1 - カルビナに到着
オリヴィア達六人は、予定通り王都グラバラードを出発し、列車を二回乗り換えて、漸く『カルビナ』に到着した。ガローシャの北西部は、古の時代、『芸術』の神ベロニカが統治したと言われている土地で、芸術文化が盛んな地域として知られている。特に海沿いに近いカルビナは、『芸術の都』と呼ばれる大都市で、国内外の様々な芸術文化を見ることができる。
「ん~~。やっとここまで着いたね。さすがに四日間列車に揺られていると、体が硬いよ」
列車を降りたルーファスが、手を組んで腕を上に上げる形で伸びをした。
「マギルパルツァーにある本邸に帰る時も同じくらい掛かるけど、やっぱり数日列車に乗っていると疲れるわよね」
同じく手を組んだ腕を前に突き出して体を伸ばしていたフィオナが、ルーファスの意見に同意した。
「でもさ。全員でこんな遠くまで来たのって初めてだよな。旅行みたいで楽しくないか。だからかな、俺はそんなに疲れていないな。普段本邸に帰る時とかはさ、フィオナくらいしか一緒じゃないから本邸に着いた時にはホント、ヘトヘトなんだよな」
「本当だね。みんなでどこかに行くっていっても、エレンバレンから日帰りで帰れる距離くらいしか行くこと無かったしね。それに僕はカルビナに来るのは初めてなんだ。『芸術』の総本山、『芸術の都 カルビナ』。一度は行ってみたいところだよね」
ランドルフの感想に、フィオナが「はい?」と睨み付けた姿を横目に、エミリオが答えた。
「私もグラバラードから殆ど出たことがなかったから、みんなと一緒にここに来られて凄く嬉しい。『芸術の都』と言われるだけあって、王都に比べると建物の色彩が華やかよね」
オリヴィアは、初めて見るカルビナの風景に感激していた。
「オリヴィア。そろそろ船着場に移動した方がいいんじゃないか?国王様が用意してくれているガルバラ島までいく船の到着時間ってそろそろだろ?」
駅に備え付けられている時計を見たセドリックが、オリヴィアに声を掛けた。
「セドリックありがとう。本当ね。それじゃ、船着場まで行きましょう」
オリヴィア達は、それぞれの荷物を持ち直し、船着場へと移動した。
「船着場のどこに船が停泊しているかって分かるか?」
船着場に到着し、セドリックが周りを見渡しながら、オリヴィアに聞いた。カルビナには、海に向かって人工的に作られた船着場が数十箇所あり、それぞれの両側に大小様々な船が停泊していた。
「お父様の話では、鷹の彫刻が施されている船着場があって、そこの停泊しているみたい」
それぞれの船着場には、動物・鳥・魚などの彫刻が目印があり、区別できるようになっている。
「カルビナの船着場は、文字とか数字とかじゃなくって、生き物をモチーフにしているんだ。面白そう!」
「じゃ~早速探そうか。鷹の彫刻がある船着場」
ルーファスとエミリオは、早速鷹の彫刻が施されている船着場を探しに動き出した。
暫くすると、鷹の彫刻を見つけたとルーファスが戻ってきたので、みんなで彼の後をついていくと、今すぐ飛び立とうとするような躍動感のある鷹の石造りの彫刻が目に留まった。
「ここだよ」
ルーファスの声で船着場に止まっている船にみんな視線を移した。そこには、六人しか乗らないことを考えると大き過ぎる船が停泊していた。外装は、光沢のある白色と船底は鮮やかな青色をし、部屋の部分はニ階建てで、船の前後には広々とした甲板があり、複数の白いマストが、晴天の空に大きくはためいていた。
「うわ~。大きいな~。これ何人乗りなんだろう」
目の前の船に驚いたランドルフが、船を見たまま口を開けたまま、あっけに取られていた。
「オリヴィア・ファンタニア様でございますか?」
六人が船の大きさにあっけに取られていると、一人の男性が、船から降りてきた。
「はい。そうです」
「お待ちしておりました。この度オリヴィア様たちをガルバラ島までお連れします、船長のサムエル・バルトンと申します。グラバラードから遠路はるばるようこそお越しくださいました」
白い口髭を生やした、初老の穏やかそう風貌のサムエルがにっこり微笑んだ。
「オリヴィア様の他、五名乗船されると伺っております。お手数ですが確認させて頂きますね。フィオナ・アディントン様」
「はい」
手に持っていた乗船リストを見ながら、確認を始めたサムエルに向かって返事をした。続いて、セドリック、エミリオ、ライナス、ルーファスの順にサムエルは確認していった。
「はい。全員そろっていらっしゃいますね。それでは、手荷物をお預かりしますので、こちらの階段から船に上がってください。君たち、皆様の荷物をお預かりして」
階段から降りてきた船員達に荷物を預け、六人は船に乗り込んだ。




