込まれてしまいそう」
「本当に。じっと見ていると自分を見透かされそうですわ」
「それにとても利発そうなお顔立ちで」
「あの子の将来が楽しみですわね」
「あの子を見たかい?」
「あ~さっき挨拶してきた。噂では聞いていたけど、本当に凄いな、あの瞳は」
「私もこの目で見るまで信じられなかったよ」
「それに聡明な顔立ちだったじゃないか」
「そうだな。あの瞳で、あの落ち着いた雰囲気。将来が期待できそうだ」
「そうなると、跡継ぎの有力候補ということになるか」
「だろうな。これは色々大変そうだな」
自分がいるところでは、いつも耳にする大人たちの言葉
「誰も本当の自分を見てくれない……見ているのは瞳の色だけ」
《とある部屋での会話》
「で、何か分かったか」
「はい。例の件の調査を行なっていた所、我が国の海域に彼らが侵入してきたと、あの国から内密に連絡が入りました。こちらが彼らの居る場所となります」
そう言って、居場所を印した地図を机の上に広げた。
「ふむ。場所からして、彼らが向かうところは・・・。はぁ~、また厄介なところに向かってくれたものだな」
「本当に。しかし、既に我々の海域に入っているということは、こちらで捕らえる必要がありますね」
「そうなるな。あの国に勝手に入って来られても面倒だし、取り押さえはこちらで対応した方がいいだろう。但し、方法は少し検討した方がいいな」
「そうですね。あまり目立った方法を取ると、両国間の関係も悪くなりますし、場所が場所だけに、国内の人間にもあまり知られたくないですからね。できるだけ内密に事を処理したいと考えております」
「それが良いだろう。では、どうやって事を荒立てずに自体を収束させるべきか……」
「少数精鋭部隊で対処しますか?」
「まあそうなるとは思うが、突然彼らが動き出したとなっては、それを気にする者もでるだろう。動かすには何か本来とは別の理由が欲しいな」
「それを隠れ蓑にして、部隊を派遣すると」
「他の人が気が付いても納得して貰える理由があるといいのだが・・・。彼らが居るところから、あそこまでどのくらい掛かるか分かるか?」
「恐らく半月は掛からないかと」
「まだ少しは時間があるな。それであれば、一つ良い案を思いつた。これならどうだろうか・・・」
「分かりました。その方向で、こちらも準備を致します」
「よろしく頼む」