2 - 明かされた真実
文字数がオーバーして途中で切れてしまったので修正しました。後半は3話目に入れています。
「まずはじめに、どこから話をしようか」
エドモンドは話の口火を切った。
「昨日お話させて頂きましたが、ガルバラ島にいた王国騎士が捕まえた奴らは誰なんですか?危険があると分かっていたのに、何故オリヴィア達が島に行くように勧めたのですか?」
ライナスがエドモンドに質問をした。
「『はじめに』いうか、全てだな。まず最初の質問に対しての回答だが、既に国王騎士からも聞いたかもしれないが、とある国から我が国に窃盗団が流れて、ガルバラ島に向かっているという情報を得た。彼らが島で狙っていた物は申し訳ないが、国秘なのでここでは言えない。ただ国にとって重要なものである。ということだけ理解してもらいたい。そういう物を狙う輩を逮捕するために、国王騎士を派遣することになった。で、二番目の質問だが、最初の回答の続きにもなるが、逮捕した窃盗団は、情報を流してくれた国の人間だが、盗もうとしているものに問題があり、表立って捕まえると両国間の問題になりかねない。そこで騎士を島に派遣したことを悟られないように極秘に行動を移す必要あった。そこで思いつたのが、オリヴィア達にガルバラ島へ行って妖獣を捉えて来ることだった。早めに妖獣を入手して欲しいということは本音であったし、騎士を現地まで連れて行くのは良い隠れ蓑だと思ったのだ」
オリヴィアは黙って話を聞いていた。
「それでは、オリヴィア達が窃盗団に遭遇して危険な目に合う可能性があるのは承知だったということですか?」
ライナスはエドモンドに向かって詰め寄った。
「多少の危険はあると思っていたが、こちらも細心の注意は払っていたつもりだったのだ。
騎士達は、ガルバラ島で停泊している船で待機するよう言っておいたが、何かあれば直ぐに駆けつけられるようにしていた。そして何かあれば、狼煙を上げて騎士達に連絡してもらうようにセドリックに依頼をしたのだ」
「どうして私達にも黙っていたの?」
フィオナがセドリックに尋ねた。
「済まない」
セドリックが目を伏せたまま、それ以上は口を噤んだ。
「彼を攻めないでくれ。今回の事は極秘事項であると念を押していたからな。皆に言えなくて当然なのだよ。」
セドリックとの仲裁に入るためにエドモンドが話に割り込んだ。
「どうして彼だったのですか?」
今度のライナスが聞いた。
「それは彼の剣術が現役騎士団に匹敵する実力の持ち主だからだよ。とは言っても、勿論危険は伴わないように細心の注意はするつもりでいた。連絡を貰えれば直ぐに駆けつけられるよう準備はしていたが、もしもの時は時間を稼ぐ為に戦ってもらわないといけない可能性もあったからな。逆にこちらから質問したいのだが、まず一つ目。王国騎士からは、彼らが狼煙に気が付き飛んで行った時、盗賊団は木に枝に巻き込まれて動けない状態でその場に居たと報告を受けた。セドリックに頼んだのは狼煙を上げて騎士たちに知らせることだけで、窃盗団の動きを止めることまではしていない。彼らに何をやった?」
エドモンドは、ライナス、マーシャル、オリヴィアに目を向けながら問うた。
「魔道具を使ったんですよ。何かに遭遇した場合を想定して動きを止める魔道具を用意していたんです」
マーシャルがニッコリ笑って説明した。
「動きを止める?」
「はい。兄上と僕からも、ちょっと依頼事項があって、エミリオに何か問題が発生した時は、相手にこの魔道具を使って欲しいと事前にお願いして渡しておいたんです」
「何故エミリオだったのだ?」
今度はエドモンドがマーシャルに聞いた。
「ま~なんとなくです。一番適任だと思っただけですよ」
マーシャルは笑顔で答えた。
「なるほど。その話を掘り下げるのは後回しにしよう。そこで二つ目の質問だが、どうしてライナスとマーシャルがガルバラ島へ行っていたのだ?」
エドモンドが次の質問に話題を変えた。
「自分にも関係があるので情けない話ですが、私に思いを寄せてくれている者達が、オリヴィアの邪魔をしようと画策しているのを知ったので、それを止めようと思い、島へ向かいました」
ライナスは、右隣に座っている二人を見た。
「事前に抑えることも可能ではあったのですが、やっていないと言われかねないので、俺としては現場を押さえ、言い逃れが出来ない状態で、やめるよう言おうと思ったのです。事を起こす前には捕まえられたので、未遂ではありますが」
事件は発生していないので、表立って事件として取り上げるつもりはないとライナスは説明した。
「そうか。ライナスを傾倒するあまり、まともな判断ができなくなったか。既にライナスからも質問があったかもしれないが、どうしてオリヴィアの邪魔をしようと考えたのだ?」
エドモンドは静かに尋ねた。最初に口を開いたのはジェラルドだ。
「ライナス様にも申し上げましたが、私たちは、ライナス様を尊敬しています。国王の後を継ぐのはライナス様だと思っています。しかし、オクタビオンで働く人達の中で、オリヴィア様こそ後を継ぐのに相応しいという輩も大勢います。先日の特性判断で『国政』に決まってからは、更にその空気が高まっています。確かに、オリヴィア様は『紺青の瞳』の持ち主であり、とても聡明な方だとは思っております。しかし私達が望んでいる、人々を引っ張ってくれる力強さはないと思っています。周りの人間がその見た目に惑われているのであれば、私達が正したいと思い、今回のようなことを計画致しました」
色々思いがあったのか、一気にまくし立てた。それを聞いたオリヴィアが、唇に力を入れて、目に力を入れながら机の一点を見つめていた。オリヴィアの目の前で言われた『紺青の瞳』という言葉とオリヴィアの態度にフィオナ達五人は、ぐっと手に力を込めた。オリヴィアの様子を横目で見ていたマーシャルは虫けらを見るような目つきでジュラルドを見ていた。
「勝手なことを言わないでくれ。俺とオリヴィアは十歳も違うんだ、今を比較すれば俺が勝っているものが多いのは当然だ。それに俺もオリヴィアも別に次期の王位なんて目指していない。なったらなったで覚悟を決めるだけで、そのために今の仕事をやっている訳でもない。妹をそういう政権争いに巻き込まないでくれ」
ライナスは怒りのあまり拳をつくり机の上を叩いた。
「お二人がどう思われていようが、そう思う者達が多いということです」
マリオンが声を絞り出すように言った。
「オリヴィア様がどのような方であっても、『紺青の瞳』を持っていると言うだけで、人々から国を収めるに値する人だと判断されるのです」
「『紺青の瞳』というのはそれ程、人々の心を惑わせるのです」
「オリヴィア様がどうだということではなく、『紺青の瞳』の所有者ということが問題ないのです」
「このまま放っておけば、自体は大変なことになるはずです。我々はその前にライナス様こそ次期国王に相応しいということを皆に知らしめる必要があるんです」
ジェラルドが声を張り上げた。
「そんなこと俺達には関係ないことだろ?」
ライナスは左手で髪をくしゃくしゃにした。
今まで黙って話を聞いていたフィオナが立ち上がり、二人に向かって口を開いた。
「若輩者が失礼を承知で申し上げます。ジェラルド様、マリオン様、今お二人とも、『紺青の瞳』持っているせいで、周りから評価されて。とおっしゃっていますが、非難されている方達よりも、余程この瞳の色の影響を受けていらっしゃるように思います。オリヴィアの瞳の色が何色でも構わないじゃないですか。今の私には何が王として相応しい要素なのか分かりません。しかし、彼女の瞳の色が何色だって、彼女は優秀だと思っています。偏見に囚われない、平等な目を持っています。いつも周りに目を向けてくれるような広い目も持っています。それが、王に相応しい気質なのかは分かりませんが、十分人の上には立てる人間だと私は考えています。オリヴィアの事をよく知ろうとしないで、勝手なことを言わないでください!」
フィオナは精一杯大人たちの前に自分の意見を言った。それを聞いたオリヴィアが、ずっと力を入れていた瞳から、一滴涙がこぼれ頬を伝って机に落ちた。それを目撃したライナスは驚愕し、マーシャルは黙ってオリヴィアを見ていた。フィオナは席に座り直し、慈愛の目を向け左手でオリヴィアの背中をそっと撫でた。
「このまま周りの者達に言いたいことを言わせたままでよいのか?オリヴィア。折角の機会だ。今思っていることを言ってみなさい。お前が心の内で思っていることを吐き出しなさい」
エドモンドは、娘の目をじっと見つめ、そう促した。
「…………」
オリヴィアは、涙を流さないように目と口に力を入れすぎたため、直ぐには言葉を出すことが出来なかった。一度目をつぶり、何度も深呼吸を繰り返してから、ポツリポツリと話始めた。
「私は、この瞳の色で生まれてきたことで、今まで多くの方達に様々なことを言われてきました。『認める』という人も、『認めない』という人も、どちらも引き合いに出すのは、この瞳の色でした。結局その方達には、私がどういう人間かとかではなく、瞳の色が『紺青の瞳』かどうかでしか判断してくれませんでした」
ふぅ。と一度息を吐き、続きを話した。
「そういう方達と接していく内に、どういう自分であれば良いのか分からなくなるんです。望んだ通りの結果を出した自分が本当の自分なのか。そうでないのか。そんなことを考えていると、いつも人の目が気になってきて、相手によって自分を変えていっているのでないか?と思うようになって、どの時の自分が本来の自分なのか分からなくって、段々どうして良いか分からなくなってしまった時もあります。ジェラルド様やマリオン様が私は王の器ではないと先程おっしゃいましたが、王の器とは何なのでしょうか?私は特に王位は望んでいません。私が王の器ではないと、私の価値はないのでしょうか?先月の特性判定で『国政』に決まって、私は少しでも多くを学び、皆様が期待した自分になれるようにと思って頑張ってきました。それはいけないことだったのでしょうか?私はどうすれば本来の自分を見て貰うことができるようになるのでしょうか?」
一度流れた涙は止まらず、幼少の頃からずっと持ち続けていた、しかし、誰にも相談できなかった心の闇を外に吐き出し、周りが少し重たい空気になった。それを破ったのは父であるエドモンドだ。
「やっと口に出して言えたな、オリヴィア。言った内容がすべて正しいとか、間違っているとかではないが、お前の場合は、まず思っていることを口に出す事が大事だ。さっきお前も言っていたが、瞳の色のせいで、評価するのも避難するのも周りのせいであって、お前のせいではない。一々そんなところで悩まなくて良い。我々家族が一度でもお前の瞳の色が理由で何かを結論付けたことがあるか?」
オリヴィアは、涙を流しながら顔を横に振った。
「確かに言い伝えによると、お前の『紺青の瞳』は、人々を安寧に導く者に出ると言われてはいる。しかし、特に“国を治める”とも“王になる”とも言われている訳ではない。勝手に周りが拡大解釈をして騒ぎ立てているだけだ。ジェラルド、マリオン君たちにも同じ事を言うが、そもそも言い伝えは言い伝えだ。そんなことに一々流されるな。それにライナスが後を継ぐのかどうかについても、現時点では全く決めていない。私が王の職を辞する時にライナスが適任と判断すればそうなるだろうし。国政で働いている人間で他に適任者がいれば、息子がいても、その人物に委ねるかもしれない。我が国は一応世襲制の様なものをとっているが、そもそも王家の子供に一人は『国政』が現れると決まっているわけではないから、素晴らしい人材が他にいるのであれば、養子縁組をしてでも、そやつに継がせるだけだ。それに、悪いがまだまだ引退する気は無いから、暫くは、次期王についてなど考えるつもりはない。そんなことで鬱々悩んで、仕事がおざなりになるくらいなら、まず自分の仕事をしっかりしなさい」
エドモンドの言葉に、ジェラルドとマリオンがしゅんと下を向いた。
「ライナス。悪いが今の所、後継者としてまだ決定はしていない。今後のお前の進む道次第だから頑張りなさい。それと元々彼らはお前の信奉者だ。責任を持って正しく導いてあげなさい」
「別に王様の座は希望していませんが……。といっても王族に生まれたのですから、彼らの正しいところへ導くというのは、責任をもってやりましょうかね」
ライナスは、ちょっと砕けて答えた。




