wish for26:君との約束。
「もう…夜かぁ…」
ひとしきり騒いだ日の夜。
部屋には、俺と由李の2人だけ。
今日は色々あったけど、南音達を此処に連れて来て、ほんとに良かったと思う。
由李には、俺以外の…同年代の奴らとも接して欲しかったし。
嫉妬しねぇって言ったら、嘘になるけど。
けど、俺もその場に居たしな。
「淋しい?」
俺は、さっきから何度も溜息を吐いてはそう呟く由李に問い掛けた。
俺が一緒に居ても、淋しいのかな…?
「うん…ちょっと、ね。あれだけ賑やかなのは、ホントに久しぶりだったから」
少し微笑んで由李は俺に応えた。
そんな由李を、俺は自分の腕の中に収めた。
「俺が…傍でこうしてても?」
案の定、由李は頬をピンクにして、俺の腕の中で小さくなった。
可愛いよな。
こんな由李見てたら…また自分押さえられなくなるかもなー…。
「そういう淋しさじゃなくて…っ。何て言うんだろ…お祭りが終わった後…みたいな淋しさかぁ…」
照れながらも、由李は懸命に言葉を伝えてくれる。
“言葉”って…凄い大事なんだぞ?
言わなくても理解る関係って良いと思うけど、言わないと判んねぇ事っていっぱいあるから。
もし…もし、皆も伝えたい言葉があるのに、何も言ってなかったら。
俺は、ちゃんと伝えろって言うわ。
どんだけ態度で示しても、どんだけ瞳で語っても。
言葉よりはっきり判るもんなんか、無いと思う。
まぁ、そんな“言葉”だから、色んな嘘とか、悪い事に使われるんだろうけど。
言葉にするのが恥ずかしかったら…唄えば良い。
そっちのが恥ずかしいかもしれない?
さぁ…それは、自分次第だぞ。
自分の言葉で、ストレートに気持ち伝えるか、他人の言葉借りて詩にするか――…。
俺は…両方。
「なぁ…由李?」
「んー?」
俺は、由李を抱き締める力を少しだけ強くした。
自分の気持ち…自分の言葉で伝えられたら、それが1番良いと思うんだ。
けどなぁ…俺、バカだから。
自分の気持ち、上手く言葉に出来ねぇんだよな。
だから、他人の言葉借りよっかな、って思ってさ。
「俺…お前が好きだ。何度言っても、言い足りない。ほんとに…凄い好きだよ」
「どうしたの?憂灯君?何か、様子変じゃない?」
やっぱ、由李は鋭い。
俺の事、よく判ってるよな。
俺も…それぐらい由李ん事判りたい。
由李の瞳が最初に映すのは、俺であって欲しい…。
「今日、な?ダチ呼んだじゃん?」
「うん」
「アイツらって、俺ん中で凄い大事な奴らなんだよ。比較するものじゃねぇけど、由李とは比べられない」
「うん…判る。大切さなんて、比べられないよね」
「そう。それでな?アイツらと由李には、俺の夢…言っときたくてさ」
「憂灯君の…夢?」
「そ。俺の夢。俺の夢はな――……………由李。お前」
「私…?」
「俺、由李と桜見たいんだ」
「桜?どうして?」
「桜って、卒業と入学とか…何て言うの?出逢いと別れ、みたいな」
「あぁ…そうだね。けど、どうして桜が見たいの?」
「由李、ちゃんと卒業出来てねぇだろ?俺、秀統に聴いたんだけど…。中学卒業してすぐ眼ぇ見えなくなったって…由李も言ってたじゃん?」
「そうだね…。そう言えば、桜…見て無いな…」
「俺、これから真面目に学校行って、ちゃんと卒業しようって思ってんだ。由李と一緒に…今までの自分と決別…したいから」
「憂灯君…」
「だから…由李?一緒に桜見よ?約束。な?」
俺は由李の小指に自分のを絡ませた。
由李も、そっと俺の指を握る。
「絶対見よぉ?見せてね…?憂灯君…」
「あぁ…。約束だ…」
そのまま由李を抱き締めて、俺は由李にキスを落とした。
絶対だからな…。
一緒に見ような…。
綺麗な桜…。
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