2 - 道具の説明
ニ時前にはランドルフとエミリオも第三閲覧室にやってきた。フィオナ達に話した内容を二人にもすると、どちらも参加すると返事が返ってきた。当初の予定撮り、六人全員で妖獣を見つけに行くことになった。
ニ時を少し過ぎたところで、部屋の扉を叩く音が聞こえた。「はい」と声をかけて扉を開けば、マーシャルが一人立っていた。
「約束通り来たよ。お邪魔してもいい?」
「勿論。どうぞ、空いている席に座って」
オリヴィアがマーシャルを部屋に入るよう促し、マーシャルは、普段オリヴィアが定位置としている席の隣に腰を下ろした。
「既にオリヴィアから話は聞いていると思うけど、妖獣を捕まえる時に使用する魔道具をいくつか持ってきたから、ひと通り説明するね。分からない物があれば都度質問して」
マーシャルは、持ってきた袋の中から、いくつかの道具を出して机に置いた。
「まずは、妖獣を見つけるのに使うのは、この羅針盤」
机に乗せた羅針盤の使い方を、昨日エドモンドがオリヴィアに説明したように、五人にも説明した。五人は始めて目にした魔道具の話を興味深く聞いていた。
「次に、妖獣を捕まえる時に使用する魔道具だけど、特性によって種類が異なる。皆の特性はバラバラだから、一つずつ説明していくけど、最初はどれから説明する?」
マーシャルは、皆の顔を見た。
「じゃ~私からお願いします」
と手を上げたのは、フィオナだ。
「それじゃ~、フィオナの魔道具から説明するよ。特性は・・・」
「『金融』です」
「『金融』ね。『金融』の特性を持つ人が使う魔道具は、この鐘になる」
机の上に置かれた、金色の掌に乗せられる程度の大きさ鐘を指した。
「これですか?」
フィオナが、マーシャルが指を指した鐘を持ち上げた。
「羅針盤に示す方向に進んで妖獣を見つけたら、この鐘を鳴らして。鐘が音が妖獣に聞こえる範囲なら、特に近づく使う必要はない。逆に鐘を鳴らさずに、妖獣から五メートル以内に近づくと、妖獣は警戒して暴れだす可能性があるから、妖獣の顔が見える距離まできたら魔道具使った方がいいね」
「分かりました。因みに、鐘はただ鳴らせばいいんですか?」
「基本、魔道具を使うときには、発動する為の掛け声が必要になる。これらの魔道具を発動する場合は、『バデル』と言って魔道具を触って貰えればいい。発動すると一瞬魔道具が光るから状態は分かると思うよ」
「その状態になってから、鐘を鳴らせば良いんですね」
「その通り」
「使い方は分かりました。因みにこの鐘は・・・」
「今日持ってきている魔道具は、全て渡すつもりで持ってきているから、それはあげるよ」
「ありがとうございます。助かります」
「どう致しまして。じゃ~次は、誰にする?」
「じゃ~次は、僕でお願いします!」
元気な声と共に手を上げたのはルーファスだ。流石に王子を前に最初は緊張していたが、目新しい魔道具を前に好奇心の方が勝ったようだ。
「次は、ルーファスだね。君の特性は・・・確か、フェビアンと一緒だから、『技能』だよね」
「そうです!」
「『技能』の場合は、このリングを使って」
マーシャルは、頭に被れる程度の大きさの陶器で出来ているリングを指差した。
「これですか?う~ん、どうやって使うんだろう?」
ルーファスは、リングを手に取り、色んな角度からリンクを確かめた。
「このリングの場合は、リングを妖獣の上空に向かって投げて。魔道具が発動していれば、妖獣の方向にさえ向けて投げてくれれば、ある程度距離があっても届くから」
「投げたリングはどうなるんですか?」
「それは説明するより、実際目で見た方が面白いから、ここでは黙っておくよ」
マーシャルはにっこり微笑みながら、質問に答えた。
「そう言われると、益々興味が沸くのですが・・・・・・、仕方が無い。楽しみは当日まで取っておくことにします」
そう言いながらも、ルーファスは、リングを手に色々想像力を膨らませて一人ブツブツ言っていた。
「次は、誰にする?」
マーシャルは、残りのメンバを見ながら尋ねた。
「じゃ~、次は俺でお願いします」
緊張した面持ちで手を上げたのは、ランドルフだった。
「分かった。次はランドルフだね。君の特性は・・・」
「『鳥獣』です」
「『鳥獣』ね。だとすると、使う魔道具は、この弓だね」
マーシャルは、片腕よりは長い大きさの弓を指した。
「弓ですか?矢が無いようですが」
弓を拾い上げ、ランドルフは矢を探した。
「矢は無いよ」
マーシャルは、当然の事のように答えた。
「え?じゃ~弓を使って何をすれば良いんですか?」
「勿論、弓なんだから、弓を打つんだよ」
「でも、矢が無いんですよ?」
ランドフルは、マーシャルが何を言っているのかさっぱり理解できなかった。
「これは、魔道具だから矢が無くても目的は達成できる。魔道具を発動させたら、弓を妖獣に向かった引いて打ってみて。やりたい事は、妖獣への攻撃ではなく、弓を使った振動を妖獣に伝えることだから」
「あ~そういう事なんですね。なんか矢が無いのに違和感はありますが、やってみます」
ランドルフは、手にした弓を構えて、当日に備えて練習を始めた。
「次は、俺でいいですか?」
ランドルフの魔道具の説明が終わったのを見計らい、セドリックが声を掛けた。
「次は、セドリックだね。了解。君は確か、『武術』だったよね?」
「そうです」
セドリックは、しっかり頷いた。
「『武術』の君は、この剣だね」
マーシャルが指さした普段より少し小ぶりの剣を、セドリックは持ち上げ鞘から抜き出した。、
「珍しい。この剣は、銅で出来ているんですね」
「確かに普通の剣で、銅っていうのは珍しいね。でもこれは魔道具だから」
「そうですね。で、これはどうやって使うんですか?まさか、これで戦いを挑む訳ではないですよね?」
「流石に分かってきたね。道具を発動させたら、地面にこの剣の先を差し込んで。但し、魔道具が発動すると、剣が熱くなると思うから柄の所意外は持たないよう気をつけるように」
「分かりました。確かに銅の熱伝導率は高いから、熱が発生するのであれば、かなり熱くなりそうですね。因みに、この剣は魔道具以外にも普通の剣をして使うことは可能なのですか」
「使おうと思えば使えるのかも知れないけど、これは魔道具として作って貰った代物だから、強度や切れ味については保証をしないよ」
「なら、魔道具としてのみ使った方がいいですね」
セドリックはしっかり頷いて、剣を鞘に入れた。
「残りは、僕とオリヴィアだね。どうする?」
エミリオがオリヴィアに尋ねた。
「私は最後でいいわ」
「分かった。じゃ~次は僕でお願いします」
オリヴィアの意見を聞いた後、エミリオが手を上げた。
「エミリオの特性は・・・」
「『自然』です」
「『自然』ね。だとすると、この杖か」
マーシャルは、人の腰くらいまでの長さがある、仙人が持っていそうな木製の杖を指した。
「結構大きいですね。この杖を使って何をすればよいのですか?」
「使い方は、セドリックとほぼ同じ。魔道具を発動させたら、地面に差し込んで。但し、少し振動する可能性が高いから、抜けないようにしっかりとっているように」
「地面が揺れるんですか?」
エミリオは、驚いた顔で杖を眺めた。
「そんな大げさなものではないんだけどね。知らないとちょっと驚くと思うけど、知っていれば、問題ないよ」
マーシャルは、にっこりと答えた。
「そうなんですね。使い方については分かりました」
エミリオは、杖を持ったまま、マーシャルに「ありがとうございます」と頭を下げた。
「これでオリヴィア以外の説明は終わったね。オリヴィア、君は『国政』だから、使う魔道具はこの鞭ね」
マーシャルのローブから縄で編まれたような焦げ茶色の鞭を取り出した。手で持つところだけ、黒い皮が巻かれている。
「『国政』は鞭なのね。あら。これは結構長いのね」
オリヴィアは、マーシャルから鞭を受け取り、鞭を両手で広げた。
「そうだね。大体二メートル位はあるよ。この鞭を今まで教えた方法で発動させたら、妖獣に向かって鞭を叩いて欲しい」
「妖獣に向かって鞭を叩く?」
「そう。と言っても妖獣を叩けという意味ではないから安心して。他の人に説明したように、離れたところから鞭を叩いてくれればいい。ただし、妖獣の方向に向かって叩くように」
「分かったわ。ただ、鞭なんて乗馬でしか使ったことがないし、こんな長いの使ったことがないから、少し練習が必要そうね」
オリヴィアは、鞭を畳んで机の上に置いた。




