プロローグ
薄暗い廊下を抜けると、目的の部屋へと到着した。ここは、ある儀式を行うための場所。百人程が収容できる正八角形をした部屋で、床は磨き上げられた純白の大理石、壁も同じ大理石が通常の建物の倍の高さまで伸び、そこから天井へとドーム型になっている。壁の上半分は正八角形の一辺ずつにステンドグラスが嵌め込まれ、北側から時計回りに、紫・青・水・緑・黄・橙・赤・桃と異なる色が使われている。それぞれのステンドグラスからは、その色が指し示す神々の姿が太陽の光を浴びて浮かび上がる。壁の下半分に目を落とすと、それぞれの壁には人が一人ずつ立ち、中央には魔法陣が描かれ薄い光を放っていた。魔法陣は、大人三人が手を広げて横に並んだ程度の大きさで、形は八芒星をモチーフにした幾何学模様が施されている。
「オリヴィア、前へ」
青のステンドグラスの下に立っていた人物のよく通る声と共に、アッシュ掛かった薄緑色の髪の少女は魔法陣の上へゆっくり移動した。魔法陣の光で彼女の紺青の瞳が薄青く光り、知性的な美しい顔に神秘的なベールを纏う。魔法陣を眺めたまま、無意識に一つ深呼吸をすると、魔法陣が青色に光り始め、部屋全体が青色に染まった。
先程と同じ人物の声が部屋中に響き渡った。
「オリヴィア・ファンタニア、あなたの特性は、ラティファが守護神、青の『国政』である」
その声を聞いて、少女はゆっくりと顔を上に向けた。青のステンドグラスが他の七色よりも光り輝いて見え、青のステンドグラスに描かれている女性の姿が目に焼き付いた。
同時に外では、少女が立っている建物の囲むように立ち並ぶ八つの建物から『青い』煙が同時に打ち上がった。
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ある一室で数人が建物から立ち上がった煙を見ていた。
「結果が出たみたいだね。青い煙が上がったよ」
「青い煙か。ま~そうとは思っていたけどな」
「これからどうなるかな?」
「そうだな。直ぐにどうにかなるとは思っていないが、このまま平穏無事とも言えないだろうな。暫くは様子を伺うしか無いだろう」
「そんな悠長な事を言っていて大丈夫なの!のんびり構えている間に、あの子に何かあったらどうするの!」
「大丈夫。そんな事はさせないよ!相手は今時点では何もしてないのに、怪しいと言うだけで、手を出す訳にもいかないし。逆に変な動きを見せて相手に警戒心を植えつけても意味が無い。彼らが動き出すまでは、暫くは黙って見ているしか無いだろ。少しでも怪しい動きをしたら直ぐに動くから安心しろ」
「じゃ~僕は彼らが動き出し易くするための手伝いでもしようかな。ただ、黙って待っているなんて性に合わないし。それにつまらないからね」
「つまらないってどういうことよ。これは遊びじゃないのよ。変なことしてあの子に被害が出るような事しないでよ!」
「大丈夫だよ。僕がそんな危ないことするはず無いじゃない」
「あなたが危なくないって思っていることは、一般的には十分危ない部類に入るのよ。貴方の発言が一番信頼できないのよ!」
「どうしてそんなこと言うのかな~?」
「もう!自分が一般から少しずれているって事認識しなさいよ!」
「おいおい、内輪で揉めてどうするんだよ。ここは皆で協力するところだろ。何か動きがあったら連絡するから、その時はまた皆で集まって対策考えよう」
「了解」
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別の一室でも同じ景色を見ていた者が数人。
「やはり『国政』に決まったな」
「可能性は高いと思っていたが、『国政』に決まったとなると、周りが騒がしくなhりそいうだな」
「そうだろうな。今までだって十分目障りだったが、『国政』に決まったとなっては、今まで以上に強気な態度に出るだろうしな」
「奴等は、大した思想も無いくせに、自分達が正しいと思っているからな、そういう態度を見ると本当に腹立たしい」
「折角、あの方も実績を積まれて、周りの評価が安定して来たというのに・・・・」
「本当に余計なことを。邪魔しないで頂きたいものだな」
「そんな悠長な事を言っていていいのですか?」
「なに?」
「状況を哀れんでいても、何も改善しませんよ」
「そんな事は分かっている。しかし、今自分達に何ができる?」
「そうですね。今すぐ何かを仕掛けるのは難しいですよね。でも、本当に邪魔なのであれば、早めに行動をした方が良いと思いますよ。あの方の未来を考えるのであればね」
「そうだな。あの方の未来の為に」
「そうですよ。あの方の未来を守ること、それ即ち、この国の未来を守ることになるのですから」
「この国の未来を守ること」
「そうですよ。まずは機会を伺う事にしましょう。チャンスが来たら対策を考えましょう」
「分かった」




