現場検証
「ウィステリアの公園方面にパトカーいる。そっち向かって」
「おっけー、引き続き頼む」
電話対応可能なイヤホンに、木田の冷静沈着なオペレーションが入る。僕と吉村は連れだって、ショッピングモールから駅前の新興住宅地へと急いだ。
「きーさん、目がよくてよかったね」
立体駐車場で目を凝らしているはずの仲間はしっかりものだ。
「そうだな」
無料通話の電話を繋ぎっぱなしにしているから、なにか変わった動きがあれば、すぐに報告してくれるだろう。
テスト前で、部活はない。
僕らは寄り道をしたわけだから、学校帰りの姿は他には見かけなかった。
「なあ、ウィステリア、誰か住んでたっけな」
「何人かいるんじゃない?」
ウィステリアは20年ほど前に和白駅前にできた大規模マンションだ。公園のほか、医療施設も完備して、ショッピングモール直結ときている。
完成と同時にファミリーからの応募が殺到し、倍率が高かったらしい。
藤和高校には徒歩圏内だ。
「……ブルーシート、見えた。二人とも気をつけて」
低めに聞こえる声に気を引き締める。
「……吉村、殺人事件っぽい」
相方もはっとして、唇をぎゅっとかみしめた。
「分かった」
公園へ向かう有象無象が増えていく。
私服警官も混ざっていてもおかしくない。
「公園の立ち入り規制始まった。通行人装って」
木田の指示通り、僕たちはテストのことを話した。
近づいていく公園、こどもの鳴き声。
自由な方の耳で、現場の人だかりから情報を拾う。
「…………飛び降り」
「高校ーーがーー」
「血がたくさん…………」
「…………穏やかじゃないね、いっちー」
僕は黙ってうなずくしかできなかった。
「じゃあ、コンビニ寄って帰ろうか…………」
吉村をひっつかむ。
それこそ反射的に。
「ちょっと、なに変な動きしてんの!」
「……木田から、そっちの道には行くなって」
「なんで」
「小原さんとアザミさんがこっちに来る」
鉢合わせはしたくない。
だからといって、後ろを向けて戻るのも確実に見つかる。
「……脇道にはけよう。木田にみてもらう」
吉村の返事を待たず、細い脇道へと入る。
喧騒は一気に遠退いた。
今頃木田は肉眼の他、デジタルカメラの望遠機能を駆使してチェックしているはずだ。
「小原さんとアザミさん、現場を遠巻きにみてる。近づける?」
「道も細いし近くに隠れられるところないし、無理」
「やっぱりか」
車もどんどんやってきている。路駐しようとしてか、脇道にも入ってきた。
「マスコミも来はじめた。駐車場のほういくかもしれないし、撤収したほうがよくない?」
吉村のいうことは最もだ。木田が見つかった場合、僕らよりいいわけが難しい。
「そーね、そうするわ」




