表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/43

ナイトナイト1

「どした青柳?」

  手元の画面とにらめっこをしていたから気にされたんだろう。同室の先輩、アザミさんから声をかけられて、思わず携帯を取り落とした。しかも画面が上を向いたまま、床を滑ってしまう。多くの人は、こんな私をドジだとかどんくさいと言う。

「ごめん、驚かせちゃったね」

 けれど先輩はそうじゃない。

 運動部は上下関係が厳しい。先輩だから偉い、と思っている上級生だっているし、実力があるメンバーのほうが上と考える同期もいる。だから後輩に対してもしっかりと謝り、だれに対しても心を配る先輩のことを、私はとても尊敬している。

「いえ、あ、携帯、ありがとうございます」

 受け取ったピンクの携帯画面には、メールの文面が広がっていた。

 きっと私は相当変な顔をしていたんだろう。

「すみません考え事してて。……ちょっと、もらったメールが変な感じで」

「迷惑メールとか?」

「いえ、クラスの人からなんですけど、バーナーで焼きもろこし作ったとか、包丁使わずピアノ線で切ったとか、なんとか」

「え、ほんとに?」

 先輩は紺のジャージを格好よく着こなしている。リラックスしていた体がシャキッとなった。

「あ、はい。クラスの市ヶ谷って人がやってる、報道同好会の合宿みたいです」

 どこのマンガの話かと私も思う。

 ただ、報道同好会ならやっていてもおかしくない。

「バーナー持ち出してくるんだったら、科学部も噛んでるかな」

「あー、合同でやってるらしいです。学校に泊まりがけで」

「え、なにやってんだ」

「ですよね!」

 いつもより饒舌な先輩は、誰よりも綺麗で憧れの的の「アザミさん」とは少し違う気がしていた。

 小さな和室に、二人きり。

 流れる空気は落ち着いている。きっと他の部屋だったらこうはいかない。

 人数の関係で、私とアザミさんは学年が違っているにも関わらず、同室だった。

 他の一年女子は大部屋にいる。三年生は引退していて、二年女子の先輩はアザミさんだけだ。

「気詰まりじゃないー?先輩との二人っきりでさ。集まる約束とかしてたら遠慮なく他の部屋行ってね?」

「いえ、大丈夫です。私、先輩と一緒の部屋で、すごく嬉しくて」

「えー、嬉しいこと言ってくれるなあ」

 見とれてしまいそうな笑顔は、芸能人にも負けていないと思う。

 長い合宿期間中、強く優しく、素敵な先輩と同室なんて本当に夢みたいだ。

 と、携帯にメッセージが入る。

 同期からだ。

「……アザミ先輩、そろそろお風呂、いかがですか?」

「あー、いいよ、先、一年生はいって。人数多いしそのほうが効率的だし」

「でも……」

 お風呂は学年毎で、上級生から。これが、藤和高校剣道部合宿のルールだ。

 「……じゃあ、先に入らせてもらおっかな。20分くらいしたら戻るから、そこから一年生が入るってことで、他の子にも伝えてくれる?」

「わかりました!」

 先輩は手早く用意をして、出ていった。

 一人残された私は、メールを返信する。

 先輩との時間が楽しくて、お風呂の順番のことを切り出せなかったのは私のミスだ。

 今は8時。

 9時からのミーティングのことを考えると、一年生のお風呂のスケジュールはタイトなものになる。

「はあ…………」

 一番仲がいいきーちゃんもいない。心細いし、耐えられるのか。今から不安になってくる。

 携帯のランプが光った。

 同期からのメールだろうか。

 のろのろ手を伸ばすと、着信だった。

「え、ええ!?」

 しかも、クラスメイト男子からの。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ