7 - 判断
ランドルフが、オリヴィアと合流する少し前に話は遡る。
「残りはフィオナの妖獣だけだな」
太陽が真上に登る頃、フィオナ達は、二体目の妖獣の使役に成功していた。三人は妖獣に跨がり、フィオナの羅針盤が示す方角へと進んでいた。
「この調子なら夕方までには、皆と合流できそうだね」
「羅針盤の色って、今”橙”だよな?」
「そうよ」
フィオナは、自分の羅針盤を確認しながらランドルフに答えた。
「今までと違って今回は妖獣で移動しているんだ。目的地までは夕方まで掛からないかもしれないね」
そんな他愛のない会話を三人でしていると、突然耳を抑えたくなるような爆音が、辺りの空気を震わした。
「何今の!」
フィオナがビクッと肩を竦ませた。フィオナの声に反応するように、二体の妖獣は一旦飛行をやめ、上空でピタリと止まった。
「凄い音だったな。何なんだ今のは……。おい。見てみろよ、向こうで煙が上がっている!」
ランドルフが煙が立ち上っている方向を指差した。
「音源は、あの煙の付近ってことかな?」
ルーファスも目を眇めてランドルフの指差す方を見た。
「ちょっと!オリヴィア達は今どこにいるの!」
フィオナは背後に跨っているルーファスの方に顔を向けた。その顔はオリヴィアに何かあったのではと青ざめていた。
「ちょっと待ってね。確認するから……。まずいな。方向からするとオリヴィア達の方だ!」
上着の裏のポケットに入れていた羅針盤を取り出し、方向を確認したルーファスが眉をひそめた。
「どういうこと!どうして!まさか、妖獣が暴れだしたって訳じゃないでしょ!」
ルーファスを見る顔が更に青ざめる。
「僕に聞かれたって分からないよ!でも、何かが起きたことは確かだね。兎に角、僕達もオリヴィア達の所へ駆けつけた方が良いね」
「そうね!オリヴィア達に何かあってからでは遅いもの!」
オリヴィア達の元へ駆け付けようと二人が騒ぎ始めた時、
「ちょっと待って! あっちを見ろよ!」
ランドルフが、昨日出発した地点と思しき方向を指差した。
「何か飛んでるわね。遠くてよく見えないけど……」
フィオナが、正体を確認しようと目を細めた。
「ちょっと待って。僕が確認するよ」
ルーファスは頭に付けているゴーグルを目に付けた。これはルーファスが発明した代物で、本来のゴーグルの役割以外に度数調整ができ、双眼鏡の機能も持っている。
「あれは……。ロイヤルブルーの装飾……ということは国王騎士団だ!」
正体が分かったルーファスは驚きを隠せない。
「なんで国王騎士団がこんなところにいるの?」
「こっちが聞きたいよ!でもさ、さっきの煙って、あれ、狼煙だよな。だから、それを合図に国王騎士団が来たんだと思う。と、いうことは、ここで何かあるって事が事前に分かっていたのかな……」
ランドルフは、途中から独り事の様に呟いた。
「俺、ちょっとオリヴィアの所へ行ってくる!」
ランドルフは突然、妖獣の向きをオリヴィア達がいるだろう方向へと切り替えた。
「なら、私達も行くわ!」
ランドルフに向かって叫んだ。
「いや、国王騎士団が出てきているんだから、オリヴィア達に直接被害は無いと思うんだ。だったら、フィオナは自分の妖獣を先に捕まえてから来た方がいい。オリヴィアに余計な心配はさせたくないんだろ?」
「それは、そうだけど……」
「俺なら多少人出として使えると思うから、何か手伝える事が無いか確認してくるよ。だからフィオナは、ルーファスと一緒にまずは自分の妖獣を捕まえてきて、終わったら合流しよう。オリヴィアには、そう伝えておくから」
ランドルフは、フィオナの目を見て今やるべき事を伝えた。
「分かったわ。まずは自分の事をしてから……ね。ルーファス、さっさと終わらせて皆と合流するわよ!」
「了解!」
「ルーファス。悪いが、フィオナを頼んだ!」
「任せておいて!フィオナのフォローは僕がしておくよ」
ランドルフは、二人に頷き、体を妖獣に沈めたかと思うと、もの凄いスピードで煙が上がっていた方向へと飛んでいった。
「さっき使役したばっかりなのに、凄いスピードだな」
あまりの飛行の速さに残された二人は呆然となった。
「捕まえたばかりなのに、あんなに直ぐに乗りこなせる物なの?」
「そうだね。結構自分の意志で動かすことは可能だけどね。あの速さで飛ぶのは僕は少し怖いかな」
「そうよね。あれはランドルフだからってところかしらね。運動神経と身軽さはピカイチだもの」
「だと思うよ。取り敢えず、僕達の目的は早く達成させようか」
フィオナの妖獣を目指して、二人も目的の場所に向かって飛んでいった。
5章はもう少し続きます。




