序章
初めて投稿します。 少しでも楽しんで頂ければ嬉しいです。
昔々、この土地がまだガローシャと呼ばれる遥か昔、ここには精霊達が住んでいました。物作りが得意の陽気なアビルバ。力自慢の寡黙なグスタフ。動物好きの心優しいセラフィーナ。草花好きの癒しのアデル。宝石集めが得意な勝気なヴィヴィアン。歌が大好き、自惚れ屋のベロニカ。発見が得意な、優雅なパラケルス。皆のまとめ役、聡明なラティファ。彼らは仲良く毎日を過ごしていました。そんなある日、ヴィヴィアンが綺麗な水晶を見つけてきました。皆その美しさに心を奪われ、暫くの間飽きることなく眺めていました。見ているだけでは飽き足らなかった彼らは、それぞれ水晶を切り出して持ち帰ることにしました。暫くすると、毎日大事に持っていた水晶に異変が起きました。アビルバの水晶は橙色に、グスタフの水晶は赤色に、セラフィーナの水晶は水色に、アデルの水晶は緑色に、ヴィヴィアンの水晶は黄色に、ベロニカの水晶は桃色に、パラケルスの水晶は紫色に、ラティファの水晶は青色に、それぞれの水晶に色が現れて来たのです。同時に精霊だった自分達の力を失い、ただの人間になってしまったことに気がつきました。精霊だった彼らの力は、彼らが持ち帰った水晶に吸い込まれてしまったのです。
人間になってしまった彼らの周りに次々と異変が起きました。平和だった土地に魔物が現れ、穏やかだった気候は荒れ狂い、豊穣だった作物が不作となり、今までの生活が一変してしまいました。そんな中、紺青の瞳を持った一人の賢者が彼らの前に現れました。彼は皆のこう言いました。「力を吸った水晶を結界として、この土地を囲むのだ。そうすれば平和が再び訪れるだろう」と。そこで彼らは、水晶を彼らの住む土地を囲むように置き、自分達の生活を守ろうとしました。すると彼らの土地から魔物が消え、荒れ狂った気候は静まり、作物も再び収穫できるようになりました。
この平和を守るため、結界の源となる水晶を守ろうとラティファは皆に提案しました。賛同した彼らは、それぞれ水晶が置かれている場所に向かい、そこで人間達と共に村を作りました。人間になった彼らは、豊富な知識を人々に広めました。アビルバは、建物や物を作る技能、グスタフは剣術などの武術、セラフィーナは、動物の扱い方、アデルは、草花の育て方、ヴィヴィアンは宝石の扱い方、ベロニカは、歌や絵など美の素晴らしさ、パラケルスは、不思議な力の使い方、ラティファは、人々をまとめる方法を、それぞれの村で伝えていきました。知識のない人々は、彼らから様々な事を学びました。そして、彼らの死後、人々は、彼らを神として祀ることにしました。
北に村を作ったパラケルスは、『魔術』の神。北東に村を作ったラティファは『法律』の神。東に村を作ったセラフィーナは『動物』の神。南東に村を作ったアデルは『草花』の神。南に村を作ったビビアンは『宝石』の神。南西に村を作ったアビルバは、『技能』の神。西に村を作ったグスタフは、『武術』の神。北西に村を作ったベロニカは『芸術』の神として祀ることになりました。
時代が流れ、今では『宝石』は『金融』に名を変え、『草花』は『自然』に代わり、『法律』は『国政』になり、『動物』は『鳥獣』に変化し、今の『ガローシャ』となりました。
『ガローシャ起源・八本の水晶より』
登場人物が多い物語ですが、よろしくお願いします。