4 - 状況整理
「ここまでくれば大丈夫か。オリヴィア、平気か?」
エミリオに足止めを頼んでから、不審者達の声が聞こえなくなるまで必死走った。漸く声が聞こえなくなったところで、セドリックは一旦足を止めるようにオリヴィアに声を掛けた。
「はぁ。はぁ。大丈夫よ」
体を丸め、手を膝に置き、息を切らしながら、セドリックを見た。
「無理はしなくていい。息を整えたら、また進もう」
セドリックは、オリヴィアの息が整うのを待った。
「足を引っ張ってしまってごめんなさい。ふう~。もう大丈夫よ。先に進みましょう」
「こんなこと想定していなかったんだ。気にするな。もう、走る必要は無いから、急いで先を進もう」
セドリックの掛け声で、二人は先を急いた。
「エミリオ、大丈夫かしら?彼等に掴まったりしていないかしら?」
エミリオを置いてきてしまった事を気に掛けているオリヴィアは、心配を口にした。
「エミリオは、出来ないことを出来ると言う奴じゃない。勝算があるから言ったんだと思う。それに、さっき助けを呼んでいるから、大丈夫だ」
「それって、走る前にセドリックが空に投げたものを言っているの?あれば何?」
セドリックが口を開こうとしたところで、地面が大きく揺れ、エミリオの居る方から爆音が聞こえた。また、今まで視界を遮っていた、霧も今の爆音と共に一気に消えてしまった。
「今の何!」
「分からない。ただ、エミリオが、何か考えがあると言っていたし、それに関連しているんじゃないのか?」
「何をしたのかしら?」
「それより視界も開けた事だし、俺達は妖獣を見付けるのを優先しよう」
「そ、そうよね……」
後ろ髪を引かれる思いで、先へ進んだ。
「オリヴィア無事か~?」
暫く進むと前方から走りながら来た人物を見て驚いた。
「ライナス兄様とマーシャル兄様。何でここに?」
「オリヴィア、無事でよかった!突然爆音が聞こえたから心配したんだよ」
オリヴィアの質問には答えず、ライナスが両手でオリヴィアの頬を押さえ顔をのぞき込んだ。
「あの爆音は、恐らくエミリオに渡した物を使ったからだと思うんだけど、何かあった?」
マーシャルが質問してきた。
「妖獣を見付けるために歩いていたら、突然不法侵入と思われる人達に遭遇して、彼等に気付かれないように歩いていたんだけど、途中で気付かれてしまって、エミリオが彼等を足止めするために残ったの」
オリヴィアが、マーシャルに答えた。
「エミリオは、マーシャ様から預かったものがあると言っていましたが、あれは何ですか?」
セドリックは、この爆音と振動の原因をマーシャルが知っていると思い尋ねた。
「やはり何かあったね。エミリオに渡した物は魔道具の一つなんだけど、音程は攻撃性は強くないんだ。ただ、魔道具を使った場所の半径二メートルくらいの範囲にいる人は、一時的に足止めができているはずだよ。ただ、地面がこんなに揺れるのは想定外だったな。思ったよりもエミリオは魔道具を使う力が強いのかな」
マーシャルはにっこりと笑って答えた。
「この前何か渡しているな~っと思っていたら、そんなもん渡していたのか?どんなものか分からないもの渡されて、突然あの爆音と振動があったら驚くよな」
ライナスがマーシャルの回答を聞いて呆れながら言った。
「一つ気になったんだけど、さっき狼煙も上がったよね。あれば、誰が上げたのかな?」
マーシャルが、二人に尋ねた。
「俺です」
セドリックが、片手を上げた。
「それはどうして……。ん?」
理由をライナスが問おうとした所、空を飛んでいる妖獣を見つけて、目を凝らした。
「人が乗っているよな。あの制服……国王騎士じゃないのか……」
独り事のようにライナスが呟いた。
「なるほど、先ほどの狼煙は、これを呼ぶ為だったんだね」
手を顎に置いて、マーシャルは一つ頷き、セドリックを見た。
「はい。理由は分かりませんが、ここに来る時に国王様から誰かと遭遇する可能性があると言われていまして、その時は狼煙を上げて教えて欲しいと頼まれていたんです。それで俺が逃げる前に狼煙を上げました。国王騎士が来たのは恐らくそれが理由かと」
「父上が? 何故?っ聞いても分からないよな。セドリック」
「はい。申し訳ないのですが……」
セドリックは頭を下げた。
「ここで憶測を交えても仕方がないよな。俺達も行った方が良いんじゃないのか?」
ライナスが、皆で戻ろうと提案してきた。
「ちょっと待って。ライナス兄様。実は、この近くにセドリックの妖獣が居るはずなの。遭遇した彼等の話を聞いた限りでは、この島に妖獣が生息している事も知らないみたいで、誤って妖獣に遭遇してしまって、妖獣が暴れだしてからでは、私達の手に負えないと思って、セドリックと私は、先を急いでいたの。エミリオが、彼等全員を足止め出来ているとは限らないから、万が一に備えて、先にセドリックの妖獣を使役しに行きたい」
オリヴィアは、慌ててライナスの提案を止めた。
「国王騎士たちに、事情を聞きたい所だが、オリヴィアの話も一理あるな」
ライナスは、どちらを優先させるか、腕を組んで考えた。
「エミリオの所には、僕が行くよ。魔道具を渡したのも僕だしね。兄上、国王騎士達には僕から事情を確認するから、兄上はオリヴィアと一緒に向かった方がいいんじゃない?本当に残党が居るとしたら、セドリック一人より、兄上と二人の方が、オリヴィアの安全性が高くなるし」
マーシャルが、自分だけ別行動をすることを提案した。
「そうだな。ではマーシャル、エミリオと不審者達の対応は任せた。こっちが一段落したら、そっちに向かう」
「了解。じゃ~僕は先に行くね」
そう言って、オリヴィア達が来た道へと走って消えていった。
「じゃ~。俺達は、妖獣を捕まえるとするか」
ライナスの言葉に頷いて、三人は前へと進んでいった。




