11 - エミリオの妖獣
更に飛行して暫くすると、突然目の前に木々に囲まれた高い山が聳え立っているのが見えてきた。
「方向からすると、あの山の方向にエミリオの妖獣が居そうだね。今羅針盤は何色?」
ランドルフが後ろに乗っているエミリオに声を掛けた。
「羅針盤は“橙”だね。もしかしてあの山の中なのかな?近くまで行ってもらえる?」
「勿論!みんな~、目の前に見える山が目的地みたいだから、ちょっと速度を上げて近づくよ~!」
ランドルフは、両脇で飛んでいる四人にそう伝えて、スピードを上げて先に進んだ。
目の前に聳える山は、妖獣で飛んでいるにも関わらず、更に見上げるほどの高さがあった。
「今妖獣で飛んでいるから良いけど、歩いてこの山の天辺まで行けって言われたら、正直何日掛るんだろう。皆と一緒に来て本当に良かったよ~」
エミリオは、目の前の山の高さに驚き、そう呟いた。
「本当だよな。船から見たときはこんな高い山があるなんて想像もつかなかったよ。それに、色々景色が変わるし。ホント、不思議な島だよな。ま~妖獣が生息しているくらいだもんな。そんなものかもしれないけど……」
ランドルフもガルバラ島での感想を口にした。目的の山へは刻々と近づいている。
「もしかして頂上かな」
何かを感じたらしいエミリオが突然言い出した。
「頂上?」
「うん。何となくなんだけど、山の中腹とかじゃなくって、頂上にいる気がする。頂上まで上がって貰える?」
「いいよ。遠くからでも居場所が分かるなんて、これから対面する妖獣はエミリオと相性がいいのかもしれないな。ちょっと傾くからしっかり掴まって!」
ランドルフは、妖獣を上に向け山の頂上に向かって更に高度を上げた。
山の上空から見える山頂は、鬱蒼とした木々で覆われている山の中で、そこだけ切り取られたように草原になっていた。そこに一体の黒い動物が上空に飛んでいるエミリオ達を見上げているのが確認できた。
「エミリオ、黒い動物が一体いるわ!何だかこちらを見ているみたいだけど」
オリヴィアが、エミリオに受かって声を掛けた。
「そうみたいだね。ランドルフ、僕を山頂に下ろして貰える?」
エミリオは、にっこりオリヴィアに微笑んでから、ランドルフに向かって頼んだ。山頂に降り立ったエミリオの目の前にいた黒い動物は、一般の黒豹を二回り程度大きくしたような様な妖獣だった。深緑を思わせるような艶を持った黒の毛並みに、エメラルドを嵌め込んだ様な美しい緑色の瞳をしていた。
「綺麗……」
エミリオの後ろで控えていたオリヴィアは、思わず呟いた。
「君が僕の妖獣?始めまして、僕はエミリオ・ルジャンドル。良かったら君の名前を教えて貰えないだろうか?」
エミリオが、妖獣から五メートル近くまで近づき話始めた。エミリオの声が聞こえたのか、妖獣はエミリオに近付き頭を垂れた。
「わ~。魔道具を使わずに頭を垂れてしまったよ~。凄いな。エミリオ」
後ろでその光景を見ていたルーファスがそう言った。
「こっちに向かっている途中から、妖獣の居場所がエミリオにも分かったみたいだったからね。相当相性が良いんだろうね」
ランドルフがルーファスの感想に答えた。
エミリオは、頭を垂れた妖獣の眉間に水晶を嵌め込んで無事使役を完了させていた。
「君は『ジャスター』っていうんだね。よろしく『ジャスター』」
そう妖獣に向かって話しかけ、艶のある毛並みを撫でていた。妖獣は使役すると使役した相手に自分の名前を明かす。今までの四人も自分の妖獣の名前を聞いていた。
「でも、エミリオの妖獣が黒豹だったとはちょっと驚きだな」
ランドルフが意外そうな顔をした。
「そう?」
「ま、勝手なイメージってだけなんだけどな。何かエミリオの雰囲気だったら、黒っていうより白って感じだし。獣って言うより鳥っぽい気がしたんだ。だから精悍な黒豹が出てきてちょっと驚いた」
「確かに。正直僕も黒豹が出てきて驚いたよ。でも、一目見た時から『これは僕の妖獣だ』って直感で感じたから違和感は無いよ」
にっこり微笑んでランドルフに答えた。




