1 - その後のライナスとマーシャル
会議を終えて、国政棟を出て渡り廊下を歩いている青年が二人。ライナスとマーシャルだ。
「結局俺達も父上達の手の上で転がされていたってことか」
「そうなるね。父上に別の思惑があるだろうな~とは、薄々思っていたけど、まさか僕達の行動まで読まれていたとは、僕達もまだまだだね」
「そうだな。あそこまで狡猾にはできないな」
「正直、僕はああはなりたくないけど」
「でも、お前どうして父上の思惑に気がついていながら、何もせずオリヴィアを島へ行かせたんだ?」
「確証があった訳じゃなかったし、もし当たっていたとしても、父上がオリヴィアを危険な目に合わせるはずがないから、守る方法も一緒に考えていると思ったんだ」
「だから黙っていたと言う訳か」
「そうだね。それに、オリヴィアには人が多いグラバラードから離れて、自分の事をゆっくり考えて欲しかったし。今回の事で、結果的にオリヴィアは一歩踏み出せたと思っているよ」
「確かにな。相変わらず、オリヴィアに対しては色々考えているな」
「勿論!だって僕の趣味は『妹の成長を見守る』だからね」
ニッコリと微笑んだ。
「そうだな」とマーシャルの偏った愛情に呆れながら、ライナスが話を変えた。
「話は変わるが、父上が国秘と言っていた物って何だったんだろうか?」
「それは想像がつくよ」
「え。それはなんだ?」
マーシャルが小声でライナスに言った。
「多分、『魔石』かな」
「『魔石』?」
ライナスも小声で驚いた。
「証拠がある訳じゃないんだけどね。『魔石』がどこで発掘できるかを知っているのは、魔術棟で働いている人間でも上層部のさらに一部の人間だけなんだ。僕は媒体を使った魔術が専門だから、詳しくは知らないけど、『魔石』自体はかなり強い力を持っているから、使い方を誤ると大惨事になるじゃない?そういうこともあって、簡単には入手できないように管理されているはずなんだ。窃盗団はどうやって情報を入手したのかは知らないけど、その存在を知って盗みに来たんじゃないかって思っている。それで父上は国王騎士団を使って秘密裏に動いたんじゃないかな」
「なるほどな。確かにそれだと父上の今回どうして回りくどい方法を取ったのか説明できるか。それにしてもよく分かったな」
「以前ちょっと考えたことがあったんだ。保管すると言っても、魔術棟ですべてを管理するのは無理がある気がしたし、それ以外の場所で管理するとなると、人員を割かないとならない。理由なくそんなことしていたら逆に目立つでしょ?ガルバラ島であれば、ガローシャ国民は『妖獣の住む島』という認識が強いから、他になにかあるとは考えにくいし、他国の人間があそこへ行ったとしても、妖獣を制御する方法を知らないはずだから、闇雲に動くと妖獣に襲わないとも限らない。とそんな理由で『魔石』を保管するのであれば『ガルバラ島』では?と思っていたんだ」
「じゃ~窃盗団は、どこからそんな情報得たのかね?」
「さ~そこまでは分からないよ。そこは父上達が、これから聞き出していくんじゃない?」
「それもそうだな。事態が大事だとするなら、俺達の耳にも入ってくるだろう」
「そうだね」
「取り敢えずは、フローリアにも今回の件を報告しないとな」
「恐らくヤキモチしながら、バートウィッスルで待っているんじゃないかな」
「何か色々言われそうだな」
「言われるだろうね」
「は~。仕方がない。魔術棟のお前の部屋に戻って、フローリアと連絡を取るか」
二人はそのまま魔術棟への渡り廊下に向かって歩いて行った。




