wish for13:突然で、必然のkiss。
俺は、暫らく由李を抱き締めていた。
早く泣き止んで欲しいし…俺自身を鎮めたかったから。
由李を抱き締めていると、気持ちが落ち着く…。
これってやっぱ…好きだから………なんだろな…。
「憂灯君…」
「ん?何?」
「もう…あんな怖い事しないでね…?」
「けど………」
「私、信じて無いよ?」
「え?」
「あの人の言った事。信じて無い」
「何…で…?」
「だって、私あの人の事何も知らないもん。私が知ってるのは、憂灯君だけ。私が信じるのも、憂灯君だけ…」
「由李…」
「もし、あの人の言った事が本当だとしても、私は憂灯君を信じてる。私の知ってる憂灯君は、絶対にそんな事しないって」
「けど…あれは…」
「でもっ」
「え?」
「でも、私に対してそういう事してないでしょ?だから、良いのっ。そんな事より、私はさっきみたいな憂灯君が怖いよ…」
「由李には…聴かれたくなかった…。知られたくなかったんだ…」
「憂灯君?」
「由李は真っ白だから。俺が穢すのは、嫌だった…。俺…俺は、汚れてるから…」
「私も嫌だよ?」
「嫌…?」
「憂灯君が、さっきみたいに怖くなるのは嫌。いつもの…私を抱き締めてくれる憂灯君が良い…」
そう言った由李の顔は、林檎みたいに紅かった。
可愛い…。
ほんとに…。
俺が傍に居たら、汚してしまいそうなぐらい、由李は可愛いわ………。
俺の中で、何かが音を立てて崩れた。
「由李?顔見せて?」
「え?ゃだ…っ」
「何で?」
「だって…私、今顔紅ぃ…っ」
「可愛い…由李…。なぁ…見せて?」
俺は、そっと由李の頬を取り、俺の方へ向けた。
由李の真っ黒な瞳に、俺の顔が映っていた。
まだ、俺の“姿”は由李には見えてない。
けど、俺の“気持ち”は見えると思うから…。
「―――……………!!!」
熱い。
自分の神経が全部此処に集中しているようだ。
欲しい…。
由李が…欲しい…。
俺は、自分の口唇を由李のと重ねていた。
熱い。
自分のもそうだけど、由李の口唇も熱かった。
どっちの熱?
俺?
それとも――………由李?
まぁ…100%俺だろうけど…。
キスしてて、こんなの考えてるの俺くらいじゃん?
そんな事を言いつつ、俺は由李の口唇を割ろうとした。
口唇だけじゃなくて、中の熱も感じてみたい。
由李自身の熱を感じてみたい…。
由李の口唇を割ろうとして、少し離れた時、由李の声が俺の耳に届いた。
「…っと………く……ゆぅ…っと………っ」
苦しそう…。
俺は、はっと我に返った。
俺の中で、崩れて、壊れてたものが元に戻った。
口唇を完全に離して由李を見ると、顔を紅くして肩で息をしていた。
ヤバ………ッ。
長過ぎたか…?
「由李?由李ッ!?」
「ゆ……っとく………はぁッ」
「ごめ…ッ大丈夫か!?」
「ん…っ。大丈…夫…っ」
「ごめん………っ!!!ごめんな…?」
「ううん…」
少し楽になったのか、由李は呼吸を整えて、俺の方に顔を向けた。
俺は気付いてないけど、俺の香水の匂いは結構判るらしい。
結構付けてんのかな…俺…。
って、今はそんなのどうでも良いんだって!!
由李はじっと俺を見ていた。
俺を漆黒の瞳で見ている。
真っ黒。
マジで。
綺麗な黒――………。
暫らく、俺は由李の瞳の色に見惚れた。
更新が遅くなってしまい、すみませんでした。
次回からは、定期的に更新しようと思います。
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